【Interlude】[骨象S.Lv1.00:??????]
採集生活、初日。蒼海はいつしか赤焼けの空の朱色に染まり、日も落ち始めていた。
あれから結局、ジャックとタピオが三人と合流する事は無かった。村へ戻ったマイキーは已む無く食事の為にメールで彼らを呼び寄せ、レミングスの酒場で待ち合わせを行う。
ふんわりと漂う純朴な木の香り。木々に囲まれたオープンテラスには、既に多くの冒険者の姿が見られた。だが席自体は充分に空いている。マイキー達は見晴らしの良い席に腰掛けると、自由行動の名の元に消えた仲間達がやってくるのをただ溜息交じりに待つ。
「いつ来るか分からないし、先に食事にしよう」
「そうね」
マイキーの言葉に頷いたアイネとキティはメニューを広げるとPB上で操作を始める。
蔓で垂れ下がったランプの位置が気になったのか、マイキーは座席に淡い光を落とすランプの角度を調整しながら二人に注文を促す。
「どうしたの?」と微笑みかけるアイネに不機嫌そうな表情で答えるマイキー。
「いや、なんかランプが僕の位置だと直で光が当たって鬱陶しいんだよ。この位置で二人共大丈夫か?」
そんな彼の所作にアイネとキティは微笑みながら「大丈夫だよ」と頷き、注文したメニューを台座から受け取り始める。
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〆レミングスの酒場
メニュー
▽前菜
□×1 シザーサラダ 7 ELK
□×1 海草盛り合わせ 8 ELK
□×1 スプラッシュコーンサラダ 9 ELK
□×1 トマトサラダ-フランの花弁添え- 10 ELK
▽スープ
□×1 コーンポタージュ 6 ELK
□×1 海藻のスープ 6 ELK
□×1 ミネストローネ 6 ELK
□×1 南瓜の冷製スープ 6 ELK
▽メイン
□×1 バターライス 6 ELK
□×1 シーフードパスタ 10 ELK
□×1 ムームーの香草焼き 12 ELK
□×1 シャメロットのチーズ蒸し 15 ELK
□×1 エルム近海の刺身盛り合わせ 18 ELK
□×1 黒班鳥の唐揚げ 21 ELK
□×1 レミングスの酒場特製シチュー 30 ELK
▽デザート
□×1 蜂蜜ゼリー 5 ELK
□×1 スウィートポテト 7 ELK
□×1 アップルパイ 10 ELK
▽ドリンク
―ノンアルコール―
□×1 おいしいお水 無料
□×1 蜂蜜ジュース 3 ELK
□×1 アップルジュース 3 ELK
□×1 トマトジュース 3 ELK
□×1 アップルティー 3 ELK
□×1 アイスカフェ 3 ELK
□×1 ホットカフェ 3 ELK
□×1 椰子の実ジュース 5 ELK
―アルコール―
□×1 ビール 5 ELK
□×1 蜂蜜サワー 5 ELK
□×1 アップルトリック 5 ELK
□×1 レッドアイ 5 ELK
□×1 カルーアミルク 5 ELK
□×1 エルム特産地酒 10 ELK
●注文する
●設定クリア
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アイネは湯気を立てる熱いミネストローネとシャメロットのチーズ蒸しを。キティは香り豊かなコーンポタージュとシーフードパスタを選んだようだった。
マイキーもまたメニューを見つめながらキーボードを弾き始める。女性陣が彼の注文内容に何気なく視線を投げていると、そこにはまずビールジョッキとたっぷりとチーズが振り掛けられたシザーサラダが浮かび上がった。
「まず乾杯しよう。喉渇いてしょうがない」
ビールを掲げるマイキーにアイネはビールジョッキを、キティはアップルジュースを合わせグラスが小気味良い音を響かせる。
「それにしても、あの二人本当にどこ行ったのかしら」
「ジャックの行動パターンは予想付くけどな。大方どこかの日陰で昼寝でもしてるんだろ。そろそろひょっこり現れる頃じゃないか」
食事を口に運びながら三人が苦笑いを浮かべていたそんな折、頭を掻きながらやってくる長身のひょろりとした一人の冒険者。飄々として薄笑いを浮かべながら座席に座ったその男は悪びれも無く一言告げる。
「昼寝したら夕方になってた」
その発言に思わず顔を見合わせ笑みを零す三人。
「マイキー、凄い。何で分かったの」
「もうそろそろ付き合い長いからお前だって分かるだろ。こいつがサボる理由なんて、煙草か昼寝か食事か、そんくらいしかないからな」
そんなマイキーとアイネの会話に首を傾げるジャック。
「そろそろお前が来る頃だなって話してたんだよ。理由までビンゴだったな」
キティの温かい微笑みに迎え入れられながらジャックはマイキーの隣に腰掛けると、メニューを広げ手短にビールを注文する。
「タピオとは一緒じゃなかったのね」
「いや見てねぇけど。あいつも昼寝してるんじゃないか?」
ジャックの言葉に仲間達が苦笑いしているそんな折、座席へと駆けて来る少年が一人。皆がその様子に笑みを零して迎え入れる。
尖り頭の茶髪とくりっとした大きな黒瞳が印象的な少年は座席に駆け込んでくると皆に謝罪する。
「遅くなってごめんなさい。調べものと実験してたら遅くなっちゃって」
「実験? 実験って何だよ」
ジャックの問い掛けに妖しげに光るタピオの瞳。
彼はここでPBから二枚のカードを取り出すとアイネとキティに一枚ずつ手渡した。
「このカードは何?」
「うん、僕今日は午後から骨象についてずっと調べてたんだけど。この近辺で取れるアイテムで生産してみたんだ。良かったら二人に是非受け取って欲しいんだ」
タピオの好意にアイネとキティは笑顔でカードを受け取ると礼を述べる。
「何だよ、女子二人にだけか。お前も抜け目が無いな」とジャックの言葉にただじっとアイネとキティの反応を見守るタピオ。
そんな彼女達はカードの内容を見つめながら硬直していた。
「ちょっと……タピオ!」
アイネの語調の変化に、慌ててジャックの後ろに隠れるタピオ。
その剣幕に只事では無いと周囲の冒険者からも視線が集められる。
「何よこれ……あぶない水着って」
その内容に口に含んでいたビールを吹き出すマイキー。アイネからカードを手渡しされ内容を見たマイキーは久々に愉快そうに声を上げて笑い出す。
それは、ここ近海で取れるオウム貝と呼ばれる貝殻を二枚、三本の蔓を織り込んだ蔓紐で繋ぎ合わせた胸当てと、貝殻を一枚結っただけの紐パンだった。
「私はともかくキティにまで渡すってどういう事よ!」
怒声を上げるアイネの横で表情を真っ赤にして硬直するキティ。
絶え間ない笑いに包まれる中、アイネに羽交い絞めにされて「ごめんなさい、冗談だよ」と微笑むタピオの表情が次第に苦しみへと変わる。
「タピオ。ナイスだ。久々に本気でツボに入った」
マイキーの言葉に「どういう意味」と彼を睨みつけるアイネ。
呆れた表情で座り込んだアイネに怯えながら、タピオは身嗜みを整えながらキティの隣へと腰を掛ける。
「ごめんキティ、ほんの冗談だから気にしないでよ」
タピオの言葉に、恥ずかしそうに頷くキティ。
それはほんの冗談だったが六才の少女にしてみれば、一大事だった。彼女をフォローするアイネにタピオはその日こっ酷く絞られ、自らの行為を悔いる一人の少年の姿がそこには在った。