第9話 遅滞戦
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「小隊長殿、後続の敵は来ますかね? 先遣隊からの連絡が途絶えたので、我々が居ることは分かっていると思うのですが?」
「絶対、来る。中隊規模を動かすってことは、それなりの覚悟があっての事だ。奴らは侵略出来ると判断しているのだろうな」
小隊長殿は全く、考えるそぶりも無く答えた。
うーーん。そんな物なのか、たぶん、前世の俺も戦争を経験したことは無いけど、まぁ人件費を考えると思い付きで侵略して来ているわけでは無いだろうな。
この小隊長殿は、前世の分と現世の分を合わせると俺より年下になるのだが、平和ボケしている俺とは違う気がした。
「レオナ、とりあえず魔力補給だ。しかし、お前の魔力の残量は大丈夫か?」
小隊長殿が心配そうに俺の顔を見ている。
「はい。全く問題ありません。では早速、魔力供給を」
はっはは。自分で言うのも何だが、俺の魔力量って半端無いな。確かに小隊長殿は少ないが、俺のは、それは、それで異常だ。訓練中にも思ったが、訓練生の中では俺よりも魔量が多い人を見たことが無かった。訓練生の中には貴族の人も居て、貴族の人は平民の人に比べて魔力量が多かった。それでも、俺の方が多いのだ。
小隊長殿も魔力を回復させた後、しばらく岩陰に隠れて待機していた。
「お前の役割は私の盾であり、力だ。だが、無理はするな。今のうちに自分の魔力回復に専念しろ」
って小隊長殿が優しく言ってくれたけど、フッフフ。実は既に全回復済みなのだよ。ほんと回復スピードまでも半端無い。
「レオナ、来たぞ。出る準備をしておけ」
あぁ、優しくしてくれたから、ゆっくりしておくつもりだったのに、来てしまったか。来なくても良いのにな!
「大丈夫です! いつでも行けます!」
「次は中隊規模の相手だ。奴らの指揮官を探して、そいつを狙う」
「指揮官を……?」
「そうだ。中隊を崩すには、あの連中の要を潰すのが最善だ。かなり無茶な戦闘機動になるが遅れるなよ」
「はっ! お任せください」
えぇ! まさか、中隊規模の敵の中に、たった二人で突撃するわけじゃないよな!?
無理、無理、無理! そんなことをしたら死ぬからね!
「出るぞ!!」
「了解です!」
くぉーー、マジか!! 小隊長殿は一気にフライタスに魔力を送り込み離陸と共にトップスピードに上げた。とにかく小隊長殿の傍を離れたら死ぬ! 何が何でもくっ付いていないと、碌に戦えない俺が敵の中に取り残されたら生き残る術はない。
ほう。敵は全員が一斉に来るのではなく、判個の小隊だけで相手してくれるようだ。
敵の魔導士も一気に加速し、両者の距離が瞬く間に縮まる。
敵魔導士は約十五人、先陣の三人が発砲を開始した。
タ、タ、タン。
魔導銃の銃声と共に魔弾が来る。俺は小隊長殿の斜め後ろを飛んでいたが、小隊長殿と自分の前にシールドを張る。俺は魔導銃を構えていないので、全力でシールドに魔力を注ぐ、一枚や二枚破壊されても大丈夫なように、大量に重ねて張っておく。
ドン、ドン、ドン。
小隊長殿が爆裂弾を発射した。これはシールドで防ぐの難しいぞーー。ましてや初見では、まず無理だな!
始めの一発目でシールドを破壊し、二発目の弾で敵の身体を破壊した。三発目もさらに命中して直撃を受けた敵は墜落していったが、横の敵も爆発の影響を受けたようだ。
まぁ、横に居た味方側から、鉛の破片が飛んで来るとは思ってもみなかっただろう。当然味方との間にシールドは張って居なかったようで、腕に大きな怪我を負ったようだ。
しかし、我が小隊長殿は速度を緩めることなく接近していく。小隊長殿の魔導銃が銃剣モードに切り替わった。無傷だった方の魔導士に斬りかかる。
ザンッ!
