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ロリババア神様の力で異世界転移  作者:
第3章 日常
122/199

110話 癖と役割


「さて、それじゃこの銃をマリア達に与えた理由を説明します」

「「「よろしくお願いします」」」


優しい木漏れ日が降り注ぎ、12月の割に暖かい森の中。

ようやく落ち着いたマリア達を近くの岩や切り株に座らせてノートとペンを召喚した俺は、それぞれの銃のイラストと重量等の細かなデータをノートに書き込んでいく。


今からマリア達にはこのノートを見てもらいつつ、この銃達の特徴等の説明を覚えて貰おうと言う訳だ。


それにしてもこの光景‥‥‥ まるで青空教室だな。

などと感じつつ、俺は目の前に座るレーヴェ達に目線を向けた。


「まずレーヴェが使うM2重機関銃。これは、有効射程2,000mを誇る大型の機関銃だ。

さっきまで使ってたHK416Dの有効射程は300mって言われてるから、その6倍以上の射程距離を持ってるって事だな」

「6倍!? でもよ、それなら僕じゃなくてドラルに持たせれば良いんじゃねぇか? ドラルなら僕とは違って銃の腕も良いから、遠くの敵も倒せるだろ?」

「レーヴェの指摘は最もだ。実際、このM2は長距離狙撃の用途で使われる事もある。でも此奴の真価はそこじゃ無い」


レーヴェの言う通り、事実このM2にスコープを付け、2000m離れた敵を狙撃し撃破したと言う逸話もある。

だが、先に言ったようにM2は本体だけでも約40キロ。弾を加えれば50キロ近い重量になる。


この重量では、他の龍人と違い身体の弱いドラルにはM2の運用は難しいだろう。



「このM2が放つ弾はHK416Dとは比較的にならない位威力がある。 M2で使う12.7×99mm弾って言う弾の大きさは、HK416Dで使う5.56mm弾の倍以上の大きさだからだ。

ちょっとグロテスクな話になるけど、この12.7×99mm弾がもし人間に当たったとしたら‥‥‥ 人間はほぼ即死だな。 ま、実際に弾を見てもらった方が早いか」


俺はそう言い、加護を使って12.7×99mm弾と5.56mm弾を1発ずつ召喚した。


目の前が光り、地面には小ぶりな5.56mm弾と更にその一回り‥‥‥いや、三回り程大きな弾が現れる。


「こ、これが 」

「大きい‥‥‥」

「こんな弾が飛んでいくんですね‥‥‥」

「そしてM2はトリガーを押せばその間ずっと弾が出続ける。 ここまで言えばレーヴェは俺の言いたい事がわかったんじゃないか?」

「あ、あぁ。ミカドは僕に敵に突っ込んで、コイツを撃ちまくれって言いたいんだろ?」

「ん、そうだ。それにレーヴェ自身がさっき言った『沢山撃てば音で敵がビビるかも』って言葉。それも関係してる。何てったって、実際その通りだからな」

「その通り‥‥‥とは?」

「人間は大きな音を聞くと驚く様に体が出来てるんだよ。 銃ってのは、その発砲音で敵をビビらせて戦意を挫く為の役割を持ってるんだ。

この音が聞こえたら誰かが死ぬ。それもグチャグチャになって。そう分かったら狙われてる奴等はどう思う?」

「これ以上ない位にビビるだろうな‥‥‥ 賢い奴なら戦わずに逃げ出すぜ」


俺のこの言葉を聞いて、レーヴェは眉をやや下げた。 自分がM2と対峙した場合を想像したのだろう。

しかし次に俺から出た言葉を聞いた瞬間、レーヴェのモフモフな尻尾がピン! と真上を向いた。


「俺はそれをレーヴェとM2に期待してるんだ。 レーヴェは俺達の中で1番の腕力を持ってるし、レーヴェは一撃に全力を注ぐタイプだろ?

M2はこの銃達の中で1番の攻撃力を持っている。圧倒的な力と存在感で敵を恐怖に陥れる! ヴィルヘルムの切り込み隊長にこれ以上の銃は無いと思わないか?」

「き、切り込み隊長‥‥‥? 」

「あぁ! レーヴェはまさに切り込み隊長になる為に産まれてきた様な存在だ。 レーヴェ以外にこの銃を扱える奴は居ない!

