第4話 レオナ入隊する
一応連日投稿を目指しているけど、今日は危なかった。何とか今日中に出せた。
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入隊試験当日、前回とは別の建物に向かった。前回行った場所は治癒院と書いていたので、所謂、病院のようなものだったのだろう。それで今回は訓練施設だ。こちらで知力検査と身体能力検査を行うようだ。
郵送で送られてきた書類を持って、訓練施設の受付に出すと受験番号が書かれた木札を受け取り、試験会場へ案内された。教室のような部屋で知力検査を受けたが、まあ、これは予想通りで簡単だった。
さあ、いよいよ身体能力検査だが、前世もあまり運動は得意な方では無かったからな。
結果から言うと、全く想像とは違っていた。運動能力は関係ない。体に電極のような物を付けてジッとしているだけだ。何かのデータを取っているようだったが俺には教えてくれそうにない。
検査は以上だった。結果は後日と言う事で、また帰されてしまった。
あぁぁ、なんだかじれったい! 良しとか、大丈夫とか、問題ないとか、何か言ってくれよ!!
――――
数日後、待ちに待った通知が届いた。
ようやく、俺は帝国軍への入隊が決まったのだ。今度こそ、院長に挨拶をして孤児院を出て軍の宿舎に入ることが出来た。
よし! ここから新たな人生が始まる――って初めはワクワクしていたが、それは想像以上に過酷なものだった。
「貴様らは今日から帝国軍の兵士だ! それに相応しい心と体を叩き込んでやる!」
鬼のような形相で叫ぶのは、訓練教官のマルクス軍曹殿だ。鋼鉄の声で新兵たちを容赦なく追い立て、訓練場は一瞬で地獄と化す。そう、俺の新兵としての基礎訓練が始まったのだ。
いや、マジで二度目の死を迎えるんじゃないかって思ったよ。
朝から晩まで繰り返される走り込み、腕立て伏せ、荷物を担いでの行軍。日が昇る前に叩き起こされ、日が沈むまで動き続ける。「限界」と口にする暇すらない。汗と泥にまみれ、息が切れる。新兵たちの誰もが呻き声を上げ、時には血反吐を吐きながら倒れ込む者も出た。
背中に食い込む軍用リュックの重さに足が痺れ、何度も転びかける。だが、その度に自分に言い聞かせる。
「ここで倒れるわけにはいかない。死んでも治癒魔導士になるんだ……必ず……!」
まあ、実際に一度死んでも医者になりたいと思い続けたぐらいだ。そう簡単には諦めない!
訓練は個人の強化だけでなく、チームとしての連携も求められた。整列が少しでも乱れれば連帯責任で罰走。食事時間もろくに与えられず、倒れそうになる中で互いを支え合う場面も増えた。
「おい、立て! 俺の肩につかまれ!」
初めは名前も知らなかった同期が手を差し伸べてくれた。俺もまた、ふらつく者には手を貸した。孤児院育ちの俺にとって、支え合う仲間がいることの心強さを初めて感じた瞬間だった。孤児院では仲間と言うかライバルだったからな、うっかりすると俺のパンが無くなっている世界だった。
だが、訓練は甘くない。ある日、兵士として最低限の基礎体力を測る体力試験が行われた。
結果は――俺はギリギリで合格ラインを超えた程度だった。
そして、合格ラインを超えることが出来なかった者は、ここで終了となって去って行った。
俺は幼少の頃から孤児院育ちだったのもあって、食事量が圧倒的に足りていなかったのだと思う。入隊した当初、同世代の他の者に比べると、ずいぶんと貧相な体つきだった。それでも、死ぬほど鍛えられ、しっかりと飯を食べないと体力が持たないから吐きそうになりながらも詰め込む、そんな毎日のお陰で少しはマシになった。
しかも、メシウマ―。仲間の様子を見ると、たぶん一般的には、あまり美味しくないんだと思うが、俺にとっては滅茶苦茶美味しい! 生まれて初めて食べた料理ばっかりだった。しかも調味料の味がある。この世界に調味料があったんだな。あ、いや、飯がウマいって話では無くって訓練だ。
「うーーん、このままじゃダメだ……治癒魔導士になんて遠すぎる」
今回はギリギリで合格出来たが、次は分からない、もしかしたら終了を告げられるかも知れない。俺は、まだやれる!
疲労でヘトヘトの身体を引きずりながらも、訓練後も自主練習を始めることにした。
毎日、自主練を重ねて、疲労でベッドに倒れ込んだ俺は、孤児院にいた頃の自分を思い出した。あの頃、パンにありつくことだけを考えていた。医者への夢は持っていたが、実現手段が思いつかなかった。だが今は違う。
「こんな所で終わってたまるか……!」
医者になる夢。自分が選んだこの道を諦めない。弱音を吐くのは簡単だが、俺には帰る場所も無い。やれる限り、やらないと、中途半端なことをして落とされでもしたら、せっかくのチャンスを失ってしまう。だから頑張る!
