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葛の葉奇譚  作者: 椿
第15章:福を呼ぶ少女
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1

 都内の裏山 ― 星明りがちらちらと零れ落ちる暗い山道を、5人の若い男女が歩いて行く。カサカサ、パキリと落ち葉や小枝を踏み締める音を、閑静な夜の山の闇が吞み込んでいく。

 「や・・・やっぱり止めようよぅ・・・。もう帰ろう!」

 「何言ってんだよ、まだ肝試しは始まったばっかだぜ。お前は本当に怖がりだなぁ。」

 怯えるように腕を掴んで呟く女性に、隣を歩く男性は揶揄う様に答える。肝試しのグループが山の中を暫く進んでいくと、彼等の前に古びた神社が現れた。

 「此処がお化けが出るって噂の神社か。」

 「雰囲気あるね。今にもお化けが出て来そう!」

 きょろきょろと興奮気味に辺りを見廻す若者達の視界に映ったのは、かなり古びた神社。人が居なくなり手入れもされなくなったのだろう、御社はあちこち傷みぼろぼろで、雑草は伸び放題の荒れ果てた状態である。神社の中に入り、ギシギシと軋む様な足音を立てながら歩いていると ―


 「あれっ?」


 突如彼等の持っていた懐中電灯の灯りがプツッと消えてしまう。何度かカチカチとボタンを押してみるが、再び灯りが点く気配はない。グループの1人が真っ暗な室内を照らそうとスマホを取り出したその時だった。


 カランカランッ


 鈴の音が大きく響き渡り、一同はビクッと一度肩を震わせる。言葉にし難い不気味さに、若者達は表情を強張らせつぅ、と冷や汗を流す。

 「そ・・・そろそろ此処を出ようぜ。」

 「う・・・うん。」

 若者達は神社を出ようとくるりと踵を返し元来た道を戻ろうとしたのだが―


 くすくすくすくす・・・


 幼い少女の笑い声が彼等の耳に届く。ゆっくり後ろを振り返った若者達が目にしたものは― 

 誰も居ない筈の廊下を自分達の方へ向かってぺたぺたと迫って来る小さな足跡であった。

 「うわぁぁああっ!!」

 恐怖に顔を歪ませ悲鳴を上げる若者達。彼等は近付いて来る足跡から逃げる様に神社を飛び出して行った。そして振り返ることもせず、1秒でも早く神社から離れようと全速力で裏山を下りて行ったのだった。



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