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ARCADIA ver2.00  作者: Wiz Craft
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〆第四章『紅野の奇兵隊』

挿絵(By みてみん)


 赤焼けの荒野に聳えよ

  我が身を振り返れば後戻りは出来なくなる

   ここが始まりであるならばもはや進むことしかできまい

 (レイドック=カモンベルズ『赤焼けに聳えよ』より)



 ■創世暦ニ年

   四天の月 炎刻 3■


 赤焼けの夕空の彼方では、漂う雲間に陽が落ちて行く。スティアルーフの東門橋では今日も釣人の姿が絶えず、河口へと向って竿を振り下ろす。緩やかなセントクリス河の流れと釣人を横目に、橋を渡った街門前では美しい白龍を象った巨大な彫像が今日も多くの冒険者達を迎え、そして見送っていた。

 彫像の下では既に準備を済ませたマイキーが遅れてやってくる仲間達を待ち佇んでいた。茶色味を帯びた毛皮に真白な縞模様の入ったミクノア装備に身を包んだ彼の背には夕陽の光を浴びて輝く赤銅の弓が背負われている。バロックボウ。それはあのフリードが装備していた赤銅防具と同じ材質で象られたForcted Barokの製品である。

 次なる目的へと向う為に、これは必要最低限の投資。目的の遂行の為には少しでも装備を整えて臨む事が必要だった。それは、ラクトン採掘場で女王蟻を討伐後に発生した新たな期間限定クエスト。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ▼期間限定クエスト

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ○紅野の奇兵隊(推奨Lv7~18:難易度★☆)


 スティアルーフの街からセント・クロフォード号にて北北東へ73km、赤々と広がるバスティア荒原にて。調査隊の数組がこの地で突如、得体の知れない何者かに襲撃を受けて命を落とした。彼らの証言に依ると連中は人の形に酷似した未知の生命体であるとの事。交されていた言語は、開拓言語の響きとは異なる異種の言語であると云う。突然の襲撃を受けた事から意志の疎通が取れるとは思えない。惑星の開拓において彼らの存在は脅威となるだろう。君達の任務はこの荒原に存在する彼らの野営地の在処を突き止め、指導者を打ち倒す事にある。頭を失った蜘蛛は息絶える。それは組織とて同じ事だ。任務成功の暁には、スティノフ鉱山の発掘権利を与えるものとする。


 報酬:スティノフ鉱山発掘権利


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 クエスト情報を見返しながら、彫像に凭れ一人呟く。


「……未知の生命体か」


 攻略掲示板上では勿論既に対峙する相手の正体は記されていた。だが、その正体は実際にこの目にするまでは想像する事は出来ても理解する事は出来ない。

 人の形をしながら人に在らざる者、人間とは異なり圧倒的な力を有すその生物の正体は冒険者に戦慄を覚えさせる。

 女王蟻の討伐を終えた猛者達は既に、この難関クエストに直面している。このクエストが難関と呼ばれる由縁は現地に向えば分かるとの事。極めて高い死亡率を誇るこのクエストでは、準備は幾ら入念に行っても足りない事は無い。

 物思いに耽るマイキーの視界には橋の彼方から現れた見慣れた人影。


「遅くなって悪いな。もうチケットは買ったのか」


 見慣れない装備に身を固めたジャック。何れも赤銅に輝くその装備群、腕には小型の丸盾、腰元には長剣が鈍く輝いていた。


「ああ。旅人にしては随分な重装備だな」


 彼の装備品を上から下まで確認したマイキーは苦笑する。

 生温かい風にジャックは首元を扇ぎながら到来した季節に皮肉を漏らす。


「この暑さと合わせると結構なハンデだぜ。暑苦しいったらありゃしねぇよ」


 Forcted Barokで購入した赤銅の装備はソルジャーにとっては重要な生命線になる。逆に言えば、この装備を纏っていない限り、向う戦場では戦力には為らないとも云える。

