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強行犯特別捜査班 Final  作者: 村雨海香
1/9

イジメ捜査 1

今回は星座の話しがあります。

誤字脱字等ありましたら連絡お願いします。

先生の言葉は実際言われたことを少し変えています。

 深夜の東京渋谷は明るかった。渋谷のセンター街はキラキラと輝き、スクランブル交差点は若者が行き交っていた。渋谷の街を抜け目黒区へ向かっていた、中学教師岡田寛子は久しぶりに友人と渋谷の街でお酒を飲んでいた。過去の教師生活の話しを引っ張り出し、今では還暦前のおばさんになったと喋っていた。お酒が入れば話しは弾む。気付けば終電が行ってしまった。仕方なく渋谷の街を歩いて抜けようとしていたのだ。

「はあ。お店出たとき電話借りてタクシー呼べばよかった。こんな時に限ってスマホの充電切れるなんて、付いてないわ。」

 ため息混じりに岡田は呟いた。

「でもとっても懐かしかったわ。みんな今頃何しているのかな。」

 中学校教師として長年働いてきて、あのクラスは大変だったとか、あのクラスは静かだったなとか思い出しながら歩いていた。

 家がある目黒に着くと何となく懐かしい公園に向かった。

「あのこたちと良く遊んだね。みんな中学生なのに子供みたいにはしゃいで、懐かしいわ。」

 岡田はブランコに座り目をつぶった。ゆっくり目を開け空を見ると、オリオン座が見えていた。

「空は繋がっているから、みんなもこうして見ているのかな。誰か一人見てくれてたら嬉しいな。」

 岡田は笑ってブランコを降りた。

「あの、岡田さんですか。」

 岡田はは突然話し掛けられ驚いた。

「そうですが、貴方は。」

 黒いパーカーを着て顔は見えない。しかしその声はそこまで若くない。

「あの、どう、うぐ・・・・。」

 岡田はその人物に腹を刺された。包丁を抜きもう一度、また一度と何度も刺した。息が止まるのを確認すると、包丁を刺したまま、パーカーと手袋を外し姿を消した。


 渋谷の街は夜になっても眩しい。遠くから眺めても分かるほどだった。ーー署の屋上は三百六十度見渡すことのできる、最高の場所だった。屋上に立っているのは、強行犯特別捜査班係長安積ミツキ警部補だった。ミツキと言っても男性ではなく女性刑事である。心は穏やかであるが、班員に危機が迫ると聖母から鬼に変わるほど恐ろしい人物だ。本庁の刑事部や他の所轄署では、敵に回すと面倒だが、味方につけると勝ちも同前と言われている。

「流石にそろそろ冷えて来たわね。中に入ろうかな。」

 そう言って階段を降りようとしたとき、星が目に入った。

「あっオリオン座。懐かしいな、こんな都会で星が見えるなんて珍しいわ。梶野先生元気してるかな。先生が教えてくれた言葉、空はどこで見ても同じで、いつも私たちは繋がってるって。」

 安積は懐かしさのあまりクスクスと笑っていた。

「ハンチョウ、いつまでそこにいるんですか。風邪引きますよ。それと早く戻ってきて報告書書いてください。」

 絶景の屋上に繋がる通用階段を登って来たのは、強行犯特別捜査班のナンバーツーの結城ケイト巡査部長だった。結城もケイトという名前だが女性刑事だ。彼女はとても真面目で固いと言われている。

「ねえケイト、あれオルフェウス座じゃない。」

「何言っているんですか。そんなこといいですから戻りますよ。」

「あれ、見えない。気のせいだったかな。」

 そう疑問を抱いたまま、強行犯係に戻って行った。


 強行犯係に戻って来るとまだ他の係員は残ったいた。安積班は他に竹内ハルト巡査部長、永尾ナツホ巡査部長、楢野ヒロキ巡査長、中野イツキ巡査がいる。

 竹内ハルト巡査部長も名前はハルトだが、女性刑事である。体型はぽっちゃりしていて、刑事と思われない事があるが、それは捜査で有効と安積に買われている。また頭の回転は早い、知識豊富で時にそれが事件解決に繋がる事がある。

 永尾ナツホ巡査部長は班内位置の男勝り、一緒に行動している安積も驚く程だった。元鑑識係の知識を生かし時には事件解決に導く。しかし鑑識係出身のため根拠を求める事がたびたびある。

