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葛の葉奇譚  作者: 椿
第2章:火車と夜汰の災難
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6

 そして同じ頃の西チーム。私達3人は裏山を捜索中に亡者達と遭遇し・・・現在大勢の亡者達に取り囲まれている状況だ。

 「なぁ・・・一応確認だけど・・・この妙な奴らが例の亡者達か?」

 目の前で睨んでくる亡者をまじまじと見つめながら問いかける勾陳。

 「・・・ああ、間違いない。今俺達の周りに居るのが・・・捜索中の亡者達。」

 天空はこの状況にも全く動じず、普段と変わらない無表情で静かに現実を突きつける。

 「・・・そこは“違う”って言ってくれよ、天空。」

 天空の言葉を受けて勾陳はあからさまにがっくりと項垂れる。そんな彼を慰める様に、天空はポンと肩に手を置く。

 「・・・現実は、残酷なんだ。ドンマイ・・・。」

 2人を包み込む雰囲気が哀愁を帯びている様に見えるのは気のせいだろうか・・・?というか、この茶番は一体何なんだ。2人のやりとりを冷ややかな目で眺めていると、前方に居た数人の亡者達が2人に向かって突如走り出したのが目に入った。

 「こら!2人共!!ふざけていないで、きちんと周りを警戒しろ!!」

 慌てて大声で呼びかけ、2人に注意を促す。

 「おっと。」

 「・・・。」

 2人は後方に飛び退いて亡者達の大振りな攻撃を回避する。2人に一撃を加えようと体勢を立て直した亡者達だったが、地中から伸び出た木の根や植物の蔓が亡者達の手足を絡めとり、動きを封じる。

 「後方支援は私が引き受ける。2人は自由に暴れてくれ。」

 片膝をついて屈み、両手を地面に当てると、山の地面の至る所から植物や蔓がうねりながら長く長く伸びていき、木々の枝や根もまるで生き物の様に山の中を駆け抜けていく。

 「あいよ。」

 「・・・承知。」

 2人の纏う空気がピリリと研ぎ澄まされたものに変化していく。

 勾陳は目を閉じ、意識を集中させると、大地の力を己の体へと吸収していく。その力を拳に集中させると、勾陳はその拳を襲い掛かる亡者達めがけて振るう。彼の拳から放たれた大地の覇気は爆発の様な衝撃となり、亡者達を次々と吹き飛ばしていく。「おらおらおらぁ!」と雄叫びを上げながら、台風の様な怒涛の勢いで暴れまわる勾陳。亡者達は彼の攻撃に為す術なく倒されていく。

 一方、天空の戦い方は激しく荒々しい勾陳とは真逆―静かで理性的な動きで亡者達を退けている。天空が大地に向けて手を翳すと、地面がゆっくり盛り上がり、大きな槌が形成されていく。天空はその大槌を掴むと、左側に居る亡者の腹部を思いきり叩いた。そして槌を振った勢いに乗り前方に居た亡者達も一気に薙ぎ倒してしまう。彼の動きを止めようと背後からも亡者が襲い掛かるが、槌の柄を使って鋭い突きを食らわせ、戦闘不能にしてしまう。周囲の様子を確認しつつ流れる様な動作で大槌を振るう天空。彼は無表情のまま着々と亡者達を倒していく。

 2人の行く手を阻んだり、攻撃の邪魔をしようとする亡者達は、私が操る植物や樹木に体を縛られ、動きを封じられてしまう。同じ位置から移動せずに静止したまま草木を操作する私を狙い、亡者達が飛び掛かる。私は自分の周囲に木の根を出現させると、亡者達に向かってその根をブンと大きく振り回して叩き付け、彼らに重い一撃を食らわせる。次々と襲い掛かってきて、本当に厄介だ。


 挿絵(By みてみん)


 大勢の亡者達を相手にそれぞれの能力を駆使して戦う3人。各々の活躍により、亡者を最後の1人を残し、ほぼ全員の捕獲が完了した。追い詰められた亡者はグルル・・・と威嚇し、乱暴に腕を振り回し、暴れ出す。勾陳と天空は素早く亡者の眼前と背後に移動し、構える。

 「ラストォ!!」

 「・・・1人。」

 勾陳の拳と天空の大槌が、同時に亡者に直撃する。息のぴったり合った、見事な連携攻撃である。2人の力の籠った強烈な一撃によって、亡者は意識を失い、バタリと地面に倒れこむ。


 挿絵(By みてみん)


 「ふうっ。これで全部捕まえられたな!」

 勾陳は両手を腰に当て、ふうっっと一度ため息をついた。

 「・・・これだけ大勢の亡者達が突然凶暴化するなんて・・・何か不気味だ。」

 天空は倒れている亡者達をじぃっと見つめ、眉間に皺を寄せて考え込む。

 「亡者達については、貴人と太陰が今調べてくれている。この亡者達を連れて帰れば、きっと2人の役に立つはずだ。」

 2人なら、きっと亡者達の変貌の詳しい原因を突き止めることができるだろう。原因が分かれば、今回の事件の真実への糸口が掴めるかもしれない。その為に、少しでも多くの情報が必要だ。

 「急いで店に戻ろう。」

 私の言葉に、2人が強く頷く。



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