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強行犯特別捜査班 Final  作者: 村雨海香
7/9

イジメ捜査 7

病院シーンでいくつかありえない演出があります。

 結城は病院から戻って来ると、刑事部屋には誰も居なかった。まだ誰も戻って来てない様だった。そこに東都新聞の沖島カリン記者が入って来た。

「記者が何の様です。ネタなんてありませんよ。」

「今回の事件安積警部補が襲われてしかも、過去が関わっているそうですね。」

「ねえ貴方、岡田寛子さんについてなにか知ってる。」

 沖島は目を見開いた。

「知っているもなにも、岡田寛子さんは私が書いているコラム『子供と共に』の人物です。」

「じゃあ寛子さんって『コゴ』ってグループで活動していたの。」

「はい、メンバーは岡田寛子さん、宮崎晶子さん、桜木温子さん、片瀬典子さん、広瀬直子さんの五人です。コゴって言うのは、みんな名前に子が着いていて五人いるからだそうです。岡田寛子さん以外みんな製造業で働いています。岡田寛子さんはボランティア活動をするために学校を休んで資格を取ったんです。」

「じゃあ東雲弘康さんの事は。」

「私が直接関わった訳ではないですが、報道の友人が取材してましたよ。あのかたもボランティアで地域に貢献してたみたいですから。さっきから私ばかり答えているじゃ無いですか。結城さんこそ事件の詳細教えください。」

 結城は俯いてしまった。答えるに答えられなかった。

「全く事件の証拠が見つからないの。謎ばかりで潰さないといけないものが多過ぎる。」

 結城のその言葉を聞くと、沖島記者は刑事部屋を出て行った。結城はスマホをだし、安積に先ほど記者に言われた事を話しした。

「ハンチョウ、岡田寛子さんはコゴというボランティア活動をしていました。メンバーは渋谷の居酒屋であった宮崎晶子さん、桜木温子さん、片瀬典子さん、広瀬直子さんの五人です。名前の由来は五人の子という意味だそうです。岡田寛子さんはボランティア活動をするため学校を休んで資格を取ったそうです。」

『資格を取るため学校を休んだのは、私たちが卒業した二年後だったそうよ。』

 安積の淡々とした声に、結城は驚いた。

『友人から聞いたの。先生ね私が警察官になったこと知ってたみたいなの。不思議ね。何処で知ったのか全くわかんないの。話しが脱線したわ。そのコゴってグループなんだけど、東都新聞のお気に入りだったみたい。新聞で何度か取材受けてたみたいね。私新聞見ていながら全く気付かなかった。』

「先ほど東都新聞の記者に話しを聞きました。ハンチョウと同じ事言っていました。」

『東雲先生はね、ケイト覚えてる。新宿のマンション火災。』

「覚えていますが、確か、住人が外に置いていた新聞に火をつけ大火事になった事件ですよね。」

『そう、その中に東雲先生の奥さんと子供がいたそうなの。でマンションが燃えた先生は渋谷の仮設アパートに引っ越したそうよ。私の友人が遺族寄り合い所の職員で最後まで面倒みたから覚えていたの。それに先生五十二歳で介護退職してた。ずっと勉強してて、本当に介護退職になって、そんな生活も三年間で終ってしまって結局教師に復活せずにいろんな介護施設でボランティアしてたそうよ。何度かテレビの地域番組で放送されてたそうよ。』

「ハンチョウにそれだけ言われたら、私なんにも話すことがありません。逆にそちらは他になにか収集はありましたか。」

 安積は少し考え言うか迷ったが言った。

「私の中学の友人が匿名で、私の事ニュース速報で流れたってメールが来たそうなの。本当にニュースになったの。」

「なりました。」

『どんな内容だった。』

「道で一人の女性が何者かに襲われ緊急搬送された。搬送された人物はーー署の安積ミツキ警部補と。」

『搬送された病院は放送されて無いわよね。』

「ええ、基本搬送先の病院は無公表ですから。」

 電話の奥で安積が鼻で笑う声が聞こえた。

『きっと今日か明日辺り犯人が私を襲いに来るわ。それとケイトこの事件はただの殺しじゃないわよ。』

 そう言うと安積は電話を切った。結城は止めたが遅かった。結城はスマホをポケットにしまうと会議室に入った。ただの殺しでは無い全く意味がわからなかった。ただ真っすぐ岡田寛子と中山マナミ、東雲弘康と山崎ユラとしか繋がらなかった。


