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封魔烈火  作者: 藤宮ハルカ
第一章
6/29

嵐は過ぎて

会話回


 この部屋自体が10畳程しかないのに、これだけ激しく動いて壁やベッドに傷一つ付かないのが異常だ。

 いや、全ての攻撃の先がお互いにしか向いていないんだ。他の物に攻撃を放てば、自分の攻撃の速度が少しでも奪われれば、一瞬で殺される。

 なんて今はどうでもいいことばかりが頭を駆け巡った。

 時間が止まったようだ。俺の頭に様々な考えが、恐ろしいスピードで浮かんでは消えていく。

 サクラは俺に背を向けている。バランスを崩したらしく、袈裟斬りに放たれたモモコの斬撃に対応できない。

 サクラの名前を叫んだ俺は、サクラに向かって飛び出していた。

 モモコの斬撃がサクラに襲いかかる。サクラは両腕をだらりと垂らして、その行く末を見守るようにモモコの攻撃を眺めている。その顔に焦りは無く、むしろ悟りを開いたように穏やかだ。

 諦めるな! 間に合え!

 サクラを突き飛ばすか? サクラとモモコの間に割って入るか? 間に合うのか? いや、間に合った所で俺はどうなる?


 ――死


 その一言が俺の頭を支配した。

 くそ、うるさい、構うものか。黙ってろ!

 俺はサクラにすがりつくように手を伸ばす。

 距離にして2m程か。普段ならば大した距離じゃない。しかし今、これはフルマラソンより遥かに遠い2mだ。

 ああ! ダメだ、間に合わない!

 死が、モモコから放たれた死がもうすぐサクラを斬り裂く。

 間に合ってくれ。

 右手一本だけでもいい。

 間に合って――



 真っ暗だ。真っ暗な空間で俺は横たわっている。

 そんな俺を、立ってる誰かが見下ろしている。

 「やあ。上から失礼するよ」

 誰だコイツは。

 「グランド・マスター」

 は? 何だって?

 「だから、グランド・マスターだってば」

 変な名前だな。

 「いや、これはそう呼ばれているだけで実際の名前じゃ」

 判ってるよそのくらい。つーか俺の考えてることが判るのか。

 「うん、今キミの……そうだな、“キミ自身”に話しかけているから」

 なんだ俺自身って

 「今は深く考えないでいいよ。時間も無いから手短に話すね。とにかくキミは今、とてもよろしくない状態なんだ」

 だろうね。死んだんだろ。

 「あー……そういう事じゃない。キミは死んでないし、僕が言いたいのはキミの生死に関してじゃないいんだ」

 生きてるのか。よかったそれが聞けただけで満足だ。それじゃあな。

 「待って! なんて勝手なんだキミは! というか僕がキミをここに拘束してるんだ。キミは指一本も動かせないよ」

 本当だ、立てない。というか今気づいたけど、お前の顔がよく見えない。

 「僕からもキミの顔はよく見えないんだ。でもそれは些末な事さ。いいかい、本当に時間がないから一回しか言わないよ? よく聞いて」

 とーりゃんせーとーりゃんせーこーこは

 「聞けって言ってんだろ! 何で民謡なんだよ!」

 キャラがぶれてる。つーかわりと余裕あんじゃん。

 「あ、マジで時間無い! くっそ、とにかく! “上に登リすぎるな”! 分かったね!?」

 どーこのほそみちじゃー

 「クソが!」



 「いやいや、本当に面白いねキミ達……で、彼に封葉ふうはは?」

 「もちろんまだだ。でも今更やる必要もねーと思うけど」

 「一応後でやってみようよ。しかしびっくりしたなぁ……でもあれがなかったら、あたし死んでた?」

 「女狐が。全力じゃなかっただろ」

 「あははは、お互い様じゃない。わざと攻撃受けて、バランス崩したように見せかけて大振りを誘ってカウンター狙い。ちょっと古典的すぎるよ。でもそれだけ次の攻撃に自信があったんだね?」

 「ちっ……馬鹿そうに見えて頭は働くんだな」

 「あは、あは。でも昔からこういう事しかしっかり考えらんないんだー」

 「……私はどうなる?」

 「どうって?」

 「元封魔解放団の白蛇だ。私の首には30億かかってるらしいじゃないか」

 「今はちょっと上がって35億。すごいよねーさすが最強最悪のテロリスト」

 「値段はどうでもいい。私を殺るなら、コイツが元の世界に帰れたらにしてほしい」

 「ありゃ、白蛇は冷血だって聞いたのに。意外」

 「茶化すな。答えろ」

 「だってアナタが白蛇かどうかなんか分かんないし」

 「いや、だから自分がそうだって言ってんだろう」

 「あたし顔知らないもーん! 裁けるのは当時に面識があった人だけなんじゃない? ともかくあたしは何もしないよん。その時はまだ“シテイ”にいたし?」

 「お前シテイの出なのか」

 「うん、10年くらいかな。まぁあたしの話はどうでもからさ、二人はこれからどうすんのさ」

 「知人の情報屋を尋ねる。トナカの街を目指す」

 「おおトナカ! 機関車が出てる街だよね? 私も王都に行くからさ、一緒に行こうよ!」

 「冗談だろ。なんでテロリストと鋼新兵が一緒に行動するんだ」

 「平気だって。私の顔を知ってる人は鋼新にあんまりいないし、白蛇の顔も知ってる人なんかほぼほぼいないっしょ。っていうかダメって言っても付いて行くから」

 「……トナカまでだぞ」

 「よっしゃあ! でさ、さっき言ってた情報屋なんだけど」

 「昔からの知り合いだ」

 「あたしにも紹介してくれる?」

 「構わんが……鋼新兵なら情報屋じゃなくても欲しい情報はいくらでも探せるだろ」

 「うーん……あたしが欲しいのはそういう“正しい”ルートじゃ出回らない情報だから」

 「まぁ詮索はしねーがよ。しかしコイツ起きねーな」

 「死んでたりして」

 「大丈夫だろ、多分……」

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