第8話 遭遇戦突入
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「第八魔導遊撃小隊より司令部へ、侵入者はオステリカ軍の軍服を着ている。よって明らかに侵略行為である。交戦許可を!」
「ザァ…ザーザー、ザァーー」
「第八魔導遊撃小隊より司令部へ、感度不良、聞き取れない!」
「ザーザー、ザァー……」
「何だよ! 使えないぞ。トレンスナー、お前の通信機ではどうだ?」
トレンスナーさんが、自分の通信機で司令部を呼び出していたが駄目そうだな。
「……駄目です。同じです」
あ、やっぱりですか。
「小隊長殿、これは通信妨害ですね」
ヴォルフさんの言葉を聞いて驚いた。こんなことをしたら、わざわざ自分たちの存在している事をアピールしてしまうと思ったのだが、どうやら違うらしい。通信妨害を行う理由は、近くに既に敵が居てバレてしまったときに、情報を後続部隊に知らせないようにしているそうだ。と言う事は近くに居る敵にはバレても、強行突破できると考えているって事だよな。マズくないですかね??
「小隊長殿、通信妨害に続いて悪いお知らせです。先遣隊と思える奴らの後ろに中隊規模の反応ありです。動きからして先遣隊の後続部隊ですね。しかも魔導士です」
「ほう。それは嬉しくないお知らせだな。本格的な侵攻が始まったということだな。そして、そのことを我が帝国軍の司令部は把握出来ていないというわけだ。このままでは後手に回ってしまう」
「このままでは、指を咥えて見ているだけになってしまう。トレンスナー、何とか司令部と連絡をとり交戦許可をとるんだ。」
「は! 一旦後方に下がって、敵の先遣隊から離れて交信してみましょうか?」
「良し、トレンスナー、ヴォルフの二名で、後方にりだ『タン、タン、タタン……』」
小隊長殿が離脱の許可を与えようとした瞬間。敵からの射撃が始まった。
おそらく、こちらの位置を正確には掴めては居ないようだが、敵の索敵魔法に見つけられてしまったようだ。
そして、運が悪いことにトレンスナーさんのフライタスに敵の魔弾が命中してしまい、起動できなくなってしまった。
「小隊長殿、駄目そうです。まったく起動しません」
あ、これは即離脱だな。
「小隊長殿、トレンスナーさんを抱えて離脱しましょう。このままでは敵軍が来てしまいます」
「いや、レオナ。全員での離脱は許可出来ない。我々は既に見つかって居る。このまま全員で離脱すると、奴らも一緒について来るだろう。そうなると、駐屯地の連中も、我々に当たることを気にして対空砲が使えなくなる。それにトレンスナーを抱えた状態で敵に追っかけられると逃げきれないだろうな」
はぁぁ。もう言いたいことが分かりましたよ。分かりましたけどーー。
嫌だーーーー!
さっき、ヴォルフさん、中隊規模が接近しているって言っていたよね!
「了解しました小隊長殿。トレンスナーさんはヴォルフさんが抱えて離脱。小隊長と俺は、ここで敵の侵攻を食い止めるってことですね?」
「おぅ! さすが副官だ。分かっているねー! そういうわけでヴォルフ、トレンスナーを連れて即離脱だ。そして通信が繋がるとこまで離脱したら、司令部への救援要請と、後続のエミールたちに出動要請だ。行け!!」
いやーー。分かってないですよ! 気持ち的には全然、分かっていないけど。トレンスナーさんを少しでも安全に逃がすには、それしか無いですからね!