 他のメンバーが防犯カメラのデータを持って帰って来た。まずは、山崎の家の近くの防犯カメラを見ていった。防犯カメラは四つあり、東西南北となっていた。山崎が殺したと思われる日曜の夜は全く動きが無かった。次に中山のアパートのカメラを見ると、土曜日の深夜に家を出て行く姿かあった。止めて時間を見ると、殺害された時間を過ぎていた。そこで結城は気づいた。どちらにもアリバイが作れる事を。

「交換殺人。」

 結城の呟きに班員みんなが振り向いた。竹内が聞いた。

「どういう意味ですか。」

「ハンチョウが言ったの、この事件はただの殺しじゃ無いって。何で私こんな簡単な事に気付かなかったのかな。そうよ、この筋なら通るは。それにお互い怪しまれる事が無いもの。」

 楢野は時間を進め、中山の日曜夜の行動を見ると、東雲が殺される少し前に家を出た姿が見られた。山崎も土曜日の深夜の行動を見ると、岡田が殺される少し前に目黒公園方面に向かっていた。

「これで犯人逮捕も目の前よ。」

 楢野中野は中山の家に、竹内永尾は山崎の家に向かった。結城は楢野中野と行動を共にした。


 竹内永尾が中山の家に着く頃、夜が深くなり冷え込みが強くなっていた。

「まさか交換殺人だなんて思わなかったわ。やっぱり謎よね、ハンチョウを知っていたって言うのが。」

「そうね、山崎を任意で引っ張ってもでないかもしれないし、最悪の場合釈放したら今度は二人でハンチョウを襲う可能性もあるのよね。」

 竹内永尾は山崎の家の前に来た。山崎の家は質素でも豪華でも無い、ごく一般的な家だった。竹内はインターホンを押した。山崎はエプロン姿のまま家から微笑んで出てきた。

「お忙しいなかたびたびすみません、ーー署の竹内と永尾です。少しお話いいですか。」

 山崎は表情を変えた。

「また警察の方ですか。昼間来た警察官に全てお話したので、もう話す事がありません。」

「貴方になくてもこちらには聞きたい事がいっぱいあるので、署まで任意同行願います。」

 永尾は竹内を遮り前に出た。永尾は犯人を見るような目をしていた。

「ナツホ、流石にいきなりはダメでしょ。」

「ヒロキは動きが遅いの。もっと直進していかないと、答えに追いつけないの。一度怪しいと思ったら疑いが晴れるまで貫き通すの。すでに防犯カメラの証拠も撮れてるの。」

 竹内は永尾の言われるままになっていた。

「山崎さん、今言ったようにこの周辺の防犯カメラに貴方が映っていました。岡田寛子さん東雲弘康さん殺人事件の重要参考人として署までご同行願います。」

 山崎は旦那に話しをし、竹内永尾と共にーー署に向かった。しかしその顔には悲しみではなく笑みが見えていた。

 結城楢野中野が中山の家に向かっていた。結城は嫌な胸騒ぎがずっとしているのだった。結城は無意識に結婚指輪を回していた。

「結城さん、どうかしました。何か不安な事があるのですか。」

 中野はいつも結城と一緒に行動しているため、だいたいの癖は把握しているのだった。

「イツキ何でそんな事。」

「結城さんが指輪を回しているときいつも不安な時なんです。何か不安、それとも胸騒ぎがするんですか。」

 結城はフッと息をつき言った。

「中山の家に近づくにつれて嫌な胸騒ぎが強くなってるの。」

 中山の家の前に着くと一ヶ月分の新聞が積んであった。結城がインターホンを鳴らしドアを叩いたが、中に人がいる気配が無かった。ドアノブに手をかけると、鍵が掛かって居なかった。念のため装備していた銃を手に持ちドアを勢いよく開けるとそこに中山の姿は無かった。結城は慎重に中に入ると思わず息を呑むほど怖いものがあった。壁に貼られた新聞記事は東都新聞のコラム『子供と共に』だった。そこに映っているのは岡田寛子の写真だけで、他のメンバーは映っていなかった。その写真は見るも無残に切り裂かれていた。机の上にはテレビを撮った写真が散乱していた。その人物は東雲弘康だった。机の上に散らかった写真の中には一ヶ月前の新聞があった。新聞を開くとその記事は安積が潜入捜査を行った時、楢野が襲われた事が載った新聞だった。まさかと思い、結城は楢野中野を連れて安積の病院に急いで向かった。


