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【30】雨降って地固まる

 雨が降ってきたので、崖の下から少し移動して大きな木の下で助けを待つことにする。

「あれ、留花奈るかな怪我してる。ちょっと見せて」

 さっきまで気づけなかったけれど、留花奈の腕から血が流れていた。


「いらない。留花奈のせいでこんなことになったんだから、放っておいてよ。優しい自分に酔ってるわけ?」

 伸ばした手が払われて、はぁと私は大きく溜息をついた。

 面倒な子だなぁと思う。


「・・・・・・悪かったわね。こんなつもりじゃなかったのよ」

 ちらりとこっちを見て、ぽつりと留花奈が呟いた。


「謝るなんてどうしたの。雨に打たれて熱でも出た?」

「人が勇気出して謝ってるのに、何その態度。留花奈はちょっと困らせようとしただけで、あの後しばらくしたらあんたの班の人がくるように仕向けるつもりだったのよ! すいませんね!」

 そっちこそ謝る態度ではないのだけど、これが留花奈の精一杯のようだった。


「なのに、留花奈まで落ちちゃって最悪。姉様に迷惑がかかるじゃないの」

「留花奈って、本当に理留りるが好きだよね。なんでそんなにシスコンなの?」

 彼女の行動原理は、いつだって双子の姉である理留だ。

 今回の行動だって、留花奈にとっては理留のためにとった行動なんだろう。


「・・・・・・小さい頃から留花奈はあの家で、姉様とふたりっきりだったの。父様もあの人も仕事で忙しくて、使用人たちは使用人でしかなかった。留花奈にかまってくれるのは姉様だけだったわ」

 無視されるかと思ったけど、留花奈はそうぽつりと零す。

 シスコンというのは否定しないようだ。


 前に行った理留の家は、お城かと思うくらい豪華なつくりで、校舎以上にでかい家だった。

 使用人と言われる人たちも大勢いて、ここって日本だよね?とつい疑いたくなった。


「姉様は留花奈が寂しくないように、母親の代わりも、父様の代わりもしてくれたのよ。姉様だって、同じ歳なのに。だから、大人になったら、今度は留花奈が姉様を守るって決めてるの」

 留花奈の眼差しは普段の悪戯めいたものじゃなくて、純粋な色をしていた。これは心からの言葉なんだろう。


「試験くらい軽く一位をとらないと跡継ぎとしての価値がないって、あの人は姉様に言うの。姉様は留花奈には母親が必要なんて考えてるから、あの人が自分達から関心を失うのが怖くて、無理をするのよ。留花奈はそんな姉様を見ていたくないの」

