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ARCADIA ver2.00  作者: Wiz Craft
31/169

 S3 船上カジノ

 第三甲板に存在する船上カジノ。そこはレクシア大陸へと渡航する冒険者達の熱気で溢れていた。豪華絢爛な金飾の入口を潜るとそこには一面にカジノフロアが広がる。

 空間左手にはブラックジャックの円台、右手にはポーカー台、そして中央には巨大なルーレット。奥には大小無数のスロットマシンが立ち並んでいた。カジノゲームとして種類は豊富では無いが、それでも遊ぶには充分楽しめる。何よりカジノ経験が初体験の者が多いマイキー達にとっては見るもの全てが新鮮だった。

 キティと手を繋いだアイネは、彼女に「どこへ行こうか」と笑顔で語り掛けていた。そんな彼女達を背に歩み出す二人の男達。その歩む先を「二人はどこへ行くの?」とアイネが後ろから尋ねる。


「男は黙ってルーレットに全賭けって決まってるんだよ」とジャック。

「決まってねぇよ」と即座にマイキーが否定する。


 マイキーは「ポーカー台に行ってくる」と告げて一人カジノ内の雑踏に消えて行った。

 残された三人は顔を見合わせ、その行く先を語り合い始める。


「私達どうしよう。ルーレットってルール簡単?」とアイネの質問に香煙草を咥えたジャックが頷く。

「簡単だな。基本的には一から三十六の数字の中で止まる番号を色々な条件で予想するだけだ。例えば数字が赤と黒で色分けされてて、その色で当てたりするんだ。ほとんど二分の一の確率で当たるから初心者はこの賭け方でいいんじゃないか? 俺は一点買いで三十六倍狙うけどな」


 ジャックの発言に苦笑いするアイネの隣でキティは目の前の光景に瞳を輝かせていた。


「じゃあ、私達も一緒にルーレットしようか」


 アイネの言葉にキティは「わたしも……あそんでいいの?」と当惑した様子で答えた。その呟きに今まで彼女がこの世界でどれだけ束縛されてきたがよく分かる。

 その境遇を想像して若干の怒りを覚えながらアイネは口元を引き締めると「勿論」と笑顔を見せて彼女の手を引き始める。

 ルーレット台は空間中央に聳えていた。巨大な柱を軸としてその周囲に広がった円形のカウンターそのものが回転盤ホイールの役割を担っている。そのカウンターについた三人は、台の外側に伸びた端末コードにPBを接続する。

 画面に現れたルーレットのプレイ画面。基本的なプレイ内容の説明はそこに記されていた。


◆―――――――――――――――――――――――――――◆

 ■ルーレット―ゲームの流れ―


 I.開始ベルが鳴ったらベット(所持金を賭けること)を開始して下さい。

 II.プレイヤーは各々の予想を立てベットを行います。

 III.二回目のベル(開始から10分後)が鳴るとホイールが回転しボールが投げ入れられます。

 IV.ボールがポケットに落ちたら直ちに数字が宣言されPB上に表示されます(例:「Black 6」)

 V.オッズに従って配当金が配られます。


 ■賭け金について


 賭け金は10ELK単位でベットが可能です。

 最低ベット額10ELK〜最高ベット額1000ELKまで


 ■ベットの種類


 ▽インサイドベット

  1目賭け - 特定の数字1つにベット<配当36倍>

  2目賭け - 隣り合った数字2つにベット<配当18倍>

  3目賭け - 横一列の数字3つにベット<配当12倍>

  4目賭け - 十字の4方向にある数字4つにベット<配当9倍>

  6目賭け - 横2列の数字6つにベット<配当6倍>


 ▽アウトサイドベット

  縦一列 - 縦1列の数字12つにベット<配当3倍>

  大中小 - 1〜12、13〜24、25〜36の中から一つにベット<配当3倍>

  前半・後半 - 1〜18、19〜36のどちらかにベット<配当2倍>

  奇数・偶数 - 奇数か偶数のどちらかにベット(0は除く)<配当2倍>

  赤・黒 - 赤色の数字か黒色の数字のどちらかにベット<配当2倍>

◆―――――――――――――――――――――――――――◆


 ルールの説明を見つめながら呟くジャック。


「ホイールが回ってからのベットの変更は出来ないのか。これじゃ完全に勘だけが頼りだな。ベットの種類が多いのが救いか」


 その内容に目を通しながらアイネは隣のキティを覗き込む。キティはただ一生懸命にその内容を理解しようと努めているようだった。その様子にアイネは微笑みながらキティのPBを覗き込み表示された図を見ながら説明する。


