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ARCADIA ver2.00  作者: Wiz Craft
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 S16 死線の果てに

 大量の光芒が立ち昇る中、石灰洞の中で膝を付いて倒れ込む冒険者達。舞い上がる光の煌きは彼らから考える力を奪う。立ち昇る光が何を意味するのか。その意味を瞬時に理解したものはその場に数少なかった。


「倒したの……私達?」とアイネの言葉に一同の身体が張り詰めていた緊張感から解放される。じわじわと押し寄せる熱い感情にその表情が自然と綻び始める。 

「女王蟻を……倒したんだ」


 喜びに打ち震えるアーガスの肩にジャックが手を掛ける。


「お互い生き残れて良かったな」


 差し出されたジャックの手に、一瞬戸惑ったアーガスは満面に笑みを浮かべて固い握手を交わす。

 エリーゼは弓を背負いなおすと、振り乱した朱髪を手櫛で整えながら座り込むダリアに向って歩み寄る。衝撃で痛んだ足を心配するように、その手を掛けるエリーゼ。


「足、見せなさい。勝ったのね……私達」

「ええ。ただ……レゾールトが」


 レゾールト、そう彼女達が呟くその人物はここへ到着した際に女王蟻によって噛み砕かれた赤髪のソルジャーであった。

 多くの犠牲を払って得た勝利。紛れも無くこの闘いはかつてない死線となった。

 打ち倒された女王蟻の身体は討伐後も消滅せずに残されていた。ここで一同はこのクエストの内容を思い返す。


「証拠品を持って帰らないとな」


 呟くマイキーは女王蟻の亡骸へと身を屈め、証拠品として持ち帰る部位を撫で探し始める。

 固い表皮に覆われた遺体の中でも、背中に当る部分には進化の過程で劣化した鱗翅が隠されていた。その鱗翅を一枚抜き取りマテリアライズ化する彼の姿に皆が続く。


「もし、こいつが飛び回ったらと思うとゾッするな」と真顔のジャック。

「その時は翅もぎ取ってやればいいさ」


 そんなマイキーの言葉に「全く大した連中だ」と感嘆の声を漏らすフリード。


「報告しましょう。仲間達が待ってるわ」


 エリーゼの言葉に頷く一同。代表してマイキーが無線にその報告を流し始める。


――L地点にて、根源Alzelodesの討伐に成功。繰り返す、L地点にて――


 報告を終えた頃、遅れて姿を現したのはジ・オングとメサイアの二人だった。

 息を切らせた様子の二人は地表で崩れている女王蟻の姿を瞳に映すと動揺を隠さなかった。


「遅ぇよじじい」と包み隠さないジャックの言葉に周囲から笑いが漏れる。

「ジャック、言葉慎みなさい。失礼でしょ」


 嗜めるアイネにジ・オングはそれを真摯に受け止めて謝罪をして見せた。


「すまぬ。到着が遅れてしもうた」

「申し訳ありません」


 頭を下げる二人の姿に、ふと彼らが向ったポイントがA地点である事を思い出す討伐者達。

 A地点と云えば、ここから最も離れた上層ポイントである。彼らがここへ到着している事で逆に一つの疑問が皆の脳裏に浮かび上がる。


「てか他の冒険者何やってんだ」


 的確なジャックの突っ込みだが他の仲間達は敢えて何も言わなかった。ここから最も遠距離にあるA地点へ向った二人が今ここに存在するのに、他の冒険者達が何をやっているかなど、もはや考えたくもない。結果としてアルゼロデスの討伐に成功した。その事実さえ在ればいい。


「それにしても見事。流石は歴戦のつわもの。余の目はまだ霞んでは居らぬは」


 続々と石灰洞へと到着する討伐隊の姿。彼らの中にはマイキー達と視線を合わせると背ける者達も少なく無かった。一度女王蟻と対峙する恐怖を知る者ならば、自然相対する事は避けたいと願う心理が働いてもおかしくない。待っていれば誰か他のプレーヤーが解決するだろう。そんな想いで討伐の報告を受けた者も少なくない筈だった。