 楢野ヒロキ巡査長もヒロキだが女性刑事である。学生時代は陸上部に所属していたため足が早く、男の犯人でも逃げきれない。高校時代には全国インターハイに出場した実績を持っている。スタイルがとても良く警視庁のポスターに起用されている。

 中野イツキ巡査も女性刑事である。まだまだ若手で失敗ばかりではやとちりをしてしまうことも多くない。

また何度か事件に巻き込まれ人質になったり監禁されている。しかしその若さゆえ笑った顔は誰をも虜にしてしまう。

「ハンチョウ、やっと戻って来ましたね。早く報告書仕上げないと課長に怒られますよ。」

 永尾はいつも安積を怒る担当だった。

「ナツホさんの言う通りですよ。あの人普段は穏やかですが、そういうタイプの人ほど怒ったら怖いんですよ。」

 楢野が言った。楢野はいつも話しの補足を担当している。

「わかった、わかったから。もう、やるわよ。」

 安積は席に着き、パソコンを開いた。そこには少しだけ文章が書かれて止まっていた。

「そうだ、ヒロさっきね屋上でオリオン座が見えたの。」

「オリオン座ですか。珍しいですね。」

 中野が反応した。

「オリオン座の神話、知っていますか。オリオン座は、ある日滞在していたキオス国でオリオンはメローペという女性を好きになってしまったんです。しかしその女性は国王も好きになった女性だったんです。その事が原因でオリオンは目を潰され捨てられてしまったんです。ゼウスやパイストス、エーオンなどの神々によって視力は回復するんですが、またそこに不幸があるんです。目が治った後は、得意の狩に集中することにしたオリオンは、次第に月と狩猟の神アルテミスと一緒に狩をするようになります。しかし、ここでもオリオンの恋は邪魔をされます。アルテミスの兄アポロンの策略によって、アルテミス自身にオリオンは矢で射抜かれる事になりました。それを惜しんだアルテミスはゼウスに頼みオリオンを天にあげ星座にしてもらったんです。」

 竹内は、オリオン座の神話の話しをした。安積はよく知っているなと感心していた。

「あと、見えないはずの星座が見えたの。」

「見えない星座ですか。」

「そう。オルフェウス座なんだけど。」

 竹内は驚いた。

「よく知っていますね。オルフェウス座は別れを意味する星座なのです。でもそれが見えるのは夏なんですけど、不思議ですね。」

「一目で良いから先生に会いたいな。」

 安積の呟きは班員みんなが微笑んで見ていた。


 作業が終わったのは終電が行ってからだったため、みんな署に泊まり込みだった。

 今度安積はコートをきて手にココアを持って屋上に上がった。

「梶野先生見てますか。今頃先生は家で休んでるかな。お子さんも大きくなったから、旦那さんと晩酌しながら静かに暮らしているのかな。私の事信用してくれてたし、私のこと心配してくれたな。先生がいたから今の私がいるんだものね。」

 安積は微笑みながら一人で流れるオリオン座を見ていた。そこへ結城が階段を上がってきた。

「ハンチョウ、また一人で星見てたんですか。にしても終電が終わったら昼間の騒がしさが半減しますね。」

「そお、私はまだまだ眩しいと思ってるの。湾岸署にいた頃はレインボーブリッジの光ぐらいで、静かだなって感じてたわよ。」

「あそこは特別ですよ。何も無いとこですが、私は好きでした。」

「私も好きよ」

 結城は頬を赤らめた。「好き」という言葉に反応してしまったのだ。

「ケイト、大丈夫。顔赤いわよ。」

「何でもありません。寒さやけです。それより今日は体調大丈夫なのですか。」

 声をかけられ急いで誤魔化した。

「うん。何か今日はいつもの感じと違うの。時々あるのよね。」

 結城は知っていたのだった。安積が体調を崩さないときは、大抵安積の身近に何か起こったときだった。過去には学生時代の友達が殺された事や、引ったくり自殺未遂に追い込まれていたこともあった。

「何か不幸が無ければいいけど。」

 結城は小さく呟いた。その声は安積に聞こえなかった。

「ケイト、何か言った。そうだ、旦那に電話入れた。」

「入れましたよ。そろそろ戻りましょう。」

 結城は安積の肩を持ち中に入った。安積の持っていたココアは冷たくなっていた。

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