 面会時間が終わり、病院では就寝時間となっていた。病院は闇に包まれ、より一層恐ろしさが増していた。明かりが付いているのは救急病棟のみとなっている。当直看護師も見回りを休み、ナースセンターで休んでいた。病棟の廊下は非常口の緑と消化設備の赤、間接照明の白が細く光っていた。そこに一つ影がぼんやりと浮かんでいた。小さく足音が響き、影が揺れ部屋の前にたった。ガラリとドアを開けるとベットが一つ、誰かが眠っているようだった。その人物は鞄から包丁をだし、大きく振り上げた。ざくりと刺さり、赤い液体が流れ始めた。

「やった・・・・・・、ついにやったわ。復讐ができた。」

 その人物が部屋から出ようとしたとき、明かりが着いた。

「なにができたの。中山マナミ。」

「・・・・・・安積何で。」

 そこは安積の病室で、入って来たのは中学時代安積をイジメていた中山マナミだった。安積は覚束ない足取りで中山に近づいた。

「残念ね、私を殺せなくて。ここにあるのは本物の血と布よ。」

 布団をめくりそれはあらわになった。

「さあ貴方は人を殺そうとした、いや殺したという事は覚悟ができてるのよね。次は自分が殺されるって。貴方の犯した罪、話してあげようか。貴方はまず、岡田いいえ梶野寛子先生の遺体を目黒の公園から代々木公園に連れてきた死体遺棄、東雲弘康先生を殺した殺人、そして私を殺そうとした殺人未遂が二回。どう間違ってる。」

 中山は俯いていたが顔を上げ安積に突っ掛かった。しかし素人には安積等の警察官に勝てる訳が無い。あっけなく中山は安積の下敷きになり、腕に手錠をかけられた。

「中山マナミ、公務執行妨害及び殺人未遂、銃刀法違反その他諸々の容疑で現行犯逮捕よ。後は詳しく署の方で話してもらうは。恐らく、山崎はもう取り調べ室の中よ。」

 安積は結城に連絡しようとスマホに手を伸ばすと、引き戸が勢いよく開いた。

「ハンチョウ、無事ですか。」

「ケイト、早かったわね、大丈夫もう中山は逮捕したは。ヒロとナカは中山を署に運んでちょうだい。」

 楢野と中野は中山を署に連行し結城は病室に残った。安積は立ち上がると、手を口元に当てしゃがみこんでしまった。

「ゴメン、気が抜けたら気分が悪くなっちゃった。ゴメンね。」

「謝らないでください。私たちが来るのが遅くなってしまったのが悪いんです。」

「ところで中山の家はどうだったの?」

「どうして私たちが中山の家に行ったとご存知なんですか。」

「何となく、私だったらそろそろ任意で引っ張るなと思って。まあ女の勘よ。」

 安積は重い身体を持ち上げベットに腰掛けた。

「中山を署の刑務所に入れて、取り調べは明日行ってちょうだい。山崎も今日は打ち切りって伝えといて。」

「わかりました。本日はゆっくり休んでください。」

「ケイトちょっと待って。」

 安積は帰りかけた結城を引き止めた。

「お願いがあるの。梶野先生と東雲先生の家の家宅捜査礼状を明日朝一取ってちょうだい。」

「わかりました。でも中山や山崎のはいいのですか。」

「二人は自供を取ってからでいいわ。中山はいいけど、山崎は家族があるからね。後、山崎と中山の記録だけは取っといて、それから家宅捜査の方に向かってちょうだい。梶野先生の家に行くときは連絡ちょうだい。これで以上よ。引き止めて悪かったわ。」

「大丈夫です。では失礼します。」

 結城は挨拶をして部屋を出て行った。安積もベットに腰掛けていたが、直ぐに布団に潜り眠りに着いた。

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