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葛の葉奇譚  作者: 椿
第15章:福を呼ぶ少女
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6

 「座敷童子とは・・・これはまた珍しい客が来たな。」

 おいら達が葛の葉庵に戻ると、貴人がそう一言述べ出迎えてくれた。中に入ると、志乃を一目見てパァッと顔を輝かせた太陰・朱雀・天后の女子3人組が即行で近付いて来た。そして「可愛い~っ!!」と燥ぎながら志乃を連れて行き、抱っこをしたり、可愛らしい柄の着物やリボンを沢山持ち出して来て志乃に好きな物を選ばせ着せてあげたり、髪を可愛く結ってあげたりなどした。


 「それで・・・志乃ちゃんの事、これからどうしましょうか。」

 事情を説明し、お菓子を囲んで暫く皆でワイワイやった後、六合が腕を組み真剣な面持ちで呟いた。

 「また凶暴な妖達が襲いに来るかもしれないから、もうあの神社には戻らない方が良いと思う。」

 親指を唇に当て考え込むように晴支が答える。その言葉に、一同はふむむ・・・と口を噤み真剣に考えを巡らせていく。

 「だったら、此処に住んで貰えば良いじゃん!!」

 此処が一番安全だし、何よりおいらは志乃と沢山遊びたい!

 「確かに、晴支兄ちゃん達と一緒なら安心だな。」

 「葛の葉庵は妖達の間でも有名だし、襲撃してくる妖もそうは居ないしね。」

 「良いアイディアかも。」

 楓、一つ目小僧、唐傘小僧の3人が直ぐにおいらに賛同してくれた。家鳴も賛成の意を全身で表現する様にピィピィと鳴きながら跳ね回る。

 「部屋には空きがありますシ、彼女がそれで良いのならそれが一番良い解決策だと私も思いますヨ。」

 おいらの背後から優しくポンと両肩に手を置き、白虎が援護射撃を送ってくれた。白虎の方にちらっと振り返ると、彼は悪戯っぽくニィッと笑みを浮かべながら片眼を閉じて目配せをした。

 「私・・・此処に居たいです。此処に住まわせて下さい。お手伝いを沢山します。お願いします!」

 ぺこりと深く頭を下げ、志乃は力強い言葉で願い出る。おいら達も志乃が此処に居られる様に一緒に頭を下げた。

 「分かった。今日から、この葛の葉庵が君の家だよ。」

 晴支がにこりと微笑み差し出した手を、志乃は「有難う御座います。」と答えながら遠慮がちに握った。

 「これから宜しくな、志乃!!」

 「うん。こちらこそ宜しくね、ハク!」

 おいらが嬉しさの余り勢い良くガバッと抱き付いて声を掛けると、志乃も嬉しそうに笑って答えてくれた。こうして、志乃は無事に保護されおいら達葛の葉庵の家族の一員になったのであった。



 そして、志乃が来た数日後の六合は―


 「うぉっ!?」

 部屋の扉を開けた瞬間、志乃に上から跳び付かれてしまう。そしてそこに間髪容れずに現れたおいらと家鳴達が、六合の腰や腕、足等にガバッとくっついていく。おいら達に跳び付かれ困惑している六合の耳元で、白虎が隠し持っていたクラッカーをパァンッと鳴らし六合を驚かす。六合は驚きの余り「うわぁっ!?」と変な声を出し尻餅をついてしまう。

 「お前達、いきなり何をするんだ!」

 怒りと困惑の表情を浮かべ起き上がる六合。おいらと志乃と家鳴達はそんな彼に抱き付きながら楽しそうに顔を見合わせアハハと笑う。白虎もカラカラと笑いながら、「このクラッカー、買い出しの時におまけで貰ったんですヨ。予想通り、六合は良い反応してくれましたネ♪」と悪戯っぽく語った。

 我が家にやって来た志乃は、店や家事の手伝いをこなしながら、時折おいらや白虎、家鳴達(時々玄武)の悪戯っ子軍団と共に悪戯や遊びを楽しんでいる。(主なターゲットは勿論六合だ。)新しい遊び仲間が出来た事が嬉し過ぎてテンションがいつも以上に高くて、「最近のハクは元気過ぎる・・・。」と六合が少し疲れた様な表情でぽつりと呟いていたが気にしない。また女子3人組や紫苑が志乃の事を燥ぎながら可愛がり、志乃も嬉しそうによく女子トークに花を咲かせている。

 志乃が安心して暮らせる居場所が出来て本当に良かった。

 一緒に過ごしながら、おいらはしみじみとそう思う。志乃が毎日楽しく居られる様に、沢山の悪戯や遊びを彼女に伝授していこうと心に誓うおいらなのだった。 



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