「この絵の中のどれかに数字が止まるから。それを予想するの。数字で赤と黒の文字があるでしょ。この二つの色の中からどっちに止まるか選ぶの」


 アイネの言葉に頷いたキティは黒字に10ELKを賭けて、手をカウンターの上にちょこんと置いた。それを見てアイネもまた黒字に20ELKを掛けてジャックの方へと視線を向ける。


「うぉぉ、悩むぜこれ。よし決めた」

「何に賭けたのジャック?」


 ジャックのPBを覗き込むアイネはそこで顔を引き攣らせる。

 赤の三番に50ELK。それがジャックの出した選択だった。


「ねぇ、確率低くないその賭け方? お金無くなったら後でマイキーに怒られるよ」

「大丈夫だって。当たれば36倍だぜ。後でBARでお前らに高いワイン振舞ってやるから。キティにはケーキな」


 ジャックの言葉に笑顔を見せるキティ。アイネは「どうなっても知らないよ」と顔を背ける。

 ベルの合図と共にルーレット台が回り始めるとそれぞれの期待を胸に一同は瞳を輝かせる。ポケットに球が落ちるとPBに結果が表示される。結果は「Black-11」だった。


「やった、キティちゃん。当たったよ。ルーレットって楽しいね」


 アイネはキティの手を取って喜ぶと、その背後ではジャックが「何で外れたんだ。しかも11って俺の数字じゃねぇか」と悔しそうに喚いていた。


「だから言ったのに、ジャックも色で賭けたら?」


 その言葉にジャックは神妙な顔で悩み始めるとふと呟く。


「そうだな、色賭けで100ELKに切り替えるか」

「止めて」とアイネの真顔の突っ込み。


 キティはそんな二人の様子を可笑しそうに微笑んでいた。

 三人はそれから暫くルーレットに没頭すると、ポーカー台のマイキーと合流する。

 マイキーはポーカー台でキーボードを素早く弾きながら、真剣な眼差しを画面へと向けていた。三人が背後からマイキーの手を覗き込むとそれはフルハウスの手で、カウンター越しのホログラフィーで投影された仮想ディーラーを打ち負かす瞬間だった。


「すげ、KとQのフルハウスか」


 ジャックの言葉にPBを閉じたマイキーは振り返ると、三人の姿を確認する。


「ああ、三人とも終わったのか。成果は?」

「ルーレットで私とキティちゃんは勝ち越したよ。私が30ELKでキティちゃんが50ELK。ジャックは200ELKの損出。あれだけ止めなって言ったのに聞かなかったの」


 その言葉にジャックに何とも言えない眼差しを向けるマイキー。

 その表情に抗議するようにジャックが口を開く。


「お前はどうだったんだよ。勝ったのか?」


 その言葉にマイキーは溜息を吐く。ジャックが負の損出を期待したその時。


「お前と同類項で括るなよ。150ELK勝った」

「マジで」


 その言葉に感嘆の言葉を漏らす一同。


「すごい、マイキー。じゃ今日はマイキーの奢りね」とアイネが冗談めいて微笑む。

「別に構わないけどな。お前等だって勝ったんだろ。一名除いて」


 突き刺さる言葉を胸にジャックがふらふらとその足先をルーレット台へと向ける。


「なぁ、俺もう一回やってきていいか? 今なら勝てる気するんだ」

「馬鹿言ってないでこっち来い。引き上げるぞ」


 マイキーの言葉に「こんな筈じゃ無かった」と凹むジャックをアイネが励ましながら一同はそこでカジノを後にする。

 それから四人は勝ち越した資金でジャックの慰めも兼ねてBARでささやかな祝勝会を挙げるのだった。

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