あ、首を刎ねられたようだ。
俺も、何もしないのも悪いので、腕を怪我した方の魔導士の顔面にシールドをぶち当てた。
まぁシールドバッシュって感じかな。それでも効果はそこそこある。何と言っても、鉛玉ぐらいは簡単に弾き、魔導弾でようやく互角の硬さだ、それが、かなりの速度で飛んできているのだ。そりゃ、顔面で受けると意識を失うほどだ。
あぁ、俺のシールドをぶちかまされた奴も、地面に落ちて行く。うん。この高さから落ちたら助からんな。
えっと、一応、初の撃墜かな。しかし、あまり人を殺したという感覚は無いな。
正直、戦争とは言え、人を殺すことに忌避感があったのだが、意外と大丈夫そうだ。うーーん、派手な殺し方では無いからだろうか? それとも、俺もこの時代の流れに飲まれているのだろうか?
おっと、後続の奴らが襲い掛かって来た。
俺は、奴らを無視して小隊長殿への魔力供給を行う。まだ枯渇はしないだろうけど、補給出来るときに、こまめに補給しておいた方が良いだろう。
敵の動きに合わせて小隊長殿も動く、いや、逆か小隊長殿の動きに合わせて敵が動かされているようだ。
小隊長殿へ補給しながらも、小隊長殿の動きと敵の動きをしっかりと見て、小隊長殿に追従する。
敵も我々の背後を取ろうと必死で回り込んでくるが、小隊長殿も敵の背後を取ろうと回り込む。お互いの機動が入り乱れる中、敵の魔導弾が俺の張ったシールドを破壊していく、その都度シールドを追加して突破はさせない。小隊長殿も通常の魔導弾と時折、爆裂弾を交えて撃ちこみ敵のシールドを崩す。
飛行技術と魔導銃の射撃術の戦いだ。だが、奴らは十二人ほどいたはずだが、じりじりと減っていった。奴らも飛びながら魔導銃を撃ちまくると魔力切れを起こしかねない。だからか、敵からの銃撃が減ってきている。敵の弾数が減った分、シールドよりも小隊長殿への補給を優先出来る。
敵からしたら、たまらんだろうな。時間が経過しても、一向に魔力が減らずに、ガンガン撃って来るんだからな。
お、遂にさらに後続にいた、四十人程度の集団が動き出した。
「小隊長殿、敵の主力に動きがあります!」
「良し、奴らのリーダーを潰すぞ! 私に続け!!」
「はっ!」
マジっすか! やっぱりマジでつっこみますよねー
小隊長殿の魔導銃から、爆裂弾が連射された。今までは単発的に撃っていたが、マシンガンのように本気の連射だ。小隊長殿の爆裂弾が、敵の目前に弾幕を張ったように爆発している。初弾で、敵のシールドは破壊され、二発目の着弾で致命傷となる。
もちろん、当然敵も撃ち返して来るだろうが、小隊長殿の爆裂弾とは威力が違う。敵の弾を相殺し、さらに敵の魔導士に命中して爆発しているのだ。こっちのシールドまで届く弾はわずかだ。余裕で捌ききれる。
しかし、当然だが爆裂弾は敵も使える。さすがに小隊長殿ほど溜めも無く連射は出来ないだろうけどな。後方で待機していた奴らは、きっと爆裂弾を撃つために魔力を練り込んでいたのだろう。前衛に居た者と入れ替わるように前に出てくると、いきなり爆裂弾を撃って来た。
小隊長殿の曲芸のような戦闘機動で大半を躱し、それでも避けきれない弾は、何とか、シールドの重ね掛けで防ぐ。敵の爆裂弾は連射では無いから、シールドの重ね掛けも有効だ。もちろん複数の人が同じ場所を撃って撃ってきたら連射と変わらないけど、小隊長殿の戦闘機動が、それをさせない。
「ば、爆裂弾です! 下がりましょう!」
「何を言っている! 敵が爆裂弾を撃ったと言う事は、次弾の装填まで時間がかかる。これこそ好機だよ」
でぇぇ!? 好機ってまずは、その爆裂弾を何とかしないといけませんけどね!
「魔力補給! 急げ!!」
「はっ!」
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