3
「お帰り、ハク、家鳴。」
楓達と別れ葛の葉庵に辿り着くと、外で掃き掃除をしていた晴支が優しく笑いかけ出迎えてくれた。
「ただいま、晴支!おいらも掃除手伝うよ。今、箒取って来る!!」
「ピィ!家鳴達も一緒にお手伝いするっ!!」
ピュッと急いで走って行くおいら達に、晴支は「有難う。」と一言声を掛ける。晴支と一緒に落ち葉等のごみを掃きながら、おいらは今日出会った志乃の事を思い出していた。
志乃は今までずっと1人きりで生きてきたと言ってた。誰かと一緒に遊んだり、美味しい物を食べたり、お喋りしたりした事も無かったのかな。それは・・・おいらが思っているよりもきっと凄く寂しい事だと思う。
志乃が過ごしてきたであろう孤独な時間を想像し、箒を握るおいらの手に思わずぎゅっと力が籠る。
「ハク・・・何かあった?」
真剣な面持ちで黙り込みいつもと様子の違うおいらを気にかけ、晴支が静かに問い掛ける。
「今日・・・新しい友達が出来たんだ。」
おいらは裏山の神社で1人の女の子に出会った事を晴支に話した。1人きりで神社に居る志乃の為に何か自分に出来る事はないだろうか・・・おいらがそう問い掛けると、晴支は優しく微笑み答えた。
「ハク達と一緒に沢山遊んだりお喋りしたりする事が、志乃ちゃんは一番嬉しいんじゃないかな。そうだ。うちのお菓子を持って行ってあげたらどうかな?皆で食べると良いよ。志乃ちゃんもきっと喜ぶよ。」
「!?うん、そうする!!」
おいらは晴支の提案に元気一杯頷いた。葛の葉庵の美味しいお菓子を嬉しそうに頬張る志乃の姿を思い浮かべ、思わずニッと笑みが零れてしまう。
お菓子は何が良いかな?大福にどら焼きにブラウニー、クッキー・・・葛の葉庵は美味しいお菓子が沢山あるから、何を持って行くか迷っちゃうな。それに遊びは何をしよう。鬼ごっこにかくれんぼ、キャッチボールも楽しいよな。それに話したい事や聞きたい事も一杯ある。美味しいお菓子や楽しい遊びで、志乃をうんと喜ばせてやるぞ!!
「明日が楽しみだな、家鳴!!」
「ピィ!!」
ごみ拾いをしたり塵取りを押さえている家鳴達に声を掛けると、彼等は明るく答えてくれた。ウキウキする気持ちを抑えきれずパワフルに動き回って掃き掃除をするおいらに、晴支も優しい眼差しで笑いかけてくれた。
明日が早く来ないかな。
おいらは心の中で、ぽつりと一言小さく呟いた。