 ふと彫像付近で光輝く閃光、周囲の冒険者がその輝きから身を遠ざける中、光の中から現れたのは青銅ブロンズ装備の少年だった。空間転移を終えた茶髪の少年は辺りをキョロキョロと見渡すと、マイキー達の姿を捉えて笑顔を浮かべる。


「位相間違えちゃって。三十分前から汽車見て待ってたんだ」


 タピオは二人の元に並び立つと、周囲を見渡して呟く。


「やっぱり、バロック装備って今は珍しいから。皆マイキーさん達の事見てるね」

「これから向う先じゃ、これが標準装備になる。逆に、青銅装備だとこの先苦しいぜ」


 ジャックの言葉に視線を落とし微笑むタピオ。


「僕はまだLv4だから。バロック装備は身に付けられないし。買うお金も無いから」と俯くタピオに言葉を重ねたのはマイキーだった。

「安心しろよ。今回はクエストの達成が目的じゃない。まずは現地の下見が目的だからな。後はついでにGR2の認定試験で必要になるって云う、追加クラスの納品アイテムを入手する事。この前のボマード狩りで得た毛皮を納品して、僕とジャック、それからアイネはGR2になったからな。新たにシーフ、ダンサー、モンク、ヘヴィウォーリアの四職が解禁されてる。これで漸く僕らには希望職への道が示された訳だ」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ▼システムクエスト

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 【GR2】シーフ認定試験(推奨Lv6~:難易度☆☆☆)

 Class:シーフの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  狂狼の牙:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、シーフへの転職権利を授与する。


 【GR2】ダンサー認定試験(推奨Lv6~:難易度☆☆☆)

 Class:ダンサーの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  コカトリスの碧眼:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、ダンサーへの転職権利を授与する。


 【GR2】モンク認定試験(推奨Lv6~:難易度☆☆☆)

 Class:モンクの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  白麒麟の鬣:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、モンクへの転職権利を授与する。


 【GR2】ヘヴィウォーリア認定試験(推奨Lv6~:難易度☆☆☆)

 Class:ヘヴィウォーリアの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  ボマードの巨蹄:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、ヘヴィウォーリアへの転職権利を授与する。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 香煙草を吹かしていたジャックがマイキーにその黒瞳を向ける。


「お前はシーフで、俺はモンクか。また納品アイテムが必要になるんだな」

「ああ、今回は僕がWildワイルド Fungファングが落とす『狂狼の牙』とジャックはMelbolメルボルが落とす『白麒麟の鬣』。どちらも入手難度はGR1より若干高めみたいだ」


 マイキー達がそんな会話を交していると、彫像前にはアイネとキティが頭を下げてやって来た。


「遅れてごめんなさい」

「今に始まった事じゃない。もう諦めてる」


 マイキーの苦言に、納得行かない表情を浮かべるアイネ。

 遅れてやってきた他の仲間達が揃うと、マイキー達はセント・クロフォードの乗車口へと移動を始める。

 それは旅の始まり、新たな境地への足掛けだった。

 ■第四章『紅野の奇兵隊』連載開始のお知らせ


 続け様ではありますが、本日より第四章の連載を開始したいと思います。が、今回は初めに不定期連載の可能性を零させて下さい。現状、まだ章末が見えないのですが、大体一日から二日置きの連載を心掛けたいと思います。今回も例によって前半はのんびり朗らかと、後半から例によって急展直下で切迫するかもしれません。

 本章から色々物語が展開するので、色々公開データは必要になるのですが、何分暑さで思考力が垂れてます。本章途中では旧作でのあの人物達がちょろっと登場するかもしれません。誰を引っ張ってくるかは控えますが、そこかよ!と、言われる可能性を期待しながら(笑)

 それでは本章も宜しくお願いします。中国産の千円の扇風機に「頑張り君」と名付けてフル稼働してます。この夏はこれで乗り切ってやる!

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