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綻びのこがね  作者: フジ
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持ちつ持たれつ

「そ…そんな悪いですよ。

俺の部屋はただでさえ、こんなに片付いてなくて埃っぽくて、自分でやっておいた俺も手を焼くのに、それを先輩にやってもらうなんて迷惑すぎます。」


「いいのよ。

私は料理はあまりだけど、掃除なら家で定期的にやってるから得意だわ。

それに、これは私をあの時、看板の下敷きにされそうになったのを助けてくれた分。

これで貸し借りなしよ。」


「あれは当然の事です!

俺達の命を預かってる先輩を守るのにお礼なんていりません!

斬り込み隊隊長は先輩にしか務まらないんですから!」


かなりしつこく食い下がる昇太郎に段々と苛々してきた美月は右足を一歩前に力強く踏み鳴らし、左手の人差し指で昇太郎を差した。


「あぁ、もう、うるっさいわね!

上司が親身になってこう言ってるんだから、こういう時は素直に甘えていればいいの!

私がやりたくてやってる節もあるんだから!」


「は…はい…。」


上司らしい鬼気迫る剣幕で怒る美月に昇太郎はたじたじになりながら、素直に了承した---


掃除を開始して数分が経った頃、あれ程までに乱雑に置かれた日用品や服などが、今ではしっかりと区分けて整理され、人様を家に招く程度には整理整頓されている。


今は整理されて出てきたわたゴミなどを掃除する為に美月が掃除機掛けをしている。


これが終われば晴れて、この部屋の掃除が完了となる。


(それにしても、先輩がさっき言ってた事ってマジなのかなぁ?

料理を振る舞ったり、俺の服を洗濯したり、今みたいに俺の家を掃除してくれたり…。

何か…想像するだけで…。

うわぁ…滅茶苦茶嬉しいけど、凄くドキドキするぜ…。)


昇太郎は先程、美月に言われた事を頭の中で想像して、1人鼓動を高鳴らせ、顔を赤らめていた。


「昇太郎、掃除終わったわ。

どうかしら。」


「ぎゃわ、先輩。

どうも、ありがとうございます。」


「ん?

何か、凄く顔赤いけど、熱でもあるの?」


「そっ、そんな事ないです!」


昇太郎を覗き見るように上目遣いで顔を近付ける美月に昇太郎は身体を引きながら首を左右に振って両手を左右にぶらぶらさせて否定の意を示す。


それを見た美月は昇太郎から身体を引く。


「そう?

まぁ、いいけど。

それよりも、こんな感じになったけど、どうかしら?」


「おぉ、凄いです!

もう十分ですよ!

ありがとうございます!」


「そう…。

ふぅ、良かったわ。」


今までにない部屋の変わりようを見て、昇太郎は目を見開いて驚く。


こんなにも部屋が綺麗なのを見るのを昇太郎は一度も体験した事がなかった。


「そしたら、今度はお夕飯を用意するわね。

台所、借りるわよ。」


「そ、そうですか?

じゃ、じゃあ…お願いしてもいいですかね…?」


「えぇ、そうしてちょうだい。」


美月は台所に行き、冷蔵庫から食材を何個かチョイスして、それを台所に置いた。


そして、シンクの下の棚から包丁を取り出して、食材を切り始める。


(キタァ!

遂に…先輩の手料理を食べれる時がぁ!

どんなものが出てくるか、楽しみだ!)


顔をだらしないくらいにニヤけさせ、ウキウキしながら待っていると、突然美月が振り返り昇太郎に尋ねてきた。


「そういえば、昇太郎って味は濃いめが好き?

それとも薄め?」


「そ…そうですね…。

でも、先輩が作ってくれるならどっちでも…って、ちょっと待って下さい!」


昇太郎は先程までのニヤけた顔で美月の質問に応じていたが、美月の今の有り様を見て表情が一変する。


そして、布団をすぐさま払いのけ、美月に駆け寄る。


「えっ?

ど、どうしたの?」


流石の美月も急な昇太郎の態度の一変についていけずに、思わず心配そうに声を掛ける。


「どうしたじゃないですよ!

先輩、その包丁の使い方、かなり危険です!」


そう言われる美月の包丁の使い方は恐らく片手だけで力任せに包丁を上下に動かすような使い方だった事が窺えた。


その有り様を見て、すぐに危険を察知した昇太郎は唐突に美月の包丁を握る手を掴む。


「へっ?」


「いいですか、先輩。

包丁の使い方はこんな感じで前後に包丁を引いたり押したりを繰り返しながら使うんです。

さっきやってたように上下に動かしながら力任せにやるものじゃないです。

下手をしたら怪我をするかもしれないですよ?」


昇太郎は美月に密着しながら先程掴んだ手を操りつつ、実践で彼女に包丁の使い方を教え始める。


「は、はい。

分かり…ました。」


「ん?

先輩、どうかしましたか?

何か、変ですよ?

………あっ、すみません!

今離れますね!」


「い、いいのよ、何も気にしてないから。

急に身体を密着してきたから少し驚いただけ。

危うく、また怪我をしそうになったんだもの。

助かったわ。」


唐突な身体の密着にされるがままの美月は口調も丁寧語になって顔も紅潮する。


その態度の変化を訝しんだ昇太郎は今の状況をかなりの時間差で理解し、美月から身体を離す。


(料理が下手だとは聞いていたが、まさかここまでだったとは…。

今、簡潔に教えたとはいえ、また新たな問題が浮上するかもしれない。

ここはもう見てるだけじゃなくて手伝わなきゃ駄目だな。)


「ちょっと心配なので料理だけは手伝います。

掃除は苦手ですが、料理は割と得意なので。」


「そ、そうね。

それが一番妥当ね。

2度も部下に心配させたら上司としては不甲斐ないわ。

お言葉に甘えて、手伝ってもらおうかしら。」


互いに合意をした2人はほぼほぼ昇太郎の手引きで料理をしていった---

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