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葛の葉奇譚  作者: 椿
第14章:宵闇の蟲
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9

 「今回も本当に世話になった。あれ以降血を抜かれた死体は現れなくなったよ。」

 数日後、葛の葉庵に来てくれた片瀬さんと横井さんは、事件のその後について色々と語ってくれた。先ず牛鬼に殺害されたあの一家の遺体は、一家の無理心中という事で早々に処理されたらしい。もう少し早く駆けつける事が出来ていれば助けられたかもしれない・・・そう思うと、とても申し訳無い気持ちで一杯になる。それから、貴人と片瀬さんが会った針の持ち主の女性は、あれ以降特に不審な行動はしておらず、騙した男への恨みもすっかり吹っ切って新たに人生を歩み直し始めている様だ。因みに彼女を騙した男は、彼女だけでなく他にも様々な女性を騙しあくどい事を沢山やっていた事が発覚し、逮捕されたとの事だ。

 「恙虫の一件は何とか収まりましたが・・・首謀者の一味である牛鬼と覚を逃がしてしまいました。彼等はきっと、また凶悪な事件を引き起こす筈です。」

 特に牛鬼は、人を甚振る事に強い快感を抱く残虐な性質の持ち主だ。今回退けても、また人々に危害を加えるだろう・・・。

 「牛鬼・・・ってあの現場で会った黒髪の少年ですよね。彼には何ていうか・・・狂気染みた不気味な怖さを感じました。」

 横井さんはその額に薄っすらと冷や汗を浮かべながら小さく呟く。

 「大丈夫ですヨ。また彼等が悪さをしようと企んだら、私達が彼等を倒して未然に防げば良いんですかラ!!」

 深刻な面持ちで僕が語っていたら、白虎が僕の背後に現れ僕の頬をむにゅっと軽く押しながら明るい声でそう答えた。僕が上に視線を向けると、彼は頭上からニィッと悪戯っぽく笑った。

 「あぁ。我々も出来る事があったら何でも協力するから、遠慮せず言ってくれ。1人で気負い過ぎて無茶するなよ。」

 片瀬さんも肩をポンと叩きながら笑顔で語り掛けてくれた。2人に元気付けられ落ち着いた僕は「有難う御座います。」と笑顔で頷き答えた。

 天逆毎や牛鬼達の好きにはさせない。もう二度と・・・大切なものを奪わせたりしない!!

 僕は葛の葉庵の皆や片瀬さん達が楽しそうに笑う姿を見つめながら、ギュッと拳を強く握り固く誓う。この幸せな居場所を何としても護り抜きたい・・・そんな切なる願いを込めて。

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