レーヴェの任務はこのM2で敵を薙ぎ倒し戦意を挫く事だ! やってくれるか?」

「お、おぉ! 僕やるよ! 切り込み隊長なんて何かカッコいいじゃん!! よっしゃあ! 頑張るぞぉ!」


切り込み隊長。このワードがレーヴェのツボにハマったらしい。

自分の役目を言い付けられたレーヴェはブンブン! と尻尾を振り乱しながらM2を弄りだした。


とりあえずレーヴェに言いたい事は言ったので好きにさせといてやろう。


「よし、次にドラル。このPSG1って言う銃は、離れた場所にいる敵を狙撃するのに適してるんだ。 そこで俺達の中で銃の命中率が1番高いドラルにこの銃を任せたい」

「狙撃‥‥‥まさに私向きの銃なんですね!」

「そう言うこった。お、あそこに丁度良い的が有るな‥‥‥ ドラル、PSG1の上に付いてる筒を覗いてみろ」

「あ、これですね?わかりました」


ドラルに簡単だがPSG1の特徴をノートを見せながら説明した俺は、前方15m程先に木に実った赤い果実を見つけた。


俺はPSG1とセットで召喚した照準器‥‥‥ スコープを覗いてみる様に促す。

このスコープは覗くと中に黒い十字が書かれており、この十字の中心に敵が来た時にトリガーを引くと、弾がこの十字の中心に飛んでいく。


今回PSG1の上部に付いているスコープの倍率は3〜9倍で、上部と左右に付いた突起を回してピントを合わせたりする。


「あ!凄い!あんなに離れているのに、まるで目の前に有る様に見えます!」

「そのスコープとPSG1が組み合わさる事で、圧倒的な命中精度を産み出すんだ。

スコープの中の十字の中心に敵が来たらトリガーを引け。そうすると弾が十字の中心に向かって飛んでいく。

それにPSG1はセミオートマチックだから、この前のグラースアイデ討伐の時や、アッフェ討伐の時みたく複数の敵にも素早く対処出来る」


このPSG1の最大の特徴。


それはセミオートマチック式のスナイパーライフルだが、高い命中率を持っていると言う点だ。


セミオートマチック式のスナイパーライフルはボルトアクション式のスナイパーライフルと比べ、構造が複雑で重量もあり命中精度も低いと言われている。だが、その代わりとして複数の敵に素早く対抗出来ると言う利点がある。


単純に命中精度だけを追求するならボルトアクション式のスナイパーライフル‥‥‥例えばM700やL96と言ったスナイパーライフルが有るのだが、どうも俺達は複数の敵に襲われる事が多い。


だからドラルには今後同じ様な状況に陥ってもそれを切り抜けられる様に、高い命中精度を矜り、複数の敵に素早い対応が可能なこのPSG1を与えたのだ。


「なるほど。確かにこのスコープを付けていれば、敵がどんなに離れていても百発百中ですね! それにセミオートマチックと言う点も素晴らしいです!

弓で複数の相手をすると、どうしても番て撃つまでの時間差が出来て撃破するのに時間がかかってしまいますから」

「そうだろ?それにドラルは空も飛べるからな。今後は空からの支援攻撃も頼む事になるかも知れない」

「空からの支援攻撃‥‥‥ 一方的に此方が攻撃出来ると言う訳ですね!」

「その通り!」


極め付けに、ドラルは背中に生えている羽根を使い空を飛ぶ事が出来る。

空を飛ぶドラルがPSG1を空から撃ったら‥‥‥


敵からしたら、反撃不可能な空からの攻撃で混乱するどころの騒ぎではないだろう。

このドラルの生まれ持った特性と狙撃時に見せる驚異的な集中力‥‥‥ 陸と空からなる三次元的な連携攻撃も不可能では無い。


「ドラルの任務はこのPSG1を使って離れた場所にいる敵を撃破する事だ!

ドラルは一撃一撃を確実に命中させるって癖が付いてる様だからな。

一撃必殺‥‥‥ まさにPSG1はドラルの為にある様な銃だ!」

「はい! 一撃必殺‥‥‥ミカドさん達の援護は私に任せて下さい!」

「よろしく頼む!で、最後にマリア。マリアには俺がクヴァレルを倒した時に使ったこのP90を使って貰いたい。 理由は‥‥‥ マリアの体格じゃHK416Dはデカ過ぎるだろ?」

「ん‥‥‥実はちょっとだけ‥‥‥」

「やっぱりな。でも、このP90なら全長はHK416Dより60cmも短いから、マリアには扱い易い筈だ。それにその分重量も軽いしな。

機動力の高いマリアが軽いP90を持てば、向かう所敵無しだ!」

「おぉ〜‥‥‥」


マリアにP90を与えた理由はこれだ。


これは以前のクロコディール討伐時や、先程の射撃の様子を見て分かったのだが、セシルやレーヴェ、ドラルはHK416Dのストックを伸ばし射撃していたのに対し、マリアはストックを伸ばしていなかった。