「留花奈・・・・・・」

 普段よりも子供っぽい口調。根っこの留花奈は、純真で姉思いな子なのかもしれない。

「そういうわけだから、二学期末のテストで一位取らないでくれない?」


 ちょっと留花奈に関する目が変わりそうだったのに、あざとい上目遣いで留花奈は首をかしげてきた。

 前言撤回。まだこいつはこんな状況でも諦めてない。

 こっちの同情を引くつもり満々だ。

 純粋っていうより、計算高かった。


「ボクをこんな目に合わせて、反省してないわけ? 一発殴ってもいいくらいには色々やられてると思うんだけど」

「反省はしてるわよ。自分が性格悪いのも自覚してる。でも、留花奈がお姉様にできることなんてこれしかないの。殴りたければ、一発殴ってもいいわよ」

 そう言って、留花奈は頬を差し出した。


「じゃ、遠慮なく」

 パァンと思いっきり平手で頬を叩いた。

 もちろん留花奈は女の子なので、加減はしたけれど。

 留花奈は信じられないというように、目をぱちくりさせていた。

 本当にやるとは思ってなかったんだろう。


「これでちゃらにしてあげる。だから、とりあえず手当てさせて」

 ぐっと手を掴んで、持っていたハンカチで腕の血を拭いた。

「痛い、痛いっ! 何するのっ!」

「手当てという名の嫌がらせ」

 思ったより傷は深くなかった。

 近くに止血に使えるオオバコ草があったので、揉んで傷口に貼り付け、ハンカチで巻く。

 よくこけて擦り傷を作っていた私に、田舎のおばあちゃんが教えてくれたやり方だった。


「お礼なんていわないから」

「はいはい」

 適当にいなす。

 最初からそんな期待はしていなかった。



 そんなやりとりをしていたら、ちょうど通りかかった理留と紅緒べにお先輩が私達を見つけてくれた。

 私たちを見つけた理留は、ほっとしたような顔をしていたけれど、すぐに顔を引き締める。 

「いやぁ、見つかってよかった。たちばなくんから聞いたけど、勝手な行動をしちゃ駄目だぞ」

「すいません、紅緒先輩」

 叱られて謝る私の横を通り抜けて、理留は真っ直ぐ留花奈に歩みよった。

「姉様!」

 抱きつこうとした留花奈の頬に、理留が平手打ちをお見舞いする。

 私がしたのよりも数倍は痛そうな音があたりに響いた。


「馬鹿留花奈! 皆に迷惑かけて、何を考えているんですの!」

「だって姉様・・・・・・」

「しかも、ワタクシのふりをして、留花奈を捜しに行くと連れ出したそうじゃないですか。アユムに何をするつもりだったのですか!」

 橘くんから事情が理留に伝わったのだろう。

 こんなに声を荒げて怒っている理留を見たことがなかった。

 叱りつけられた留花奈は、唇を噛んで俯く。


「アユム、怪我はありませんでしたか。何かされませんでした?」

「ボクは大丈夫だけど」

「本当に、うちの妹がごめんなさいっ!」

 留花奈の頭を掴んで、理留が一緒に謝る。

 土下座でもしかねない勢いだった。


「いいよ。理留が悪いわけじゃないし、ちゃんとしかえしもしたから」

「ありがとうございます。行きますわよ、留花奈」

 ぐいぐいと理留が留花奈の手を引いていく。

