10-1.令嬢、美容品と冷蔵庫を開発する
<!まだ★を入れていない方へお願い!>
捨てられ令嬢、そろそろ表紙落ちしそうです。
できましたらご協力をお願いします!
少しでも面白いな、と思っていただけたら、
お手数ですが現状で面白いと思い程度でよいので
「⭐︎→★」お願いします!
できたら、いいねもいただけると、
作者が今もこれからもやる気になります(^-^)
よろしくお願いいたします♡
「どうしたんですか? アンネリーゼさま」
侍女のマリアから、先ほどから唸ってばかりの理由について問われた。
「それがね、高い山々から乾いた風が吹いてくる地形のせいか、肌が乾いて荒れるのよ。マリア、あなたはそう感じない?」
私は鏡台に座って、両頬に手をあてながら尋ねた。
「ああ、確かにそれは……。バウムガルデン王国にいたときは、肌も唇もなにもしないでも潤いを保てていたのですが、こちらへ来てからは、どうも荒れやすくて……。我々使用人は当然水仕事もしますし、手も荒れやすく、困ってしまいます」
と、マリアからも同じ悩みを持っているのだと共有できた。
「化粧水が欲しいわねえ……」
やっぱり、手軽にできるとすると、ハーバルウォーターという化粧水。芳香蒸留水とも呼ばれる。バラやハーブの中で、肌に良いとされるものを、水で蒸し上げ、その有効成分を水に溶け出させるのだ。ちなみに、この過程で一緒にハーバルオイルも作れるから、それを使って香り付きのリップクリームやハンドクリームを作ってもいい。
前世では、こういった天然素材を使った手作りの化粧品を作るのが好きで、作ってみたことがあるのだ。
「うん、作ってみよう!」
私は、紙に欲しいものをリストアップした。
書いたのは、バラとハーブ類、蒸留器、蜜蝋。
最後に書いた蜜蝋は、リップクリームに使う予定だ。ああ、小指ですくい取って塗る、なんて手を汚さずに済むように、リップスティック型にできると良いわね。
というわけで、ついでにリップクリームのケースの構造を書いておく。
「ねえ、マリア」
「はい、なんでしょう?」
「これを、商会のエッドガルドさんに届けて欲しいんだけれど……」
するとマリアが私の方に歩いてきて、そのメモを受け取り、一瞥する。
「お嬢さまは、これらをご所望と」
「ええ、そうなの」
「承知いたしました。すぐにエッドガルド商会にまで向かいます」
さすが有能な私の侍女マリア!
さっと見ただけで、あれが私がほしいものだと理解してくれた。そして、即行動に移ってくれる!
「大好きよ、マリア!」
私は、マリアのそんな有能ぶりが嬉しくなって、マリアに飛びついて首に腕を絡めて抱きしめる。
「お、お嬢さま。急にどうなさったのですか……?」
いきなりそんなことをされたマリアは、きょとんとした顔で不思議そうにしている。私はそんなマリアに頬ずりする。
「ううん。ちょっとね。私は有能な侍女を持っていて嬉しいなあって思ってね」
すると、ちらっと横目でみえるマリアの耳朶が赤くなっているのが見えた。私の賞賛の言葉に照れているらしい。いつもは有能でクールな侍女って感じで振る舞っているのに、可愛いわ!
「ん~! マリア、大好き!」
「お、お嬢さまっ」
抱きつく私の身体を受けとめるマリアがうろたえる。
「うふふ、虐めてごめんなさい。でも、大好きなのは本当よ?」
私がそういうと、マリアが目を細めて微笑む。
「使用人にはこれ以上ない、嬉しいお言葉です。では、エッドガルドさんのもとに行って参りますね」
「ええ、よろしく」
そうして、私はマリアを送り出したのだった。
◆
マリアを送り出して、もう戻っては来まいという頃になって、私はベッドの上に大きくジャンプして身体を投げ出し、大きくため息をついた。
ちなみに、ベッドにダイブするクセは、前世に身につけたものである。五歳の頃に記憶を取り戻したおり、ベッドにダイブするクセを思い出した。もちろん、しかるべき立場の令嬢なのだから、人がいるときにはけっしてしない。
「どうしたもんかなぁ」
悩んでいるのは、軍事大国ハイデンベルグの王弟マルクさまから贈られた贈り物である。
彼の銀髪か私の銀髪か。いずれにせよ、初めての贈り物である。そのためか、それほど高価ではなさそうだが、かといって作りは精緻で品のある、素敵な宝石箱だった。
──でも私って、マルクさまから贈り物をいただくような間柄だったかしら?
