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Curtain Rise!  作者: 風見ことは
開場
21/23

21話 とあるブログ主の話




『彼の瞳は翡翠の』

打ち込んだ手を止める。

翡翠…あのような白濁ではない、エメラルドほど彩度は高くない。

強いて言えばマリガーネットが近いだろうか?


目を瞑り。彼、酉脇城の瞳を空想する。

薄緑、黄金、焦茶…角度や光の加減で見え方が変わるヘーゼルアイ。


彼の美を構成するほんの少し。しかし、重大な特徴だ。

幻想的で捉えたもの全てを非現実に取り込む、無限の深み。


ああ、どうしたって彼の美しさを言葉にするだなんてできない。

できなくともどうしても言葉にせずにはいられない。


…魔力。いや、強制力だ。彼を目の前に美を語らずに居られる者など存在しない。

再度画面と向き合い、彼を表すにはあまりに稚拙な文章を削除する。


五年以上続けてきたこのブログだが、納得のいく内容を書けた試しがない。

書く内容は絶えずあるのだ、しかし私の文才が追いつかない。もっとも、酉脇城の美しさに見合う文才など存在しないのだが。


それにしても…

近頃、新規情報が途絶えている。

新規のCM、掲載雑誌…撮られた時期を考えても数ヶ月は仕事をしていない…?


しかし、もう時期秋コレクションの選出モデルは決まるはずだ。

新人、無名なモデルならいざ知らず。酉脇城、世界的いや、唯一無二のモデル。

選出どころか各ラグジュアリーブランドがオークションよろしく、彼を振り向かせようと必死なはずだ。


何か知らせはないものか…蒼凛舎のホームページを開く。

今更名前を売る必要もないのだろう、規模の割には簡素な作りのホームページ。

タレント一覧の酉脇城の欄を開く。

これも酉脇城の名を冠するにはあまりにも質素。しかし…彼の価値を考えれば、下手な装飾を加えるより随分とマシだ。


最新情報は途絶えている。

体調不良…?それならそれで話が回るはずだ。

彼が最後にこなした仕事はなんだっただろうか…


ふと、ある考えに思い至る。


彼が最後にこなした仕事、夏にあった国内ブランドの発表会。

夏には忘れてはならない日がある。七月二十一日、酉脇城の誕生日。つまり、彼は二十歳になった。

二十歳、()()にするには最適な年齢だ。


彼は以前より複数のラグジュアリーブランドから専属契約を申し込まれていた。

理由ははっきりしないが全てを突き返し、アンバサダーのみをこなしていた彼だが、界隈では「最適なブランドを見極めているのでは?」と囁かれていた。


彼ほどのプロなら当然の思考だ。

もし、彼が自らに見合うブランドを見極めたのなら…?

専属契約に踏み切ったのなら?


これだけ期間が空くのも当然だ。


あぁ、どこのブランドだろう?

彼を愛してやまないゼフィーロだろうか?

彼のためにメンズラインを立てたルシールか?

どちらもアンバサダー歴は長くデザイナーとの交流も伺える。

しかし、他の線も捨てきれない。

同志は、皆はどう考えるだろうか??


そうだ。



私は再びブログ記事を作成する。

彼のこれまでを整理し、今後を予想し、意見を募ろう。


冷静に文章を組み立てながらも、思考は止まらない。

専属となれば海外移住の可能性もある。

そうとなれば私も移住を検討せねばならない。

仮にゼフィーロならイタリア、ルシールならフランスだ。

どちらも都心部に邸宅はある。


…しかし、酉脇城なら都心は離れて郊外に居を構えるのでは?

となれば新居を…

私が移住するとなると、各方面への事情説明が必須になるが、致し方がないだろう。

大学四年間、習得予定の学芸員資格。どちらも隅に置くことになっていい。彼にはそれだけの価値がある。

私は周囲を納得させられるだけの美辞麗句を並べることができる。


…それに、私も近々()()を迎えるのだから。




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