 後からきた捜索の人たちと合流し、二人は帰って行った。


「なかなか強烈だったね」

「はい」

 二人を見送ってから紅緒先輩が呟いたので、頷く。

「それじゃあ、ワタシたちも行こうか。ほら、乗って」

 そういうと、紅緒先輩は私に背中を差し出した。


「君、足ひねってるでしょ。隠してたみたいだけど、そういうのわかっちゃうんだよね。普段なら女の子しか乗せないんだけど、特別サービス」

 戸惑っている私に、紅緒先輩はそう言ってウィンクしてくる。

 よく見ている。

 喰えない人だと思った。



 少し悩んだけれど、正直歩くのはきつかったので、素直に紅緒先輩の背に乗っかることにした。

「お願いします」

「はいはーい」

 軽く紅緒先輩が私を背負う。

 一つ年上なだけなのに、紅緒先輩の背は大きくて頼りがいがある。

 女である紅緒先輩に背負われているなんて、一応男ということになっているのに情けなくはあった。


「君、結構軽いね。ちゃんと食べてる?」

「食べてますよ。身長もこれから伸びる予定なんです」

 小学校高学年になって、一旦身長は伸び悩むけれど、前世では中学生になって一気に伸びるのだ。

 胸は全然育たないのに、それはもうめきめきと。

 成長の速度とかは、前とそんなに変わらないようなので、きっと今回もそうなることだろう。


「先輩はずっと前からこの学園の生徒なんですか?」

「いいや違うよ。去年まで親に美空坂みそらざか女学院へ通わされていたんだけど、どうしてもここに通いたい理由があって今年戻ってきたんだ」

 道理で二年生の時に探しても、いなかったはずだ。


「戻ってきたって、先輩は前はこの学園にいたってことですか?」

「在籍していたという意味ではなくてね。ワタシは、この学園の扉の前に捨てられていた子供だったんだ。それで学園長に拾われて星野っていう苗字を貰った」

 紅緒先輩は、学園長の実の子ではなく、養子のようだった。

「・・・・・・学園長の子供なら、どうして学園に通わなかったんです?」

 聞いていい事なのかなと悩んだけれど、気になって尋ねてみる。


「育ての親が許してくれなかったんだ。あの頃のワタシは扉に執着しすぎていたから、外の世界を見て来いってことだったんだと思う。今ならわかるよ」

 そこまで話して、紅緒先輩はふいに笑った。

「ふふっ。君にはどうしてか、こんな事まで話してしまった。君が小鳥ちゃんとちょっと似てるからかな」

「小鳥ちゃんって誰ですか?」

「ワタシの大切な人だよ。さっきの君と留花奈のやりとりを見ていたら、彼女との出会いを思い出してしまったんだ」

 それは慈しむような、優しい声色だった。


「扉から引き離されたワタシは、荒れていてね。何度も女学院から抜け出そうとして怪我してたんだ。ワタシのことを怖がるくせに、心配そうに声をかけてくる小鳥ちゃんがうっとうしくて、色々酷い事を彼女に言っていた」

 若気の至りってやつだよねと、紅緒先輩は嘆息する。


「ある日、ワタシは自業自得な怪我をした。小鳥ちゃんが治療してくれようとしたんだけど、それを拒んだら、君のようにビンタをしてきたんだ。今までの事は、これでちゃらだから、治療させてって。震えながらね」

