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ARCADIA ver2.00  作者: Wiz Craft
105/169

 S2 [錬金術S.Lv2.00:パーム油]

 イルカ島の海岸で幾つもの塩山を築き上げたマイキー達は、一旦エルムの村へ戻り昼食を取ると、各自暫くは自由休憩と定めた。

 ジャックは煙草を買って一服すると、どこかへ去って行った。タピオは骨象に関する情報を集めてから合流すると、今暫くはレミングスの酒場に残り情報収集に徹するようだった。

 そうした成り行きから、結局は生産に黙々と励み錬金術をS.Lv2までステップアップさせた三人だけが再び海岸に戻ると、次なる生産過程へと移る事となった。


「それじゃ、午後の部を始めるか」と潮風に手を翳しながら深呼吸するマイキー。

「お願いします、先生」


 二人の女子の笑顔に促されて、マイキーは彼女達を島の西部海岸へと誘導すると、そこで次なる課題を提示する。


「次は椰子の実を使う生産レシピ。錬金術のS.Lv2の生産ではアブラヤシの果実を絞って抽出した液を固形化させてパーム油っていうのを作る。勿論、絞って固形化させるなんて面倒な作業だから、今までと同様そこはPB上の操作で済ます」


 そうして、マイキーは村側の林に生えた一本の樹木を指差すと徐に手を掛ける。直径一メートルを裕に超えた太い幹はパイナップルの笠のように層状に成っている。その幹の頭部には幾つものアブラヤシの褐色の実が、長く反り立つ力強い緑の葉に隠れるように生っていた。


「あれが今回の狙いさ」


 マイキーが幹に手を掛けてその感触を確かめる。乾燥した幹の笠は剥れ易く、手を掛ければすぐに剥れてしまいそうだった。加えて幹が太い御蔭で昇り切る事は困難なように思えた。


「どうやって実を取るの。こんなの登れないよ」

「木の棒があれば楽なんだけど。見当たらないしな。地表から三メートルちょっとのあの窪みまで手が届けば登れそうなんだけど」


 アブラヤシの大きな幹を見上げながら、困った顔を浮かべるキティ。

 小さな手で指先を組みながら歩み寄ると、その幹に手を掛けて登ろうと試みるが小柄で軽い彼女の体重でも幹の笠が簡単に剥れ崩れ落ちてしまう。


「何かつっつけるような棒探してくるね」


 そう言って道具を探しに行こうとしたアイネの肩をマイキーが引き止める。


「いや、いい。苦肉の策使うか」

「苦肉の策?」


 二人が見守る中、マイキーはアブラヤシの樹木に向かって距離を取ると、砂浜を一気に駆け始める。その背後に砂が舞い上げられ僅かな砂塵が起こる中、彼は一直線にその太い幹に向かって大きく跳躍する。

 だが当然だが、高さ三メートルちょっとまで、況してや足場の柔らかい砂浜では充分な高さを飛べる筈も無い。


「無理だよ」


 アイネが呟いたその時、空中で思い切り身体を屈めたマイキーがアブラヤシの幹に足を掛けてもう一段跳躍する。


――二段跳躍――


 それは完全に童心に帰った発想だった。

 あっという間に地表から三メートルを超えた高さまで到達し、窪みに手を掛けぶらぶらと身体を揺らせるマイキー。そこから樹上へと上がった彼は、生っていた十数のアブラヤシの実を次々と砂浜へと切り落して行く。


「何とかなるもんだろ」


 マイキーの言葉に呆れた様子で微笑みを漏らす彼女達。

 それから三人は落とした十数のアブラヤシの果実を使って、林の日陰で早速生産を開始する。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 ▼生産メニュー


  ○錬金術  S.Lv2.00

   ・化合

   ・抽出 >>>>> 【生産素材選択】

   ・分解


◆―――――――――――――――――――――――――――――◆

 生産区分:抽出

◆―――――――――――――――――――――――――――――◆


 ▼生産素材1 アブラヤシの果実×1

 

 【生産素材の追加】


 ●生産する(生産確率:100% 生産時間:30秒)

 ●キャンセル


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 新たな生産に心を躍らせる三人の冒険者達。


「あいつらもお前らぐらい辛抱強いと、生産も楽しくなると思うんだけどな」と溜息交じりに呟くマイキー。

「あいつらってジャックとタピオの事?」と微笑するアイネ。


 キティは二人の会話に愛らしい笑みを浮かべながら生産結果をただじっと待つ。


◆―――――――――――――――――――――――――――――◆

 現在生産中です

 生産状況 33%

 ■■■□□□□□□□

◆―――――――――――――――――――――――――――――◆


 僅か三十秒という短い時間ではあるが、海塩の生産に慣れていた彼らにとっては奇妙にも長い時間だった。生産確率は100%の為、失敗は有り得ない。それでも不思議と結果が出るまでは心配してしまうのは冒険者の心理か。


◆―――――――――――――――――――――――――――――◆

 【生産に成功しました】

 ★生産アイテム:パーム油

◆―――――――――――――――――――――――――――――◆


 生産結果に笑みを浮かべた三人はそれから新たな生産へと没頭し始める。

 女性陣が生産に没頭する中、ふと立ち上がったマイキーは近場のアブラヤシとは異なるひょろりと伸びた背高のココヤシの木に手を掛けると器用に登り始める。

 高さ七メートル程の幹を登り終えた彼は、ココヤシの実をまた幾つか切り落すと、それを抱えて戻ってきた。


「どうしたの。あ、ココナッツジュース作ってくれるの」と笑顔を見せるアイネ。


 マイキーは入手したココヤシの実を一人ずつに手渡すと、それをマテリアライズするように促す。当惑しながら指示に従う彼女達は生産フォームからマイキーに促された通りに設定し生産を実行する。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 ▼生産メニュー


  ○料理  S.Lv0.00

   ・調理 >>>>> 【生産素材選択】

   ・分解

   ・凝固


◆―――――――――――――――――――――――――――――◆

 生産区分:調理

◆―――――――――――――――――――――――――――――◆


 ▼生産素材1 ココヤシの果実×1

 

 【生産素材の追加】


 ●生産する(生産確率:75% 生産時間:30秒)

 ●キャンセル


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 結果を待つ仲間達に、今及んだ行為の説明を始めるマイキー。


「知らなかったんだけどさ、これも生産で作れるんだって」

「凄い。そんなに細かく設定されてるのね」と驚きを漏らすアイネ。


 待ち時間の後、皆のPBに表示される生産結果。


◆―――――――――――――――――――――――――――――◆

 【生産に成功しました】

 ★生産アイテム:ココナッツジュース

◆―――――――――――――――――――――――――――――◆


 出来上がった生産品をリアライズして表情を崩す一同。

 自分達で作ったその味は何故か際立って感じるのが不思議である。南洋の美味を味わいながら三人は生産の奥深さをまたそこで一つ認識するのだった。

 終日、三人はアブラヤシからのパーム油生産に励み、この日マイキーは錬金術をS.Lv2.48とし作業を終えた。

▼次回更新日:10/6

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