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葛の葉奇譚  作者: 椿
第12章:震う大地
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6

 「あと少しで貴人の野郎をぶっ殺せたのに・・・晴支と遊べたのに・・・邪魔しやがって!!斬り刻んでやるぞ、白澤っ!!」

 真っ暗な闇の中。ギロリと目を血走らせ憤怒の表情で瘴気の刃を構える牛鬼。彼は力任せに瘴気の刃を一斉に放った。

 「あのまま闘っていたら、唯じゃ済まなかったと思いますよ。・・・というか、かなり深手を負っているじゃないですか。立っているだけでも辛いのでは?」

 白澤と呼ばれた少年はくすりと笑みを浮かべながら印を結び呪文を呟いた。すると薄い光の幕が彼を包み込み牛鬼の瘴気の刃を全て跳ね返した。

 「あぁ゛?俺はまだまだやれるよ。お前を殺して証明してやろうか。」

 牛鬼は己の体から禍禍しい瘴気を増幅させ右手からゴキッと鈍い音を鳴らす。牛鬼が出せる限り集めた瘴気を白澤にぶつけようと彼に飛び掛かろうとしたその時―

 「何じゃ。随分楽しそうじゃのう。牛鬼、白澤。」

 ギシギシという軋む音と共にゆっくりと階段を下りながら、天逆毎が無邪気な声で語り掛けた。暗闇に響き渡った彼女の言葉に、2人はぴたりと動きを止めた。傷を負いながらも戻って来ていた他の妖達も、天逆毎の方へと皆視線を向けた。

 「大鯰は再び封印されてしもうたか。・・・ふふっ。彼奴等も中々骨のある輩みたいじゃな。」

 悪戯っぽい瞳を輝かせちらりと仲間の妖達を見つめる天逆毎。配下の妖達は唯彼女を見つめ、次に発せられる言葉を、動きを沈黙して待つのだった。

 「初めて会った時はまだ小さく霊力も未熟だったが・・・10年の間に妖力も陰陽師としての技術も洗練され強力になっておった。」

 嘗て自分が絶望の淵へ叩き落とした少年の顔を思い返し、天逆毎は気分を少し高揚させながら呟く。

 また再び御主と闘える日が来るとはな、晴明・・・。

 晴支の中に宿る晴明の魂の気配に懐かしさを感じ思わず楽し気にくるんと華麗に回る天逆毎。遥か昔晴明と力をぶつけ合い激しい闘いを繰り広げていた時の記憶が、彼女の脳裏を次々と駆け巡って行く。

 今度こそ・・・我等の長き因縁の闘いに決着をつけようぞ。

 その瞳に怪し気な光を纏いながら、天逆毎は不敵な笑みを浮かべる。天逆毎は静かに目を閉じると、己の中の強大で凶悪な妖力を思う存分解放し晴支を、その仲間達を破壊し尽くす瞬間を夢想するのだった。その夢想を実現させようと企む天逆毎の一派と、それを阻止しようと彼女達に抗う晴支達陰陽師や獄卒達。命を懸けたこの壮絶な闘いは、次の戦場へと向かって加速していくのだった。

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