それでも俺達の中で1番小柄なマリアにはまだ少し大き過ぎる様で、若干持ちにくそうな表情を浮かべていたのだ。


その他にもマリアはエルフの特性で人は勿論、植物や動物達の発する気を感じる事が出来き、並みのエルフ以上の身体能力を持っている。


なのでその特性に目を付けた俺は、今後マリアには先行して敵地の偵察等、素早い行動が求められる役割を担って貰おうと思っている。

その時、扱い難いHK416Dを持たせたままだと、折角類い稀な身体能力を持っているマリアの動きを阻害する可能性がある。


だから小柄なマリアでも扱い易く、かつ軽量なP90を与えた。 勿論、P90の威力の高さや装填できる弾の数も関係している。


これは前にも言ったが、P90はHK416D等のアサルトライフルと遜色ない貫通力がある弾を撃つ事が出来き、装填出来る弾の数はHK416Dよりも多い50発だ。


今後偵察任務を頼めば、マリアは敵に近づく機会が多くなる。

そうなると念の為に弾は多い方が良いし、戦闘になったとしたら俺達が駆け付けるまでマリアには耐えて貰わなければならない。


そうなった時に所持している弾が多いと言う事は、俺達が合流するまで敵を牽制出来ると言う事になり、結果として合流するまでの時間を稼げる。


全長が短く軽量で、多くの弾を装填出来き、攻撃力も申し分ない銃‥‥‥この条件が全て当てはまる銃はP90以外存在しない。


「マリアにして貰いたい任務は、その高い身体能力と気を感じ取れる力を活かしての偵察任務だ!ちなみに、P90は今召喚した銃の中でズバ抜けた連射能力がある。

一気呵成に流れる様な連撃を放つマリアにピッタリだろ?」

「ん、 最高‥‥‥ テンションが上がる‥‥‥」


相変わらず言葉は淡々としているが、マリアの顔には満面の笑みが浮かんでいた。

マリアも俺が与えた任務に熱意を持ってくれた様だ。


「うぉぉ!! 僕もテンション上がってきたぜぇ!」

「えぇ、頑張りましょう!」

「ん、2人より活躍してみせる‥‥‥」

「僕だって負けねぇぞ! 僕の前に立つ敵は僕とM2が全部倒すんだからな!」

「あら、私の事を忘れてない?レーヴェ達が攻撃をする時には、私とPSG1が全部倒し終わってるわよ」

「へっ、チマチマ狙うドラルがか?」

「無駄弾をばら撒きそうなレーヴェより役に立つわよ」

「何をぉ〜!?」

「むしろ2人より私とP90のコンビの方が強い‥‥‥」

「あら、マリアも言うじゃない」


俺は期待に胸を膨らませ、姦しく言い争いをするマリア達を眺め、顔を綻ばせた。

其々の特性に合った銃を持ったマリア達が居れば鬼に金棒。ヴィルヘルムは最強の部隊になるだろう。


「相変わらず仲が良いな」

「で、でもミカド、そろそろ止めに入った方が良いんじゃないかな? このままだと手が出そうだよ?」

「そうだな。 そろそろ仲裁に入ろうか。

ふぅ‥‥‥ こら!マリア、レーヴェ、ドラル!一旦落ち付きなさい!喧嘩をする悪い子は銃没収の刑だぞ!」

「っ! 嫌だ!」

「同じく、反省する‥‥‥ 」

「ご、ごめんなさぃ」

「うん。分かれば良いんだ。それより、早速撃ってみるか?まずは撃ってみない事には始まらないだろう? 昨日レベルアップしたから、弾は沢山召喚出来るぞ!」

「お!マジで!?撃つ撃つ!」

「わ、私も!早く手に馴染ませる為に練習したいです!」

「同じく‥‥‥ 撃って撃って撃ちまくってP90の癖を掴む‥‥‥ 」

「ははっ本当に頼もしいな。よーし!弾の込め方や撃ち方は俺が教えるから、各自暫く好きに撃って良いぞ!」

「「「「はーい!」」」」


こうして森には微妙に異なった発砲音が幾重にも重なり、まるで銃の演奏会の様な騒ぎになった。


早朝から始まったこの射撃訓練は、日が傾き、的の視認が困難になるまで続いたのだった。



ここまでご覧頂きありがとうございます!

誤字脱字、外見ご感想なんでも大歓迎です!


次回投稿は11/20日曜日午後21時を予定しています。


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