 色々言いたい事はあったが一同はそこは抑えて、彼らが亡骸から証拠品を回収するのを見守っていた。

 マイキー達は洞窟の坑道で仲間の手当てを終え、こちらを見つめているキティを呼び寄せると洞窟の片隅でへたりこんでいたタピオの元へと向う。


「終わったぜ。お前達も早く翅回収して来いよ。もうこの洞窟には巨大蟻も出ない。安心しな」


 ジャックの言葉に呆然としたタピオは、笑顔のキティに手を引かれアルゼロデスの遺体へと向う。

 二人が遺体から証拠品の回収をしている合間に、マイキー達の元へはフリードが別れの挨拶を告げにやって来た。


「短い付き合いだったが、充実したものだった。感謝する」


 手を差し出すフリードにマイキーは「こちらこそ」と握手を交わす。

 マイキーがフレンド登録を提案すると、フリードは快く了承した。


「入用が有れば呼んでくれ。次もまた今回以上の死線となるとの噂だからな。お互い生きていれば、戦場で会おう」


 立ち去るフリードの言葉に戦慄を覚えるマイキー達。

 去り際に彼が言い残した言葉、彼は何か知っているのだろうか。


「今回以上の死線か……冗談きついぜ」


 フリードの背中を見送った二人は再び石灰洞へと視線を戻す。アイネはエリーゼ達と何やら話し込んでいる様子だった。空間中央の巨大な石筍の元ではジ・オングとメサイアが後続の討伐隊に証拠品の回収を案内していた。

 死地が平穏な場へと解放された今、巨大な石筍を見上げるジャックにマイキーはそっと耳打ちする。


――そういや気付いたか。あの爺さんの装備、基本四種のクラスじゃない、あれきっとGR2で解放されるクラスの装備だ。もしかしたら、お前が希望してるモンクの装備じゃないか?――


 マイキーの言葉にまじまじと改めて老体の装備を見つめるジャック。

 人は見掛けには寄らない。爺呼ばわりした老人との別れ際、そこには自然と敬礼するジャックの姿が在った。


――戦果への貢献、感謝する――


 彼らは主催者として、ここに残り他の討伐隊の到着を待つと言う。激戦を制した仲間達は、証拠品を回収すると再開を誓い合い現地で別れを告げるのだった。

 ラクトン地下採掘場での目的を果たした今、一同の夢もまた昇華する。そう向う先はスティアルーフ。そこで、一同の世界はまた一段階の広がりを見せる。

 蒸気機関セント・クロフォード号。その乗車許可が許された今、列車の旅に大いなる夢を馳せて冒険者達は今新たな境目へと差し掛かる。


 ■第三章を終えて


 いつもARCADIAをご覧頂き本当にありがとうございます。

 無事、かどうかは分かりませんが第三章も何とか終え、残すはエピソードが一話となりました。気持ちは既に第四章へと進んでいます。今までやりたいようにやってきた自負はあるのですが、次章に入って全力でやりたいようにやり始めた感があります。

 新要素としてプレイヤーズエリアと呼ばれる土地売買システムを導入したのですが、脳内シミュレーションが悲鳴を上げ始めました。ならやるな、その一言に尽きるのですが。どうもやるみたいです(笑)

 本作は完全に冒険が一つの主軸テーマとなってるので、今後は様々な生物と遭遇し幻想的な未開拓領域に迫っていきたいですね。そろそろ星の開拓というゲームのメインテーマに触れないといけないので、描く事が増えそうです。

 旧作からそうなんですが、基本的にARCADIAという世界では深刻な描写、何度でも生き返れるというシステム上、自然とシリアスな演出は断念してきたんです。あまり得意でもないですしね。ですが、書き様によっては今回のようにリアルに生命の危機を演出する方法は無くもない。これは私にとって一つの表現が増えた事になるので非常に有り難いです。まだまだ展開・描写には難がありますが、プレイヤーの危機管理能力をリアルに描く上で、一つの希望が見えてきました。

 今後は自分なりに昇華して、ほんわかした旧来の雰囲気を取り戻しながら、新たに攻撃的な演出も取り入れて行けたらと願っております。

 拙作ではありますが、今後もARCADIAを宜しくお願い致します。

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