 同じだろう? と楽しそうに紅緒先輩は口にする。

 紅緒先輩にとって、それはいい思い出のようだった。


「小鳥ちゃんはもう違う学校だし、なかなか会えないけど、今日はよく似た君に出会えてよかった。これも運命かもね?」

 くるりと後ろをみながら、紅緒先輩が微笑む。

 思わずドキリとしてしまうほどに、爽やかだった。


 運命なんて言葉、まるで口説かれているみたいだ。

 こういうのを照れずに言えるのは、凄いと思う。

「紅緒先輩って、女の子が好きなんですよね?」

「うん、女の子が好きだよ。可愛いからね。君も可愛いから好きだ。思わず口説いて、押し倒したくなるくらいにはね?」


 百合というか、紅緒先輩はどうやら可愛いものに見境のない人らしい。

 そして、私はどうやらそのツボを押してしまったようで。


「さてと、これから医務室で二人っきりで語りあおうか」

 にっこりと笑う紅緒先輩に、身の危険を感じた。



「っ、先輩痛いですっ!」

「駄目だよ、我慢して。動くと角度がずれるから」

「そんなこと言われても・・・・・・も、もう少し優しく触ってください」

「こんなになるまで我慢して、素直に言わない君が悪いんだよ? ほら、ここも赤くなってる」


 医務室についてすぐに、私は紅緒先輩による治療を受けていた。

 捻挫だけでなく、実は擦り傷やあざが体中にあることに気づかれて、消毒液を塗られまくる。

 先輩の手際はとてもよかった。


「先輩、なんだか慣れてますね」

「まぁね。女の子が怪我したとき、こういうことしてあげたらぐっとくるかなって思ってさ。どうかな、ぐっとくる?」

「その一言がなければ、思ったと思います」

 素直に言うと、紅緒先輩はあははと笑った。


「はい、できあがり」

「ありがとうございます。それじゃあ、そろそろ」

 立ち上がろうとした私の手を、紅緒先輩は引いて再度椅子に座らせ、私の服に手をかけてくる。

「じゃ、そろそろ脱ごうか」

「はい?」

 にっこりと微笑まれて、私は目をぱちくりとさせた。


「他にも怪我してるでしょ。たとえばお腹のあたりとか」

 なんでわかるんだろう。

 崖から転がったときに、酷くこすったからわき腹辺りがジクジクと痛んでいた。


「男の子でしょ。ほら脱いで!」

「大丈夫です。やめてくださいっ」

 いや私女の子ですから! なんて言えるわけもなく抵抗を試みたが、じりじりと紅緒先輩は近づいてくる。

「そんな風に嫌がられると、逆に燃えてくるよ? それに今の君はワタシから逃げられないんだから、大人しくしてて?」

「ぎゃぁ!」

 えいっと一思いに服を脱がされてしまったので、急いで胸を隠す。


「やっぱりね。服との摩擦で赤くなってる。服の布地が赤黒い気がしたんだよね」

 紅緒先輩は、少し眉を寄せて私のお腹を見た。恥らう私とは対照的に、傷に消毒液を塗ってくれる紅緒先輩の目は真剣だ。

 さっきまでの軽い態度が嘘のように、丁寧に傷を消毒してくれる。

 他にも傷がないか確認のため、私の背中に回りこんだ紅緒先輩が、はっと息を飲む音が聞こえた。


「この傷どうしたの!」

 背中にある大きな傷を見て、紅緒先輩が驚いた。

「これは昔、事故にあった時についた傷なので、心配しなくても痛くありませんよ」

「・・・・・・そうか、悪かったね。君はこれを見せたくなかったんだろう?」

「いえ、先輩が心配してくれたのはわかってますから」

 本当は胸を見られるのが恥ずかしかっただけなのだけど、紅緒先輩は無理やり脱がしたことを反省したみたいだったので、よしということにした。


 治療が終わって後、夕飯を食べて、部屋に設置してある風呂に入る。

 大浴場だけじゃなく、個室の風呂も自由に使っていいことになっている。

 傷に染みて痛かったので、シャワーだけにしてさっさと風呂を上がると、部屋に紅緒先輩がやってきた。


「何か連絡事項とかあったんですか?」

「ううん。お風呂入り終わった頃かなって思って来たんだ。包帯巻きなおして、消毒しなおしてあげる」


 にこやかな紅緒先輩による、二度目の治療タイムが始まった。

 紅緒先輩は絶対にドSだ。

 消毒液を傷に塗りこむのは痛いから、一度でいいのに。

 いっそ、風呂に入って後に治療してほしかった。


 そして、次の日の朝も同じような目に合う。

 朝ごはんの後の自由時間、男子の部屋に来た紅緒先輩は救急箱を持っていた。


「んっ・・・・・・ふ」

「別に痛いなら声我慢しなくてもいいのに。聞きたいな、可愛い声」

「嫌です。早く終わらせてください」

「ほんとせっかちだなぁ。そんなに急がなくても、ちゃんとしてあげるよ? 何度でもね」

「いちいち耳元で嫌らしいこと言わないでくれませんか」

 紅緒先輩はにやにやしてる。

 こっちをからかって遊んでいるのだ。

