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第三項 用語について(一)

 固有名詞や人名など、頭に入りにくいカタカナ語が多いので、それ以外の言葉は可能な限り(場合によってはかなり無理やりにでも)日本語に訳してある。フォロ・ロマーノではなく「ローマ広場」、「アトリウム」ではなく「玄関大広間」、「バジリカ」は「集会場」。何だか野暮ったい感じがするとか、原語の意味合いとズレが生じるとか、色々欠陥はあるだろうが、まあ、せっかく日本語で書くのだから(いや、日本語でしか書けないのだが(笑))、日本語の持つ表意文字としての特性を活用できたら、と願う次第である。(何やらマジメな宣言文のようだ。)

〇地名

 地名については可能な限り当時の名前を採用した。これは何もこれだけ調べたんだぞ~と主張したい衒学的な話ではなく、単純に「フランス・ドイツ・スペイン」「ライン河・ドナウ河・ウェザー河」と書くよりも「ガリア・ゲルマニア・ヒスパニア」「レーヌス河・ダーウィヌス河・ウィスルジス河」と書くほうが語感がそろう、というだけの理由による。ただ、地理的にイメージしやすいよう、適宜現代の地名を併記した。


〇暦

 年代はローマ建国〇年、という記述を用いたが、これは当時の表記としては一般的ではない。紀元前後のこの時期、紀元〇年、という記載方法も当然出来ない。(キリストが生まれたのが、主人公が四〇歳頃の出来事である。)

 執政官が二人制でしかも毎年変わるローマにおいては、年代を表すのに、「ユリウス・カエサルとカルプルニウス・ピソが執政官の年」という言い方を用いていたらしい。だが、これを小説で用いても煩わしいだけなので却下した。ローマ建国元年=西暦紀元前七五三年である。

 なお一ヶ月についても当然のごとく「三月五日」といった表記を用いているが、ローマの日付は結構面倒だったようだ。一日=カレンダエの日(カレンダーの語源)、五日=ノナエの日、十五日=イドゥスの日、と三つの基準日があり、カレンダエの日から二日目、ノナエの日の前日、などといったとか。そんなもん書いて(読んで)られるか、ということでこれも却下。因みに有名なカエサルの暗殺日として有名な?「イドゥス・マルティアエ」は「三月マルティアエのイドゥスの日」、すなわち三月十五日である。

 ついでに七月(July)は「ユリウス」、八月(August)は「アウグストゥス」にちなむ。八月が三十日しかないことに納得できなかったアウグストゥスが、二月から一日をブン捕ったとかしないとか(笑)一月が一年の始まりとなったのは紀元前百年頃のことだそうだ。それまでは三月始まりだった。故に、本来「七番目の月」を意味する「September」が九月に、「十番目の月」を意味する「November」が十二月に、と、二ヶ月のズレが生じている。日付や月については『古代ローマを知る事典』がコンパクトにまとまっていて判りやすい。


〇度量衡・時刻

 度量衡は当時の度量衡と現代日本のそれとを併記した。これは明らかにその方がイメージしやすいだろうと思ったので。時刻も同じ理由で併記形式にした。当時は日の出からから日没までと日没から日の出までをそれぞれ十二等分していたので、夏と冬とでは一時間の長さが違う、という大らかなものであったそうな。水時計もあったが、前述の大らかさから、中々正確な時刻、というのは判らなかったらしい。「哲学者の意見の一致よりも、水時計の時刻の一致の方がはるかに難しい」というのはセネカの談。時計に関してはこれも『古代ローマを知る事典』に詳しい。

 しかしこの大らかな時間感覚の割に、法廷の弁論時間だけは水時計(原語はクレプシュドラ。こちらは時刻ではなく時間を計るもので、砂時計の水版)まで備え付けて約十五分と決まっていた、というのだから、さすがは「法の民」である(弓削達)。

 ティベリウスはともかく即座にギリシア語で応じ、かつ流暢に話したが、いつでも用いていたわけではない。とりわけ元老院では慎み、「モノポーリオン(専売特許)」という言葉を発音する際、「やむをえず、この外国語を使わねばならぬ」とあらかじめ弁明し許可を乞うたほどである。

 そして元老院議決の中で「エンブレーマ(象嵌細工)」という言葉が読み上げられたときでも、「この言葉は言い換えられるべきだ、もしこの外国語に相当するわれわれの言葉が見つからなければ、多くの言葉を使い、遠まわしにそのものを表現すべきだ」と。


-スエトニウス「ローマ皇帝伝」


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