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ARCADIA ver2.00  作者: Wiz Craft
35/169

 S7 White Palace

 屋台市での一服は心地良いものだった。

 人込みから姿を現したマイキーは夜風に当たりながら、街灯へと寄り掛かる。頭上の炎に照らされて浮かび上がるその頬には赤みが差していた。

 どうせ酒を飲むならジャックを誘えば良かったと、だが一人酒も悪くはない。人との対話の中で得られる喜びと、一人で噛み締める喜びとではその根本的な質が違う。

 広がる世界の中で、自己の喜びを確固として受け止めるという意味では充実した時間を過ごす事が出来たのだ。


「道草食ったな」


 時刻はPM10:16。当初の目的とはすれ違ったが、勿論忘れた訳では無い。

 目指すギルドは闇夜の中に凛然とその白壁を晒していた。美しい白崗はっこうの巨柱が立ち並ぶその姿はまさにギリシア神話の中に出てくる純白の大宮殿と呼ぶに相応しい。

 直径が一.五メートル、高さは二十メートルに及ぶであろう、その白柱は正面の厳かな出入り口へと向かって伸びている。その正面には照明を受けて輝く水面を浮かべた大きな噴水が。噴水の中央には水瓶を背負った女神像が輝く透水を撒いていた。

 噴水の縁に近付くと、そこで水面下で一エルク貨幣の銅貨が散々と輝きを返していた。


「願いの泉か」


 ふとマイキーはPBを開くと、一エルク貨幣をリアライズし指で弾く。

 曲線を描いた一筋の軌跡は水面に触れると同時に小さな水飛沫と波紋を上げる。

 願った内容は他愛も無い事だった。冒険の旅先を祈って。


――旅先に光を――


 厳かなギルドの入口へ足を掛けたマイキーは高い天井を見上げて足を止める。

 荘厳華麗な天井の内壁には美しい天上人達の姿が描かれていた。それはこの世界での神々の姿を指し示すのか。

 炎燃え盛る大剣を振り翳すは赤鎧の戦士。迎え撃つは氷の錫杖を手にした美しき女魔導師。放たれる紅の剣閃に対し、氷女は冷たい微笑と共に錫杖を振り上げ蒼白の衝撃を以って対する。紅と蒼の衝撃が混ざる時、そこから無が生まれる。衝撃の中心では巨大な黒い球体が星を飲み込むその様子が生々しく描かれていた。

 その神々しい描写に我を失い見惚れていたマイキーはふと意識に返る。 

 巨大な支柱を潜り抜けたギルド内には、空間の大きな大理石のロビーが広がっていた。白を基調とした荘厳な空間の吹き抜けた天井では透光板フィラメルを通して星々が輝く。その輝きの下ではソファに座った冒険者達が談笑を交わしていた。

 冒険者達が寛ぐそのロビーの両サイドの空間には、数百単位での端末接続器が設置されたカウンタールームが存在する。エルムのギルドとは比較に為らない規模の設備。それぞれの台は真白な仕切り板で区切られており、ここで冒険者はこの街のクエストを受注する事になる。

 マイキーはカウンタールームの一席に座ると台座に置いたPBを端末コードと接続し、この街のクエスト情報を確認し始める。


◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 ▼探索クエスト

◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 【GR1】紅き流星(推奨Lv5~:難易度☆☆) New!!


 スティアルーフの街から北北東48km地点に星見の丘と呼ばれる断崖が存在する。星々の輝きは我々に万物の理を示すものである。人類の歴史を紐解いて考えれば、天体観測の重要性は認識に深いものであろう。この任務の目的は星見の丘で<紅き流星>を確認する事にある。流星の出現周期については謎に包まれている。紅き不死鳥のように美しい流線形の尾を引くと云われる星の神秘を解き明かすために、君達にはこの解析モニターにその姿をしっかりと収めてきて貰いたい。なお、解析モニターは対象の生体を観測後、データ転送終了と同時に自動消滅する。


 報酬:PB機能拡張『ビデオスコープ』


◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 ▼納品クエスト

◆―――――――――――――――――――――――――――◆


 【GR1】ストライプワームの胆石×3---◆GP1,12ELK

 【GR1】ウーピィの綿毛×2---◆GP1,15ELK

 【GR1】フォクシーの毛皮×2---◆GP2,21ELK

 【GR1】ミクノアキャットの毛皮×2---◆GP3,30ELK

 【GR1】ボマードの毛皮×1---◆GP5,36ELK

 

◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 ▼戦闘クエスト

◆―――――――――――――――――――――――――――◆

【GR1】Woopy

 ○ウーピィ討伐×10到達時点---◆GP1,ウーピイの綿靴

 ○ウーピィ討伐×25到達時点---◆GP2,ウーピィの綿帽子

 ○ウーピィ討伐×50到達時点---◆GP3,ウーピィの綿ズボン

 ○ウーピィ討伐×100到達時点---◆GP5,ウーピィの綿服


【GR1】Foxi

 ○フォクシー討伐×10到達時点---◆GP2,フォクシーブーツ

 ○フォクシー討伐×25到達時点---◆GP4,フォクシーキャップ

 ○フォクシー討伐×50到達時点---◆GP6,フォクシートラウザ

 ○フォクシー討伐×100到達時点---◆GP10,フォクシーベスト


【GR1】Micnoa Cat

 ○ミクノアキャット討伐×10到達時点---◆GP3,ミクノアブーツ

 ○ミクノアキャット討伐×25到達時点---◆GP6,ミクノアキャップ

 ○ミクノアキャット討伐×50到達時点---◆GP9,ミクノアパンツ

 ○ミクノアキャット討伐×100到達時点---◆GP15,ミクノアスーツ


◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 ▼期間限定クエスト

◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 ○地下採掘場の魔物(推奨Lv5~:難易度☆☆☆☆)


 スティアルーフの街から北北東へ36km、ラクトン採掘場にて。最近掘り起こされた地下の採掘場に魔物が蔓延り、採掘が思うままにならない。問題の中心となっているのは体長一メートルにも及ぶ巨大な蟻のような生物だが、倒しても倒しても次から次からへと目処が立たない。この任務の目的はこれらのモンスター発生の原因を突き止め、その根源を絶つ事にある。任務成功の暁には、スティアルーフ発、蒸気機関St.Cloford<セント・クロフォード>への乗車許可証を与えるものとする。


 報酬:St.Cloford乗車許可証


◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 ▼システムクエスト

◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 【GR1】ソルジャー認定試験(推奨Lv4~:難易度☆☆)

 Class:ソルジャーの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  縞猫の髭:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、ソルジャーへの転職権利を授与する。


 【GR1】ハンター認定試験(推奨Lv4~:難易度☆☆)

 Class:ハンターの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  銀狐の尾:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、ハンターへの転職権利を授与する。


 【GR1】マジシャン認定試験(推奨Lv4~:難易度☆☆)

 Class:マジシャンの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  縞蚯蚓の脱皮:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、マジシャンへの転職権利を授与する。


 【GR1】クレリック認定試験(推奨Lv4~:難易度☆☆)

 Class:クレリックの解放には下記の納品アイテムが必要となる。

 ▽納品アイテム

  綿兔の涙:1枚

 以上のアイテムの納品確認後、クレリックへの転職権利を授与する。


◆―――――――――――――――――――――――――――◆


 クエストの情報を見つめながらふとマイキーはある事実に気付く。


「何かクエスト情報が少ないな」


 ティムネイル諸島に存在する小さな離島であったイルカ島やフロイスモール島に対して、このレクシアは一つの陸続き、つまり大陸である。それ故にこのスティアルーフに集まる情報も膨大な量だと予想していたのだが、こうして見るとその情報量は非常に少ない。


「もしかしてGRギルドランク関係してるのか。よくよく見てみるとGR1の情報しか表示されてないもんな。もしGRによって請け負えるクエストが制限されているなら、これだけ見るとGR1の間はティムネイル諸島で立ち回った方が上げ易そうだ。失敗したな」


 マイキーの憶測は事実から離れたものでは無い。

 だが、そんな事実の真偽とは関係無く今マイキーの視線はある情報に釘付けになっていた。


「システムクエスト。クラス認定試験、遂に来たか。随分、無駄省いたクエスト内容だな」


 認定試験と記されたそのクラスは四種。

 それぞれ『ソルジャー』『ハンター』『マジシャン』『クレリック』。

 

「随分少ないな。前情報はもっと一杯あったのに」


 だが、ここでマイキーはシステムクエストの情報に記されたある記述に気が付く。

 それは、またしても【GR1】という表記だった。


「そうか。これもしかしてGRによって取得出来るクラスが分けられてるのか」


 怪訝な表情で溜息を吐くマイキー。マイキーの憶測が正しいならばこれによって希望のクラスに辿り着くまでGRを稼ぐ時間が必要になる訳だ。

 ティムネイル諸島での経験から言って、このGR稼ぎはかなりの時間を要する事は確かだった。向こうでは黒斑鳥の卵と戦闘クエストでマイキー達はそれぞれ60GP強を稼いでいた。GRは100GPを溜めた時点で次の段階へランクアップする。

 GR2に到達するには少なくともあと40GP弱をこの大陸で稼ぐ必要がある。これはかなりの作業だ。

 大体、希望職であるシーフがGR2で設定されているとも限らない。その存在は確かなものの、クラス取得を切望していたマイキーはやや落胆の色を隠せなかった。


「まぁ、仕方ないか。当面の目標は見えたし。まずは基本四種のクラスの取得に専念するか。同時に期間限定クエストも進めて行きたいところだけど、どのくらいのLvが必要なんだろうなこれ」


 PBを閉じたマイキーは席から立ち上がりその場を後にする。

 当面の目標が決まれば彼にとって迷いなど無用。

 白の宮殿から今、巨大な白柱を潜り抜けて現れる一人の青年。今若き影は夜闇に映える中央広場の一角へと向かって静かに消えて行った。

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