【Episode】少年と償い
■創世暦ニ年
四天の月 土刻 15■ 『タピオの手記』より
あの時、冒した僕の罪は消えない。恐怖の前に竦んだフランを一人残して、背を向けて逃げ出した。
その罪の重さは分かってる。そして取り返しの付かない亀裂を生んでしまった事も分かってる。事実として僕が仲間を見捨てた事は揺ぎ無い真実なんだ。
僕はその罪の償いをしようと必至だった。どうやったら皆に許して貰えるかって、また前みたいに皆で笑って旅をして。そんな時を取り戻せたらと心から願ってた。
だけど……願うだけじゃダメなんだ。心の中でただ願ったり祈ってても、気持ちは伝わらない。結局は自分の足で動き出さないといけないんだ。
その事に気付けただけでも僕は幸せだったのかもしれない。
地に頭を擦り付けるような形だけの謝罪はいらない。それはディオンの言葉だった。
だからこそ僕は……誠心誠意、今の気持ちをぶつけたんだ。今の僕の素直な気持ちを皆に分かって貰いたくて。溢れる涙も振り捨てて、ただ思いのままを彼らに聞いて貰った。
僕の話を聞いていた彼らは暫く黙っていたけど……ディオンとアンクは僕を許してくれたんだ。
残念だけど、フランはその場に居なかった。僕には二度と会いたくない。その言葉通り、彼女は僕に会う事を拒否したんだ。
目の前で裏切った僕に対して、彼女の気持ちは自然だと思う。
だから、僕は。いくら時間が掛かったっていい。また、昔みたいに皆で笑い合える時を取り戻す為に、彼女に謝罪を続けようと思う。
僕はもう恐れない。僕は間違っていたんだ。
僕が本当に恐れなくちゃいけないものは、皆ともう会えなくなる事だって。
たった一度の謝罪を恐れれば、それは永遠の別れになる。過ちを償う事を恐れる事は無いんだ。その向こう側に、また皆の笑顔が待ってると思えば、どんな事だって僕は耐えられる。
だから、この世界に来た事を僕は後悔してないんだ。このARCADIAという世界の中で、少しだけ……少しだけだけど僕は成長できたような。そんな気がするから。




