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葛の葉奇譚  作者: 椿
第13章:忍び寄る白
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5

 一方、土御門達と分断された信楽と神崎は手掛かりを探そうと空間の中を真っ直ぐ歩き続けていた。

 「そういえば、京都の一件の時聞きそびれていたが・・・どういう経緯で晴支達の素性を知ったんだ?」

 歩きながらふと思い出して問い掛けると、神崎は死人憑きに襲われた時土御門達に助けて貰ったのだと微笑みながら答えた。

 「それ以来、防御の術を教えて頂いたり、悪い妖から助けて頂いたり・・・色々お世話になりっぱなしなんです。」

 成程。葛の葉庵の面々ともかなり親しい様子だったから不思議に思っていたが・・・まさか妖怪絡みで繋がりがあったとは。

 「あの、私も気になっている事があって・・・信楽先生は何年くらい教師をされているのですか?信楽先生が教師になった切っ掛けって何ですか?」

 「教師になってもうかれこれ100年くらいは経つな。俺の昔の友人が教師で、彼が学校を開くのを手伝う為に教師になった。」

 神崎に尋ねられた俺は、ほんの一瞬沈黙した後ゆっくりと答えた。「まぁ、子供と接するのは嫌いじゃないしな。」とぽつりと呟く俺を見て、神崎はくすっと笑ったのだった。暫く話をしながら歩き続けていた俺達だったが―

 「!?」

 突如足下に陣が現れ無数の刃が2人を串刺しにしようと襲い掛かる。俺は神崎を抱え横に倒れ込む様に動き紙一重で刃の攻撃を躱した。

 「罠・・・他にも沢山仕掛けられているかもしれん。俺が道を作るから、神崎は後ろから付いて来い。」

 次々飛んで来る刃や毒の玉のトラップを変化の術で造り出した妖刀で払い除けながら、神崎を連れ進んで行く。進む毎にトラップの数はどんどん増えていっており、払っても払っても様々な罠が絶え間無く襲い掛かって来て切りが無い。

 ・・・俺達にこれ以上進んで欲しくない様だな。きっと・・・この先に陣か呪符がある筈だ!!

 進み続ける俺達を阻もうと、今度は悪鬼の群れが俺達を取り囲んだ。悪鬼達は俺達を殺そうとその鋭い爪を構え飛び掛かって来た。俺は悪鬼達に向けて強烈な雷を放ち撃退する。そのまま真っ直ぐ突き進もうと足を踏み出していたのだが―

 「きゃあっ!?」

 後方から聞こえた悲鳴に振り返ると、植物の妖に寄生された神崎がその場に転んだのが目に入った。

 「神崎っ!?」

 急いで駆け寄ると、神崎は弱々しく小さな声で「だ・・・大丈夫です・・・。」と一言呟いた。彼女の背中からにょきにょきと黒い植物が生え霊力や生命力を吸い取っている。浄化の光で植物を祓おうと手を翳していると、ブゥンッと大きな矛が俺目掛けて思い切り振られた。俺は妖刀で矛の斬撃を弾き返し更に襲い掛かって来た何者かに向けて一撃斬撃を放った。襲い掛かって来た何者かは斬撃を受け、「ぎゃう゛ぅっ!?」という低い唸り声を上げてぴょんと下がった。鋭い視線を向けると、その先には矛を持って威嚇している巨大な鬼が居た。


 「ぐわぁあああうっ!!」



 俺達をキッと睨み付けた後、鬼は上空に向かって咆哮を上げた。その耳を劈く様な大きく鋭い咆哮に俺と神崎が耳を塞ぎ苦悶の表情を浮かべていると、新たに悪鬼達がうじゃうじゃと現れたのだった。

 「神崎、少しだけ耐えられるか?」

 俺が問い掛けると神崎は「はい。」と小さく頷いた。俺は大きな風の渦を巻き起こし、悪鬼達に御見舞いする。風の渦は鋭い斬れ味を持って瞬く間に悪鬼達を斬り裂いていった。俺は巨大な鬼に向かって一直線に走り出した。接近して来る俺に向かって鬼は大きな矛を力一杯振り下ろした。しかし互いの距離があと1mという所まで迫った所で俺の姿がパッと消失し、鬼は困惑の表情を浮かべる。動揺する鬼の背後に廻った俺は右拳に自身の妖力の覇気を込め鬼を一発ぶん殴った。その強烈な一撃に巨大な鬼は倒れ消滅したのだった。すると、上空からひらひらと1枚の呪符が舞い落ちてきた。

 「!?あれが例の呪符か!!」

 俺は急いでその呪符をパシッと掴んだ。この呪符があれば、晴支を元に戻してやれる。彼奴が元に戻れば、状況も一気に好転するだろう。俺は呪符を懐にしまうと神崎の許に戻り、彼女に寄生していた植物の妖を祓った。少し力を奪われ疲れている様子はあるものの、特に大きな外傷も無く大丈夫そうでホッと安堵する。

 「呪符は手に入れられた。これを早く晴支に届けてやろう。」

 立ち上がり先を急ぐ様に俺が歩き出すと、神崎はこくりと頷き後に続く。逸れてしまった晴支達の気配を探りながら、俺達はだだっ広い異空間を再び進み始めたのだった。



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