 全く性質が悪いけど、シップを張ってくれる手つきは優しいから文句も言えない。


「それにしても、君は結構マセてるよね。こんなに真っ赤になって、ワタシのからかいの意味もちゃあんと理解してるみたいだし」

 くすくすと紅緒先輩は笑った。やっぱり確信犯だ。

 マセているのは紅緒先輩の方で、その歳にそぐわない色気をできるだけ早急になんとかしてほしかった。


 先輩は女の人だし、女である私がぐらりとくるのはおかしい。

 しかも、本来先輩は私より年下だ。

 飲まれてどうすると思うんだけど、どうにもそのペースに巻き込まれてしまっていた。


「んっ」

 先輩の手が足に添えられる。

 ちょっと角度を変えられて私は顔をしかめた。

「大丈夫。昨日よりは痛くないだろう? ワタシに身を委ねてくれていれば、すぐによくなるから。それじゃあ準備もできたことだし、いくよ?」

 だから包帯を巻くだけでいちいち言い方がと、突っ込もうとしたとき、部屋の扉がバンと勢いよく開いた。


「あんたたち、何してるのよっ!」

「留花奈?」

 耳を真っ赤にした留花奈と、その後ろにはきょとんとした顔の理留が立っていた。


「昨日のことを改めて謝りにきましたの」

 理留がそう言って、留花奈の背を押す。

 留花奈は決まり悪そうにもじもじとしていたが、やがてゆっくりと深呼吸した。

「あの、その・・・・・・昨日は悪かったわね」

「留花奈」

 そうじゃないでしょうと理留に名前を呼ばれて、留花奈はうっと息をつまらせた。


「昨日はごめんなさい。留花奈が悪かったです。次からこんなことしません」

「留花奈から全て聞きましたわ。この子、ワタクシにテストで一位を取らせるためにあんなことをしたみたいですわね。あれはワタクシの問題なのに。本当にごめんなさい」

 留花奈が頭を下げて後に、理留が謝る。


「理留は悪くないだろ。それに留花奈には仕返しもしたから、その事はもういいよ」

 私の言葉に、理留がほっとしたように肩の力を抜いた。一方の留花奈は決まり悪そうに視線を泳がしている。


「なんか青春だね。理留と留花奈が誰かに謝ってるとこ、初めてみたよ。君って凄いね。興味が沸いてきちゃった」

 そういって紅緒先輩が、私の背中から腕を回してきた。

 背に当たる胸のボリュームが結構凄くて、一歳変わるだけでこんなに違うのかと愕然とする。

 今の私は男だし、胸はない方が都合はいい。そう自分に言い聞かせるのだけど、自分の平原のような胸を見ていると、格差を感じてわびしくなった。

 

「だ、駄目です。アユムはワタクシの友達なんですから。紅緒姉様でも渡す事はできません!」

 慌てたように理留が、紅緒先輩から私を奪って抱きしめる。

 顔に理留の胸が当たってるんだけど、まったく膨らみがない。

 そうだよねまだ五年生だし、こっちが普通だよねと私がほっとしていたら、今度は留花奈の腕の中に導かれた。


 あれ? 意外と留花奈は胸がある。

 顔に当たる感触はほんのりと柔らかい。

 双子だけど、胸の大きさは違うらしかった。


 そこまで考えて、私ははっとする。

 こんな時に胸のことを考えている場合じゃなかった。


「あんたに姉様は勿体無いのよ。留花奈で我慢しとけば」

 ツンとした生意気な声で、留花奈が言う。

 態度は相変わらずでかいけれど、これは留花奈なりの和解と見ていいかもしれない。

 人なれしない野生動物が、少し懐いてくれたときのような喜びに浸っていると、理留に腕を引かれて留花奈から引き剥がされた。


「留花奈、アユムを離しなさい!」

「同じクラス委員として、手を貸すだけよ姉様。捻挫してるんだから、助けがないと立ち上がれないでしょ。それに、仲良くしなさいって言ったのは姉様じゃない」

「た、たしかに言いましたけど。それは近すぎですわ!」

 理留と留花奈がバチバチと火花を散らす。


「足をくじいてるんだから、支えるにはこうしないといけないでしょ。それにこの怪我も留花奈のせいだし」

「ならワタクシも歩くのを手伝いますわ。なんたって、アユムの友達ですもの」

 なんだコレ。どうしてこんな事になってるんだろう。

 両脇から支えられた私は、捕獲された人みたいな図になっている。

 しかも二人が引っ張りあうので、腕が痛い。


 なんだろう。今日の私は、女難の相でもでてるのかな。


「ははっ、これは面白いことになりそうだね! ワタシも混ぜてほしいな」

 二人の争いの中、他人事のように楽しそうな紅緒先輩の声が室内に響いていた。


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「本編前に殺されている乙女ゲームの悪役に転生しました」
ショタコン末期悪役令嬢に転生して苦労する話。
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