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ARCADIA ver2.00  作者: Wiz Craft
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 S8 深夜の買出し

 セント・クロフォードに揺られて、マイキーが一人スティアルーフに帰還したのは午後九時半の事だった。鉄骨に囲まれた暗いホームを降り立つ冒険者に紛れて改札を抜け、一人街へと出る。

 照明の光に照らされて浮かび上がる東門前の彫像は今日も雄雄しく優雅だった。

 人気の無いデトリックの街に比べてこのスティアルーフは夜だというのに冒険者に溢れている。東門橋にはこの時間帯でも釣人が見られ、吊り下げた竿に獲物が掛かるまでのその時を静かに楽しんでいるようだった。

 東門橋を抜け、中央広場の雑踏の中を抜けたマイキーはそのまま繁華街へ。

 目当ての店は幾つかあるが、やはりその中心はバロック装備を販売しているForcted(フォルクテッド Barokバロックだろう。一つ一つの武器・防具は高値に付くが、その需要は高い。また冒険者の中にはこの街でバロック装備が販売されている事を知らない冒険者も多く存在する。

 そういう意味では多少の暴値を振っても、購入者に気付かれない可能性もある。だが、商売とは信用が第一である。たとえ、高値で売捌いても次からリピーターが来なければ全く意味が無い。安過ぎず、高過ぎず。ユーザーが納得出来る価格をバランス調整する事が商売の秘訣だ。そして、それが何よりも難しい。

 オートウォークを渡り、目的の店へと到着したマイキーは足早に店へと踏み込むと、需要の高そうな片手剣の他に安価な短剣と拳具を一品ずつ、又防具としてバロック装備一式を購入する。

 店を出たマイキーは重武器店Dinastonダイナストンへとそのまま梯子し、あのフリードが使用していた両手剣クレイモアを一振り購入する。ここで彼の手持ちの資金は底を突いた。店への展示を頭に思い浮かべながら、繁華街をオートウォークから眺めるマイキー。

 購入した売品は武器が四点に防具が五点。まだ店と呼ぶには余りにも品揃えが不充実だが、始めはこの程度の方がやり甲斐がある。ここから自分達の店をどこまで発展させられるのか、考えただけでも胸の鼓動が高まった。

 今回購入したアイテムは試験的な売品の為、売れ残った時の対策も予めマイキーは想定していた。バロックの片手剣、また防具一式はタピオがLv5に上がった時の予備防具に、また短剣はシーフへ転職した際の使用武器となる。拳具はモンク希望のジャック用に。

 この前提がある以上、購入したアイテムは無駄にはならないだろう。

 繁華街を抜けたマイキーは一人B&Bの中へと消える。何故だか今夜は酷く疲れていた。夕暮れまでショップのレイアウトに励んでいた所為もあるかもしれない。

 自室に消えたマイキーはベッドに倒れ込む前に、窓際のテーブルでCity Networkへとアクセスし調べ物を始める。その主な目的は今回のクエスト、紅野の奇兵隊に関する何か新しい情報が無いかを探る為だった。

 バスティア地方からの出戻り組、つまり何らかの理由でスティアルーフへの帰還を余儀無くされた者達の情報は実に生々しい。


――二度とあのエリアへは戻りたくない――


 生身で味わった地獄という言葉は鮮烈な印象をマイキーに植え付けた。

 一体何が彼らをそこまで恐怖にせしめたのか、理解は困難だが想像には容易い。恐らくは連中の存在が彼らの心象に大きく関与している。

 出戻った多くの冒険者は彼らの襲撃によって命を落とした者達なのだろう。

 そんな彼らが綴った多くの記事を読みながらマイキーは重々心に注意を呼び掛けるのだった。

 大方のクエスト情報を検索した後は、適当に画面を流し始める。

 何か真新しい情報は他にあるだろうか。そんな思いでふとマイキーはこの世界に来てからずっと気になっていたあるシステムに関する転載記事に目を留めた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ○生産システム


 本システムはこの世界に存在する様々な素材品を合成化合する事で、新たなアイテムを生み出す画期的なシステムです。生産項目は大きく分けて八種のカテゴリーに大別され、それぞれ鍛冶・木工・縫製・製革・魔工・錬金術・骨象・料理となり、その生産内容が大きく異なります。生産で生み出せるアイテムについては、素材レシピが予め存在しており、存在しないレシピでの組み合わせでは生産失敗となり素材品を失う結果と為りますので予めご注意下さい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「生産か。そういや全然手を付けてないな」


 転載記事に載せられた文字の羅列、各種生産表を見つめながらマイキーは閉じ掛けた瞳を支えようと必至に睡魔と闘う。一度襲われた睡魔を振り切る事は容易では無い。疲れた眼が閉じるのを気力で必至に持ち応えながら、目の前の情報を理解しようと努める。

 だが、それも限界だった。生産については追々ゆっくりと時間を掛けて追究して行けばいい。ベッドへと倒れたマイキーはこの日、すぐに眠り込んでしまった。

 デトリックへと置いてきた彼の仲間達は今頃何をしているのか。店番をすると呟いてはいたが、まさか本当に店に泊まる気ではないだろう。


「明日はなるべく早く戻るか」


 いつしか、彼は深い眠りへと誘われていた。

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