第七話:寂しくないって言ったら嘘になるけど
それが不幸なのかと聞かれたら違うって答える。
公園をでて空を仰ぐと、すでにオレンジに染まっていた。太陽とはもうすぐさようならの時間だな。
思った以上に“けんけんぱ”で白熱した戦いをしていたようだ。夕方になったの全然気がつかなかったよ。
お昼も食べてないからお腹空いたや、今日はコンビニ見つけたし何か買ってこう。
コンビニに入って菓子を数個買い、ついでに肉まんを。雑誌とかあったけど週刊誌で連載しているやつが途中のものばかりでよく分からなかったからやめた。
てとてとと、今日の朝歩いた道を通る。何故か道には誰もいなかった。
この時間は幼稚園の子とかが帰る時間帯ではないだろうか、誰も通らないなんてそれは世界に誰もいなくなったような、世界から切り離されたような錯覚をおこす。それは違うって事はわかるけど、なんとなくそうだといいなと思う。
世界で一人きりなのかなって思うとき、ふいに胸の辺りをナイフとかつき付けられたみたいにひやりとする。その切ない感覚が私を酔わせるんだ。ゾクゥって、ね。
そんな感覚の後、誰かが私の手を掴むと、ひどく安心していく。それは私をとても甘美な気持ちにさせて、じゅくじゅくと胸に感じた冷たい気持ちを暖めていく。そのぬくもりが、すごく、すごくのめりこんでしまう幸せの気持ちで、たくさんほしくなってしまう。でも最初ほどの幸せは感じない。
私が不幸を欲しがるのはそれが理由でもあるのだ。
無くなってから気づくって幸せがあるよね、それを感じていたいんだよ。
この道路を一人で歩くと前世の私が幸せそうに見える。甘いものに塩をかけたように、甘くなっていく思い出は、綺麗に見えた。
「むふふ…」
「気色悪い笑みはやめろくださいませ、誠さま」
…おっおう。道には私しか居なかったはずだし。いつから居たし。
「誠さまがコンビニで雑誌をめくっているあたりからです」
「心を読むのは勘弁してください」
一人感傷にふけっている時の表情見られたとか最悪ですね、Oh…。
ちらり、話しかけてきた奴を見やる。見た目は同い年くらいの少年である。でも只者ではない雰囲気を醸し出していた。
変装しているにも関わらず私の名前を知っているという事と、敬称をつけている彼は琴浦家に仕える家系のものだろう、と予測する。
何か今日の私冴えてるわ!
「まさか俺の訓練中に家を出るとは思いませんでしたよ。仮にも琴浦家の一員ならば出るときくらいお付きのものをつけたらどうです?馬鹿なんです?」
…な、なんでこいつこんなフレンドリーなん?仮にも私の家に仕えるやつなんでしょ…礼儀とかなんかあるんじゃないの…。名前知らんし顔も知らん人になんでこんなこと言われなきゃ行けないのさ。
「つかぬことをお聞きするけど、君は誰なの?」
彼の顔をもう一度見ながら問う。だるそうに垂れた瞳が僅かに見開かれたように見えた、気がする。
「…そうだな、俺は兄貴みたいにいつも側にいて守るなんて事してないからな。守る対象に覚えられてないのは当たり前か。」
ぼそぼそと呟くから、全然聞こえない。ちょい大きめでお願いしますわ。
「…俺は誠さまのお付き役ですよ。藤林 和馬と申します。命さまのお付き役をしている斗真の弟です。」
私にもお付き役とか居たんだ。この藤林くんも“仮にも”とかつけるくらいに琴浦家には必要のないものなのに。
………ということは、もしかして、もしかしなくてもだけど。
「…部屋での私の様子とか、見てたのかい?」
「まあ仕事ですしね」
神は私を見捨てたのか…およよよ。
だが、疑問が少々でてくる。ゲームでは彼は出ていなかった。描写もなかった。誠は琴浦家には味方が居ないと言っていた。自分を守るのは自分だけだと。彼は…藤林和馬は、何故助けなかったのかという疑問だ。
今更考えても仕方ないけれども。
「んー、何で今まで隠れてたの」
「…本当は誠さまの目の前には出ないつもりだったんですけどね。脱走なんてしやがるから俺がわざわざ探しに来たんですよ。」
何か棘刺さったわ。嫌味とかそんな…従者にも嫌われるとか絶望するくらいに嫌われ!
でも聞き捨てならない事が聞こえたよ!
「脱走してないし。お手伝いさんにちゃんと言ってからでたし」
言い返してみると、何か驚かれた。いつもは外にでないのに意外って顔してるわ。
「探させたのはごめんなさい。」
「…仕事ですから」
きっと前の誠との違和感でも感じているのかな?でも曖昧ながら覚えてる記憶の中では、必要最低限にしか話さなくて、仲良くしてるこがいた覚えはないから大丈夫だよね、全然気がつかないよ。
でも動きにくくなりそう。見られてるとか変な感じ。
あ、でも訓練もあるみたいだから今日みたいに出かけた事に気づかない日があるだろうね。
何だかこの少年は仕事仕事良いながらも仕事をする気が全くない感じがする。オッケー、無気力な男子いいよー。ダルデレってやつだね、うん素敵。
それにしても、六歳なのに多弁なのね。私普通に話してたわ。まあ…ご都合主義とかで済ませておこう。お手伝いさんにもよく話しかけてるけど別に不審がられてないし、気にしないでいいか。
「誠様、帰りますよ」
手をひかれて歩く。
何故手を繋ぐのか、意味わからん。
和馬という、モブっぽくないけれど表舞台には立たないキャラクターには初めてあったから、どう接すればいいのかわからないよ。
手を振り払えば嫌われるまではいかないけれど、嫌な印象を与えられる。でも振り払えないのは久々な人の温もりを手放したくないせいだろう。
仕える身とは思えない態度に、少し荒っぽい敬語もどきな口調。
彼はこれから誠の、私のどんな存在になるのだろうか。
命ちゃんにとっての斗真くんのように、近しい存在になるのか。
どうなるのか分からない存在だから、怖い。
けれど気づいてしまった。
先ほどまで、一人で幸せだったのに、彼が話しかけた時、私は幸せだったのだ。
「単純だな。」
自嘲気味に笑う。笑う。
膨ませていた高校生活の予想に、もし私がシナリオ的に死んじゃった時。藤林和馬が泣いてくれたらいいなと思った。
まだ関係がどうなるか分からないのにね。
藤林 斗真
命ちゃんのお付きの人
忍者。くーでれ。
命ちゃんより二歳年上。
藤林家は代々琴浦家に仕えている家系。忍者とはいっても家系が忍者に関係あるだけで、今はボディーガードみたいな役割をしている。
幼い頃から一緒にいれば、情もわくし、お互い親密になるからとかそんな理由で幼いながらも主従の関係を結んでいる。
命ちゃんが寝ている間に斗真くんは修業してる。
和馬くんは、誠が部屋に引きこもりしてるから昼間とかに修業してた。
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まとまり悪くなってしまったorz
いつもの事ですがね!
もし完結できたら書き直しとかしてみたいですな。
では次の更新までさらばですノシ