23話 暫定
「怖いのー…?」
羊太郎の無邪気な問いに城はたじろぎ、顔を隠したまま返答する。
「俺…面白い反応できないし。嬉しいけど、嬉しいってうまく伝えられなくて…それで…」
途切れ途切れの言葉に羊太郎がふんふんと頷く横で、良磨は伸びをした。
「まぁそーいうプレッシャーはありますよね」
「そう考えるとさぁ、失敗談とかもよく聞くし…サプライズって案外マイナスイメージも強いのかも?」
羊太郎は大きな瞳をぱちくりさせながら、頬を指腹で叩く。
「ご、ごめんなさい!あの、コンセプトが嫌とかではないんです!」
必死の形相の城を猪介は軽く諌め、改めて全員を見回した。
「コンセプトは皆さんが活動する上で切り離せないものです。マイナスイメージがあるのなら避けましょう。そのための(仮)ですので。」
羊太郎はそれならと言わんばかりに身を乗り出した。
「みんなを喜ばせるってことならさ!プレゼントとかは!?リボンかけた箱とか見るとすっごくわくわくしない?!」
「プレゼントかぁ」
「あ〜…どのみち相手次第…?みたいなとこはあるよな。」
「サプライズ性はいらないってことぉ?」
羊太郎は足を放り投げ、身を沈める。
「なんつーか、中身がわからないのがよくないのか。宝箱とかのが安心感はある…か?」
「宝箱かぁ!!…なんか可愛くないかも、堅い感じ〜」
「コンセプトだから…グループ名になるわけではないんですよね?」
城の問いに猪介は無言で頷く。
「ならいっか!他にもなんかあるかな〜!」
「ごめん…俺は思いつかない、です。」
「他なぁ…まぁ幼児性ってならそのまんまおもちゃ箱とか…な」
良磨がぼんやりと呟くと羊太郎は椅子から跳ね上がり、机が動くのも気にせず両手をついて立ち上がった。
「良磨さん!!それだ!」
「えっ」
「だっておもちゃ箱なら絶対かわいいし〜!自分のわくわくの詰め合わせだし!最高だよ!!ね?!」
羊太郎が城に振ると、城は小刻みに頷く。
「か、加賀さんの言う通りですし…サプライズの楽しげな感じも残ってていいと思います。」
「そっすか?…あ、よかった…」
「まとまりましたね。」
「加賀さんが言うように可愛くて、安心感もあって…おもちゃ箱…本当にいいですね。」
城は自分に言い聞かせるよう、小さく呟く。
その発言に羊太郎は口角を下げ、目を細めた。
「僕、ずぅっと思ってたんですけど…」
「…なにかありましたか?」
「あのさぁあ!!?」
その一声に城は飛び上がらんばかりに驚いた。
「なぁんでみんな加賀さんって言うのぉ!?ユニットなんだよー!?!」
城と良磨は目を見合わせる。
「そんな態度なら僕なんて!みぃんな呼び捨てにするから!城!良磨!猪介!!はいっ!!」
「あ…うん…?」
何が「はい」なのかはわからなかったようだが、城は大人しく受け入れていた。一方良磨は特に動じる様子もない。
「んじゃ羊太郎。」
「そうこなくちゃ!」
「親睦を深めるためにも有効かもしれません。」
猪介はレコーダーの位置を調節しつつ呟く。
「上下関係あるわけじゃないっすもんね、三人同期みたいなもんですし」
「あ!でも城は大先輩だよ〜」
「へっ!いや!俺は…ほら!歌とかダンスは全く…よ…羊太郎くんはダンスも上手で!大先輩だよ!!」
「えー!確かに僕ダンスは得意かもー!」
二人が和やかに笑い合う。
それをぼんやり眺めていた良磨の肩を猪介が叩いた。
「…その点で言えば良磨さんが一番の大先輩ですよね。」
「はい?!」
「えー!そうなのー!?」
「歌って踊ってらしたじゃないですか」
「いや、え?!あれカウントするんすか?!」
「…ご謙遜を」
静かに笑む猪介を前に、良磨は大きく口を開けたまま静止していたが、ふと我に返り
「谷口さん、意外とそういう感じなんすね!?」
と困惑の表情を見せる。猪介はそれを涼しい顔で受け流した。
「えーなになに!調べちゃお〜…あっ!」
短く感嘆の声を上げた羊太郎に城が興味を示すと、彼は城に画面を差し出し、動画を再生する。
腑抜けたチープな音響に、やけに明るい良磨の声。彼が出演していた教育番組の録画のようだ。
「かわいい〜!」
「わぁ、本当に先輩ですね」
はしゃぐ二人の横で居心地悪そうに背を丸める良磨。
「いや…マジで…」
「ほら、みて城。のびのび体操。第五まであるよ。」
「すごーい!」
「いや、マジ勘弁してくれ!」
それを横目に猪介は録音を停止するのだった。