当然、恋人や婚約者同士なら贈る。ちなみに、片想いでも贈る……が。
マルクさまとなんて、先日一度しか会っていないのに。
初めてお目見えした日以後、ハイデンベルグ国王陛下は予定どおり帰国なされたのだが、王弟マルクさまは、デラスランド公国で見聞を深めたいとのことで、まだ滞在中らしいのだ。
で、その遊学中のマルクさまが、なぜ私に贈り物をしてくるのだろう?
──マルクさまって、どーみても一目惚れとかするタイプじゃないよね。
第一印象インテリ眼鏡。利を見るタイプ。
いくら性格や容姿が好みだったとしても、自分に利のない相手は男女いずれとも相手にはしなさそうな印象だ。
──高校生の頃、初恋で玉砕したよなー。
私は勝手な印象のマルクさまがきっかけで嫌な記憶を思い出した。……って、前世の記憶って思い出なのかしら?
ま、まあそれはおいといて……。
当時高校生の私はひとつ上の学年の先輩に恋をしていた。ルックス良し、学業良し、スポーツ良し。なにをやらせてもそつなくこなす、女子に人気の先輩だった。
玉砕は覚悟していたよ。していたけど、バレンタインデーとかのイベントだと、友達と一緒に、それぞれ好きな人に本命チョコ渡してコクろうとかなるよね!?
……え、古い?
でも、私は親友と二人、それぞれ好きな人にチョコを渡すことにしたのだ。あまずっぱい記憶である。
「先輩。好きです! 付き合ってください!」
私は、チョコレートを箱に詰め、ラッピングした箱を先輩に差し出した。恥ずかしくて、そのときの先輩の顔は見られなかった。
「俺はさ」
「はっ、はい」
「学年でも一、二を争う学力があるじゃない?」
「はっ、はい」
「スポーツもそれなりにまんべんなくこなして、ルックスも悪い方じゃない」
「……」
「ね、君には何があるの? 君と付き合ったら俺にどんなメリットがあるのか、それを教えてくれたら考えるよ」
顔を上げたら、先輩が笑ってた。
私はチョコレートが入った箱を握りつぶしてから、先輩に投げつけ、そしてきびすを返して帰途についた。
「あ~、嫌な思い出」
マルクさまのせいで、変な記憶がよみがえってしまった。いや、マルクさまのせいではない、けっしてない。でも、すでに黒歴史ともいえる。あれだ、トラウマなのだ。
そんなことを思い出しながら、贈り物の銀の宝石箱に手を触れた。
「嫌な思い出があるからって、この品を贈って下さったマルクさまは別人。どんな思いでこれを選んで下さったのだろう?」
小さな好奇心がわいて、銀細工の宝石箱に手を掛ける。そして、そっとその蓋をあける。
♪~
ピンが歯を弾いて音を奏でる。それは、多分大陸上の大半の人が知っている、かつていらした慈愛の大聖女さまの子守歌だった。
「……なんだ」
ちょっと気負ってしまっていた自分を笑ってから、身体の力が抜ける。ごくごく普通の、女性へのそつのない贈り物だった。
「これのお返し、なにがいいかしら?」
この品へのお返しだったら、一般的な当たり障りのない品がよいだろう。
「うーん、でも王弟殿下ともなると、品は良いものがよさそうよね」
私は頭の中で考える。
前世だったら、贈り物のお返しといったら、ザ・定番のハンカチ! だったけど。
──ああ、ちょっと手刺繍を入れたハンカチなら、消耗品だし良いかも。
刺繍は女性の嗜みだ。それが当たり障りなくできることをおつたえするのにも、小さな手刺繍入りのハンカチくらいなら令嬢の嗜み、適度な贈り物ね。
図案はどうしよう。まあ、ハイデンベルグ王国の王家の紋章が一番無難かしら?
そうして、私はワンポイントの家紋を入れたハンカチを縫い上げ、マリア以外の侍女に包んでもらい、届けてもらったのだった。
◆
正直なことを言えば、
読み続けてくださっている方って、
大抵★入れてくださっていると思うので、
そんなに上がらないんだろうな……とは思うのですが^_^;
もうちょっと表紙にいたいのでお願いします(^∧^)