ここで、トレンスナーさんを守って陣地を形成し……なんて馬鹿な提案をしたら、俺が殺されそうだ。絶対、「万が一、我々が全滅したら誰が司令部に敵の侵攻を知らせるのだ」って絞め殺される。
はぁ、仕方が無い。まずは小隊長殿に魔力供給だ。俺が生き残れるように、小隊長殿の状態を万全にしておかないとな! でもさぁ、中隊規模だよーー行きたくねーなぁ
「レオナ、行くぞ!」
「はい。もちろんです!」
小隊長殿は、一気に離陸すると、目前に迫っていた魔導士たちに攻撃を仕掛けた。
もちろん、俺も隊長の傍から離れない。
ドン、ドン、ドン。
小隊長殿の爆裂弾が三連射された。敵の動きを牽制するのが狙いだろうな。
あぁあ、やっぱり、敵の魔弾を掻い潜りながらヴォルフさんたちが離陸してしまった。俺もそっちに行きたいような……
はぁーー。仕方が無い! ひっきりなしに飛んで来る弾をシールで躱しながら、小隊長殿の後ろに付く。右からでも左からの攻撃でも対応できるように、飛んでいる小隊長殿の背後を守るように俺も飛ぶ。小隊長殿の僅かな動きで、予測して旋回も追従する。
まずは敵の先遣隊の七体だ。魔物と人のようだが、魔物の種類によって、ずいぶんと戦闘力が変わってくる。
「小隊長殿、あの魔獣……強そうですね」
廃墟の陰から敵の様子を伺うと、異形の魔物がうごめいているのが見えた。四つ足の巨体、光る赤い眼、牙を剥く口――それはテイムされた魔獣だった。
身体の大きさは、人が跨って乗れるぐらいの大きさで、姿は狼に近い感じだ。その魔獣はガルムと言うようだ。
敵は魔獣を先頭に出し、自分たちは廃墟の陰に隠れているようだ。
「そうだな。奴は地上部隊にとっては脅威となる。確実に仕留めておくぞ。問題は敵の魔導士の動きだな。奴ら隠密魔法で完全に隠れているようだな」
ですよねー。魔物は如何にも素早い攻撃が得意そうな姿をしている。敵はこの魔獣で俺たちを追い立てて出てきたところを狙撃するつもりだよな。
ああ、それと余計なことに、先ほど小隊長の言葉で理解したのだが、この魔獣って地上部隊には脅威でも魔導士には、たいしたことが無いってことだろう? シールドを張れば対処できるってことかな。
しかし、まぁ、そうは言っても魔獣が三匹に魔導士が七人だ。それに対して、こっちは二人。しかも、俺は非戦闘員。別に魔導銃を撃てないわけでは無いが、魔導銃の訓練は始めの基礎訓練の時にやっただけで全く自信が無い! いや威張れることでは無いがな。
これで、どうやって戦う? ……あ! 思いついたけど……嫌だなぁーー。失敗したら、撃たれるの俺だよな! でも俺の代わりに小隊長殿にやってもらっても、小隊長殿の代わりを俺は出来ない。
はぁーー。何かツイていないなー
「小隊長殿、俺が囮になりますので、俺を狙って動き出した奴らを狙撃してください」
「おお、さすが副官だ。レオナは死を恐れぬ勇気があるな。なかなか自分から囮を買って出るのは素晴らしいぞ。」
いや、いや。全く勇気は無いし、滅茶苦茶、死にたくないですからね!! むしろ死なない方法は、これしか無さそうだから選んだんですよ!
「はっ! ありがとうございます! 死を恐れていては、活路を開けませんから!」
「治癒魔導士のお前に囮をしてもらうのは申し訳ないが、心配するな、私が必ず奴らを仕留める」
俺は軽く頷き、静かに動き出した。本当に頼みますよー。
崩れた建物や元が何だったのか分からない木材などの陰から陰へと動き、小隊長殿からある程度離れたところで、上空に舞い上がった。
敵の魔獣を狙ったように魔導銃を撃ちこむ。まぁ当然のように外れたけどな。
「うぐっ! クソ見つかったのか!」
あ、あれ? 嘘だろう? 魔獣を狙った魔弾が、たまたま、隠密魔法で隠れていた敵の魔導士に当たったみたいだ。
ドシュ! と言う音と共に敵が後頭部から地面に倒れた。小隊長殿の狙撃だ。
とにかく、シールドを敵の居ると思われる方向に構えながら走る。俺を追うように走って来るガルム。
俺も走りながら、フライタスを起動させ素早く離陸!
フッフン。届かないだろう。空にいればガルムに襲われることは無いので簡単にガルムを狙撃する。これぐらいなら……数発発射すれは、何とか一発ぐらいは当たる! そして、とにかく敵の魔導士に狙われにくいように小隊長殿の後ろ飛んでいるときのようにランダムに動きつつ、ガルムを狙う。
タン、タン、タン
おっと、撃ってきた。何とかシールドを張って躱す。そして、敵の魔導銃の光を目掛けて小隊長殿の爆裂弾が降り注ぐ。あーあぁ、爆裂弾なら着弾地点の周辺も、爆発の衝撃波と破片となった鉛が飛び散るので、敵としては、たまらんだろうな。
何だかシュールな感じだ。何も無かった場所に、突如現れる死体。敵が死ぬと同時に隠密魔法が解除されて死体が突然現れるように見えるのだが変な感じだ。
ふぃー―。何とか七人の魔導士と三匹の魔獣を倒しきった。もちろん、小隊長殿がな!
一応、俺も必死で魔獣に向けて魔導銃で撃ったのだけど、ちっとも当たらない。それでなくても練習していないのに、飛びながらなんて当たるわけがない。
「レオナ、見事な威嚇射撃だった。敵をあぶりだしてくれたから倒しやすかったぞ!」
「ありがとうございます! 隠密で隠れている奴らが居そうなところを狙ってみました」
ああ、たぶん敵も慌てただろうな。絶対、自分は狙われて無さそうなのに、突然、自分の所に弾が飛んで来るんだもんな。
うん。流れ弾って怖いな!
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