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ARCADIA ver2.00  作者: Wiz Craft
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 S14 シーフ解放

 楽しいバーベキューに参加した日の翌朝、マイキー達は日課と定めた在庫チェックに店へと向う。空は蒼く晴れ渡っていた。風で舞い上がる赤土が時折澄み渡った青空に薄い褐色のフィルターを掛ける。

 駅前のホテルから荒野を渡り、店に戻ったマイキー達。東窓からは柔らかな朝陽が差し込み店内を明るく照らし上げていた。ショーアップされた商品の数々は光の中で眩い輝きを放ち、赤銅独特の光沢感を映し出す。


「何も売れてない……かな」


 東窓のカーテンの紐をアイネと共に留めながら呟くマイキー。

 変わらず売れ残った在庫を前に現実へと戻る。願わくばSOLD OUTの文字を期待していた彼らだが、そうそう世の中は甘いものでは無い。昨日の売上はクレイモアが一本のみ。


「毎日、幸運が続けば人間は堕落するさ」


 肩を落とす仲間達にマイキーは自分自身にも言い聞かせるように今までの幸運を噛み締めるのだった。


「資金は無いけど在庫はある。この状況で出来る事と言ったら認定試験のアイテム集めくらいか」


 マイキーの言葉に顔を上げる仲間達。今日のこれからの予定を考えた時に手持ちの資金が無い以上、店に対して行える行為は無い。商品が売れるまでは、日中は認定試験の納品アイテムの収拾に乗り出した方が賢い選択と思えた。

 仲間達が向ける視線にマイキーはふと違和感を覚え、皆を見つめ返す。


「何だよ、何かあったのか?」

「お前に報告があったんだ。聞いて喜べ、見て驚け」


 自慢気にPBを開くジャックは一枚のカードを取り出しマイキーへと突き付ける。

 手渡されたカードをマイキーは手に取ると、訝しげな表情で内容に目を通し始める。


「何だよこれ。狂狼の牙ってシーフの認定試験の納品アイテムじゃないか」


 マイキーの反応に満足そうに顔を見合わせた一同は、昨日の狩りの経過を彼に説明を始める。昨日の狩りの最中で突如発狂したワイルドファング。その劇的に高まった攻撃性を前に、共に闘った仲間が倒れた事を伝える。


「なるほど、ウィルスが発症した状態のワイルドファングを狩るとドロップするのか。なんか……手で持っても大丈夫かこれ」

「それ僕達も思った」とタピオが不安気に同意する。


 敢えて触れずに流したマイキーだったが、メルボルが倒れた旨を伝えた仲間達の表情に彼は溜息を吐く。


「共に闘った仲間の為にも、今後はメルボルと戦いたくない、か。お前らそんな事言ってたらキリないぞ。それはそれ。これはこれだ。白麒麟の鬣を取る為にも今日からまた積極的に狩っていくから、あまり余計な事は考えるなよ」


 窮地を共に支え合い乗り切った仲間への想い。だがマイキーの言う通り、あのメルボルは既にこの世界には存在しない。

 一々そんな想いの一つ一つに誓約を作っていたら、後々苦しむのは自分自身なのである。過大な感傷は自分自身を傷付ける。この世界に存在する以上、ある程度はゲーム的感覚として割り切る事も必要。それがマイキーの意味するところだった。

 納品アイテムを入手したマイキーは皆を連れて店を出るとまずはギルドへと向う。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 【GR2】シーフ認定試験(推奨Lv6~:難易度☆☆☆)

 Class:シーフの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  狂狼の牙:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、シーフへの転職権利を授与する。

 ⇒【納品実行】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 現れた操作画面から納品を実行すると、クエスト完了画面が表示される。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 【GR2】シーフ認定試験

 任務お疲れ様でした。納品アイテムを確認致しました。

 これよりMikey様にはClass:シーフが解放されます。

 転職クラスチェンジの際にはお近くの女神像をご利用下さい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ギルドで無事クエストを完了すると、その足で女神像がある郊外の広場へ。

 歩む足取りに合わせて自然と鼓動は高まってゆく。仲間達からの思わぬプレゼントはマイキーにとっては彼らが想定していた以上に嬉しいものだった。多くの人々が行き交う広場を横切り、噴水前の縁に座り込み他愛も無い談笑を楽しむ冒険者の傍らに歩むと、マイキーはPBを開き深呼吸をする。

 新しい自分に生まれ変わる瞬間、ふとマイキーは世界が輝いたあの瞬間を思い返していた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【選択可能なクラス】


 ▽ソルジャー

 ▽ハンター

 ▼シーフ

 ▽フリークラス


【クラスチェンジ後:ステータス】


 レベル 5

 クラス ------------ シーフ

 経験値 ------------ 17/100

 ヒットポイント ---- 50/50

 スキルポイント ---- 20/20


 物理攻撃力 -------- 16(+10)

 物理防御力 -------- 16(+9)

 魔法攻撃力 -------- 10

 魔法防御力 -------- 10

 敏捷力 ------------ 14


【クラスチェンジ後:装備】


 武器 -------- バロックナイフ


 頭 ---------- ミクノアキャップ

 体 ---------- ミクノアスーツ

 脚 ---------- ミクノアパンツ

 足 ---------- ミクノアブーツ

 アクセサリ --- 銅の指輪<剣の刻印>

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 女神像の前で光に包まれたマイキーは皆が見守る中、新たな知覚へと目覚める。ミクノアキャットの皮装備に身を包みながら、予め用意していた腰元のバロックナイフを手に取りその重量感を確かめるマイキー。


「なんか身体が軽くなった気がする。敏捷力が14か。そうか、シーフの敏捷力ボーナスってSランクだもんな」


 ナイフを手に取り、クルクルと手先で器用に操り腰元に納めるマイキー。

 さらに片手に構えたPB上で気になるのは、シーフのCR1からのギフトとして設定されているパーティクルマテリアライズという特殊技能だった。

 ギフトの説明項目には敵の特定部位に一定時間触れ続ける事でマテリアライズする事が可能と記されていた。


「特定部位に触れ続ける事で、マテリアライズが可能か。でも、これって微妙だな」


 今までの経験上、ミクノアキャットの髭やフォクシーの尾のように切り落せばシーフというクラスに関係なくマテリアライズする事が出来るアイテムが存在する。ならば、このパーティクルマテリアライズとはその範疇に収まらないアイテムを示しているのだろうか。

 具体的に使用する場面でのそのイメージが視覚化されず、今一その定義の理解に苦しむマイキーだった。


「まぁ、実際に使ってみればその差が分かるか」


 何にせよ憧れていたクラスに就く事が出来た今、後はゆっくりとその能力を追究して行くのみ。

 この世界でのシーフの当て字は『盗賊』では無く『義賊』と書く。ただ盗むだけの無粋な輩に成り下がるつもりは毛頭無い。マイキーがこの世界のシーフというクラスに惹かれたのも、ただの盗人に当てられたその『義』という文字に興味を覚えたからだった。

 この言葉の解釈はプレーヤーによっては様々だろう。ここに信条を定める者も居れば、全く気にも留めず無益な窃盗を繰り返す者も居るかもしれない。

 願わくば、自分なりの『義』をこの世界で貫きたい。具体的なその形は見えないが、今は眼に見えないその信条を守り抜こうとマイキーは固く誓うのだった。

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