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葛の葉奇譚  作者: 椿
第13章:忍び寄る白
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「なぁ晴支、壮吾!!大ニュース!!今日うちのクラスに転校生が来るらしいぜっ!!」

 朝登校して教室の扉を開けた僕と壮吾を出迎えたのは、うきうきした様子で目を輝かせる仁の元気一杯な声だった。

 「転校生?今の時期に珍しいね。」

 今は6月下旬で、入学から数カ月経ち学校やクラスに少しずつ慣れてきた頃である。そんな時期に他の学校から転校してくる子は中々居ない様に思う。

 「どんな人だろうな。気さくで話しやすい人だったら良いな。」

 転校生に会えるのが待ち切れないと言わんばかりにちらちらドアの方へと視線を向けながら、壮吾がそわそわした様子で述べる。

 「信楽先生と話しているのをちらっと見たけど、優しそうな雰囲気の人だったぜ。」

 直人が仁の後ろからひょこっと顔を出し、会話に加わってきた。″優しそう”という直人の言葉に僕達は少しほっとした様な、期待が膨らむ様な思いを抱き顔を見合わせる。4人で転校生についての話で盛り上がっていると―


 ガララッ


 扉を開ける音と共に信楽先生が姿を現した。後ろに真っ直ぐな白い髪の少年を連れている。噂の転校生の様だ。

 「HRを始める前に、転入生を紹介する。」

 信楽先生に促され前に出ると、少年は柔らかな笑みを浮かべ口を開いた。

 「智嶋弥白です。宜しくお願いします。」

 深く頭を下げ自己紹介する智嶋君に、クラスの皆から歓迎の拍手と声が掛かる。僕も「仲良くなれると良いな」と心の中で呟きながら拍手で彼を歓迎した。

 「席は土御門の隣が空いているから、其処に座ってくれ。」

 僕は突然自分の名が出た事に驚き思わず隣の空席の方へ視線を向けてしまう。驚きを隠せずにいる僕の方へ智嶋君がゆっくりと歩み寄る。

 「宜しくお願いします。仲良くしてくれたら嬉しいです。」

 隣に座りにこっと微笑みながら僕に手を差し伸べる智嶋君。

 「こちらこそ宜しく。僕は土御門晴支。分からない事があったら何でも聞いて。」

 僕もにっこり笑い返し智嶋君と握手をする。

 「この学校、結構広いですよね。来て早々迷子になりそうでした。」

 智嶋君が少し恥ずかしそうに笑いながらこそっと小声で語る。確かにこの学校は構造が分かりにくく最初は把握が難しい。僕も入学したての頃は移動教室に行く時困ったものだった。

 「慣れるまでは教室の位置とか覚えるのも大変だと思う。智嶋君、良かったら後で校内を案内しようか?」

 僕が案内を申し出ると智嶋君は嬉しそうにぱぁっと明るい表情で「本当ですかっ!?」と答える。

 「是非お願いします。それと・・・僕の事は“弥白”って呼んで下さい。僕も晴支君って呼んで良いですか?」

 弥白の問い掛けに、僕はこくりと頷き「勿論。」と答えた。

 何処から案内してあげたら良いかな・・・。

 校内案内のルートを思案しながら、僕は今日の予定について話す信楽先生の話に耳を傾けるのだった。


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