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公園の迷路の中を捜索していた僕達の前に現れた大勢の亡者達。凶悪化した亡者達は、僕達の姿を見るや否や、一斉に襲い掛かって来た。
「浄き光よ、闇を滅し給え。急急如律令!」
僕が印を結ぶと、周囲に迫って来た亡者達の足下に同時に陣が現れる。陣の破魔の光に包まれた亡者達から邪気が消滅し、バタバタと倒れていく。するとすかさず、後ろに居た亡者達の鋭い爪が僕の体を引き裂こうと振り下ろされる。僕は青い焔の竜巻で自身の体を覆い、その熱風で亡者達を一気に吹き飛ばす。また別の亡者が襲い掛かって来たのを迎え撃とうと構えたその時―
「!?」
誰かに見られている様な、冷たく不気味な気配を感じ、背後に目をやる。
「ぐっ!?」
気配に一瞬気を取られてしまった僕は、左側から来た亡者の一撃を食らい、壁の方へ吹っ飛んでしまう。僕は体勢を整え、壁に両足をつけて踏ん張ると、亡者に向かって焔を纏った力強い蹴りを食らわせる。着地し、近くに居た亡者に焔をぶつけると、天月を振るって亡者を倒していた壮吾が傍に寄って来て、背を合わせる様にトンと触れてきた。
「大丈夫か、晴支。あんま無茶はすんなよ。」
「僕は大丈夫。壮吾こそ、怪我しない様に気をつけて。」
「おう。」
僕と壮吾は眼前の敵を倒す為それぞれ逆の方向に走り出す。壮吾は亡者達が集まっている所へ突っ込むと、素早い剣捌きで彼らを切り裂いていく。壮吾は前方から襲って来た亡者に一太刀浴びせると、右側から迫って来ていた亡者の胴を蹴って押し倒す。壮吾の動きを止めようと、あらゆる方向から亡者が一斉に飛び掛かるが、壮吾はくるりと一回転する様に刀を振るい、亡者達を退ける。壮吾が妖刀を下に向けて下ろし深く深呼吸すると、天月が白く光り輝く。そして壮吾が天月を横に大きく一振りすると、その斬撃が白い刃となって前方に居た亡者達を一掃する。
少し離れたところでは、火車と夜汰も亡者達と交戦していた。
1人の亡者が火車に向かって飛び掛かる。火車は自身の爪を鋭く尖らせ、襲い掛かる亡者に向けて威勢よく振り下ろす。火車の爪は緋色の焔を帯びた鋭い刃となり、亡者の体を焼き切っていく。左右からも亡者達が襲い掛かるが、両腕をブンッと力強く振って亡者達を弾き飛ばす。次に、数メートル先で亡者達が群れているのに目をつけた火車は、亡者の群れ目掛けて全速力で駆け抜ける。一瞬で亡者達に近付くと、火車は焔の鉤爪で彼らを次々と切り裂いていく。亡者達は彼の俊敏な動きを捉えることができず、反応できないまま斬撃に倒れていく。
「てやっ!はあっ!!まだまだぁ~!!」
夜汰は元気良く雄叫びを上げながら、縦横無尽に動き回り、亡者達を撃退していく。亡者達の長く尖った鉤爪が夜汰に襲い掛かるが、夜汰はそれをサッと躱すと自身も爪を鋭く尖らせ亡者の体を思いきり引っ掻く。さらに亡者の大振りな拳が夜汰を狙うが、夜汰は後方にバック転をして拳を避けながら亡者の顎を蹴り上げる。
着地して体勢を整えた夜汰が迫り来る亡者達を迎え撃とうと足を踏み出したその時、
「うわっ!?」
地面に伏せていた亡者が、いきなり夜汰の足首を掴んだ。バランスを崩した夜汰は地面に勢いよく転んでしまう。急いで起き上がろうとする夜汰に、複数の亡者達が刃を振り下ろす。
「夜汰!?」
火車が夜汰の下に行こうとするが、亡者達に阻まれてしまう。夜汰の周囲に居る亡者達を退けようと、僕が印を結ぼうとしていると・・・
「何やってるんスか、夜汰。油断しちゃ駄目っスよ!」
壁の上から突然1人の男性が飛び降りて来て、手にしていた大きく長い槍で亡者達を一瞬で切り裂いてしまう。そして夜汰の足首を掴んでいた亡者の背中を一突きし、倒れている夜汰に手を差し伸べる。
「いっ、茨木童子様!何で此処に?」
立ち上がりながら問いかける夜汰に、茨木童子と呼ばれた男性は笑いながら答える。
「いやぁ、実は百目鬼が現世で何か異変が起きてるって言うんで俺が様子を見に来たんスよ。何か大変なことになってるみたいっスねぇ・・・。詳しい話は後でゆっくり聞かせてもらうんで、とりあえず先に亡者達を片付けよう。火車、それにそこの2人にも手伝ってもらうっスよ!」
言うや否や、茨木童子は亡者達に向かって突っ込んで行った。彼の槍術は見事なもので、槍を体の一部の様に自在に操り亡者達を切り伏せていく。彼の槍は亡者達が近付くことを決して許さず、1人、また1人と斬り付ける。
僕達4人も茨木童子に負けじと己を奮い立たせ、亡者達に立ち向かう。そして、各々の能力を駆使し、皆で協力し合うことで、残りの亡者達も無事捕獲することができたのだった。