早いもので、通常の訓練とさらに自主練も行い続けて、遂に入隊して三か月が過ぎようとしていた。
最後の試練として、数十キロの装備を担いだまま山道を行軍する過酷な訓練が課せられた。道中、何度も倒れそうになるが、歯を食いしばり、一歩ずつ足を前に出す。後ろで教官が怒鳴りつける声が響く。
「立ち止まるな! 死んでも前に進め!」
体力は限界を超えていた。だが、胸の中には前世から現世に至るまで思い描いていた夢と、新たに芽生えた仲間への思いがあった。
「……治癒魔導士になるんだ……絶対に……!」
太陽が傾き始めた頃、仲間と共に山頂のゴールへたどり着いた。
行軍訓練を終え、初めての休息が与えられた夜、暗闇の中で星空を見上げる。身体はボロボロだが、今まで味わったことのない達成感があった。そして、教官マルクス軍曹が静かに告げる。
「貴様らはよく耐えた。これで基礎訓練は終了だ。次からは、それぞれの適性訓練に移る。レオナ、貴様は治癒魔導士候補だな。必ずなれよ!」
俺の胸に、再び熱い決意が灯る。
「はい。軍曹殿! 自分は、治癒魔導士になります――戦場の医師として、必ず夢を叶えます」
――――
過酷な基礎訓練を乗り越えた新兵たちに、新たな指令が下された。
「魔導士候補は別命を受け、フライタスを用いた魔導訓練に移る!」
マルクス軍曹の号令に、レオナの心臓が大きく跳ねた。“魔導士候補”――その言葉に自分が選ばれたことを実感する。
訓練場の隅に連れて行かれると、そこには魔導士候補の新兵たちが集められていた。前方には魔導制御装置「フライタス」が並んでいる。これは魔導士から放出される魔力を機械的に推進力に変換し空を飛ぶための装置だ。背中に背負うランドセルのような装置と足に履く厚底ブーツのような物がセットとなっている。ランドセルの部分でエネルギー変換を行い、ブーツ底で推進力を発揮している
「フライタスの訓練は地獄って話だぞ」
隣の同期が怯えたように囁くが、俺は平然とした顔で静かに前を見据える。
しかし、心の中は穏やかでは無かった。いや、基礎訓練でも地獄を見たんだ。もう、地獄以外にしてくれ!
「魔力を鍛えるにはまず、己の魔力の“限界”を知ることだ。」
そう語るのは、魔導士訓練担当のエリーザ・ハルトマン准尉。彼女は冷静沈着な態度と整った容姿で、他の教官とは違う鋭い雰囲気を漂わせていた。しかし、その言葉! 基礎訓練でも似たような言葉を聞いたぞ「己の体力と気力の“限界”を知る」とかなんとか言っていましたが!
教官なんてする者は脳筋しかおらんのか??
「フライタスは魔力を引き出し、蓄積しコントロールする装置だ。だが制御に失敗すると魔力は暴走し、ブーツを履いた足は千切れ飛ぶことになる。もちろん、操作を誤れば壁に激突や、地面に叩き付けられることになるだろう」
准尉殿の言葉を聞き、俺たち新兵の顔には緊張が走る。思わず唾を飲み込んだ。おい、別の地獄にも直ぐに行けるらしいぞ。
訓練は、ブーツは履かずに、ランドセルに両手をかざし、ゆっくりと魔力を流し込みながら自分の限界まで放出するというシンプルなものだった。しかし――。
「うぐっ……!」
フライタスを通じて魔力を放出し続けると、まるで体の芯が抜けていくような感覚に襲われる。腕が痺れ、頭が割れそうになる。それでも、途中で止めれば訓練は失敗だ。
「周りに漏らしていても意味が無い。力を一点に集中させろ。ただ闇雲に出すのではない」
准尉殿が淡々と声をかける。
必死に魔力を制御しようとするが、思うようにいかない。フライタスの光が不安定に揺れ、装置の数値は低いままだ。
だめだ……こんなことじゃ……!
他の新兵たちが次々と倒れ、訓練場に静寂が訪れるた。まだまだ……倒れるわけには行かないんだよ!
フライタスの光が少しずつ安定し、数値が徐々に上がり始める。
「……やれる、俺はやれるんだ!」
限界を超えようとする気力が、魔力を引き出していく。装置の数値が目的の値に到達した!
准尉殿が初めて表情を緩め、小さく頷いた。
「そこで良い。お前は適性がある。魔力は才能ではなく、鍛錬で磨くものだ。これからも鍛錬に励め」
はぁはぁはぁ。
訓練が終わり、地面に座り込んで息を整えながら、疲労で震える手を見つめた。魔力を使うということが、こんなにも心身に負担をかけるとは思わなかった。
治癒魔法はさらに厳しいのかな……いや、人の命を救うんだ。簡単なわけがないか。
背後から准尉の声が響く。
「今日の訓練は序の口だ。魔導士として、さらに治癒魔導士として生きるなら、もっと過酷な日々が待っている。それでもお前は進むのか?」
俺は立ち上がり、准尉殿の方を見つめる。当り前だ! それ以外に道は無い。
「進みます。俺は、人を救える治癒魔導士になりたいんです」
准尉殿は無言で頷き、背を向けて歩いて行った。
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