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封魔烈火  作者: 藤宮ハルカ
第一章
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めっちゃ行きたくない

 サクラ(と呼べ、と言われた)と話をしながら村を一周し、いくつか分かった事がある。

 まずこの世界は俺のいた世界とは違う世界……異世界だ。認めたくは無いが、もう疑い様が無い。

 言語についてだが、言葉は通じるし聞き取れる。日本語で間違い無いはずだが、やはり読める文字は無かった。しかしこの世界でも「漢字」「ひらがな」「カタカナ」が使われているらしい。英語は「英語」という言葉自体が通じなかった。しかし「パン」や「スープ」なんかのカタカナ語は通じた。何故だ。

 この村の人々は農業や狩りで自給自足をしている人がほとんどだそうだ。木造の小屋のような簡素な家が全てだった。「全部の家がこんな感じなのか」と聞くと「金を持ってる奴は石造りだな」と言われた。コンクリートではなくて石なのか。この世界自体があまり発展していない世界なのか?

 今はサクラの家に戻り、二人で向き合ってコーヒーを飲んでいる。味は俺が知っているコーヒーよりもかなり渋い。ちなみにこの飲み物も「コーヒー」で通じた。

 「どうだったよ」

 音をたててコーヒーをすするサクラは目を合わせずに俺に聞く。

 「うーんそうだな……良く言うなら、のどかな村」

 「悪く言うなら、何も無い村」

 「そ……そんな事思ってないぞ」

 「嘘をつけ」

 ニヤリと笑っているところを見ると、自分もそう思っているんだろう。

 「結局、何も手がかりは無かったか?」

 「まぁ、うん。そうだな」

 「……」

 サクラは腕を組んで何やら考え込む。どうもコイツは考え事をしている時は黙りこくる癖があるらしい。

 「あんまり行きたくは無いんだがな。行ってみるか……ハァ」

 勝手に自己解決した上にため息吐きやがった。

 「行くって、どこに?」

 「砦だよ。砦がこの村にもある事は言っただろ」

 やべぇ、そういえばそんな話を歩いてるときに言っていた気がする。

 「えーっとですね」

 「忘れたんだろ、顔見りゃ分かる。そうだな……時間もあるし、おさらいも兼ねてもう一度教えてやる」

 「お願いします」

 俺は素直に頭を垂れた。

 「まずは……どこから話そうか……あぁ、この国を治めてるのは鋼新王国だ。そこに勤めている下級の兵は国の治安を守る使命がある」

 ようは警察、国家公務員か。

 「どの町にも鋼新兵は治安維持の為に派遣されている。そいつらが駐屯してるのが鋼新の砦だ」

 交番という事だろう。

 「で、この小せぇ村にもご苦労なことに鋼新兵の砦がある。そこにいる奴に会いに行ってみよう、と思ったわけだ」

 「知り合いなのか?」

 「そんな訳ねぇだろ。鋼新兵に知り合いなんかいねぇよ」

 「だって会いに行くって」

 「鋼新兵には階級がある。鋼新兵に成り立ての奴は下級兵として各町や村に派遣されて治安維持に勤めるんだ。下級兵の次が一般兵。そいつらが砦で指揮を取る」

 交番勤めで指揮を取るのは警部補だっけ?

 「一般兵の次が上級兵だ。ソイツは比較的大きな町なんかにいて、地域の鋼新兵を管理、指揮している」

 分からなくなってきた。えーっと、エリアマネージャー的な?

 「上級兵までは簡単になれるらしいんだがな、その次からがそうはいかない。卓越した知力やリーダーシップ、戦闘能力……何かしらが一般人と一線を駕する者しかなれない。ソイツらは新羅と呼ばれていて、鋼新城……国の中心にある、大陸で一番でかい城だな。で何かごちゃごちゃやってるんだと」

 「いや「何かごちゃごちゃやってる」ってお前」

 「そいつらは人前に出ないし活動は機密事項だからな。知らん」

 そんなもんなのかね。

 「そんでその上が「将軍」と言われてるらしい。もうこのあたりまで来ると名称まで噂の域だ。何をしてるのかもさっぱり分からん」

 そこまで喋るとサクラはまたコーヒーをすすった。

 「……で? 鋼新兵に会いに行くって話はどうなったんだ」

 「ん? あぁその話だったな。さっきも言ったが砦にいるのは下級兵と一般兵、たまに上級兵だ。しかしな……この村の砦を仕切ってるのはどうも、将軍の奴らしい」

 「将軍ってめっちゃ位が高い奴だよな? なんで? おかしくないか? こんな小さな村になんでそんな偉い奴が常駐してんだよ。この村にそんな危ない物でもあんの?」

 「危ない物があるというか、危ない奴がいるというか……ともかく、そいつに会いに行く」

 「だから、何で」

 「私達じゃいくらお前の知りたいことを調べても限界があるだろう。鋼新王国の将軍ぐらいになりゃ、王国に調べるのを頼む事もできるかもしれん。高給だから知識人達はみんな鋼新兵になりたがるし、鋼新城には図書を集めた部屋もあるらしいしな」

 なるほど、その将軍様に取り入ってお力を拝借しようというわけだ。

 「だけどなぁ……」

 また再び腕を組んでうなってしまった。

 「だから何だよ、何の問題ですか?」

 「砦にいる将軍……名前は確か「氷室(ひむろ)」とか言ったなはずだがな、そいつがどうもいい噂が無い」

 「どんな感じで」

 「鋼新兵を二百人近く殺したとか」

 「……は?」

 「だから、殺したんだよ鋼新兵を。二百人くらい」

 「な……なんでそんな奴がこの小さい村に! っていうか殺人犯じゃないか! なんでそんな奴が鋼新兵でしかも偉そうな役職についてんだよ!」

 「詳しくは知らん。なんでも王都――ああ、鋼新城があるところだ。であったらしい話だからな。この小さい村じゃ正確な情報なんか入ってきやしない」

 やべぇ、めっちゃ行きたくない。そんな怖い人と会いたくない。

 「まぁとにかく、こうやってコーヒー飲んでてても仕方ねぇ。行くか」

 そいうとサクラはコーヒーをぐいっと飲み干して立ち上がった。いや待て待て、待って。

 「そんな奴と会いたくないって! 無理!」

 「私もいるから平気だろ。さっさと行くぞ、立てホラ」

 「いやああああああああああ!!」

 かくして俺はサクラに引っ張られてその殺人犯に会いに行くことになった。

 何もありませんように……

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