第二項 登場人物紹介:ネタにされた人々(二)
〇神君カエサル(BC100-BC44)
<名前>
Gaius Julius Caesar
ガイウス・ユリウス・カエサル
<こんな人>
古代ローマ最大の政治家、軍人であり、かつ文筆家。ついでに「全ての女の男であり、全ての男の女」「元老院議員(この頃なら九〇〇人)の三分の一の妻を寝取った」とまで言われた「色好み」。塩野氏が「何故カエサルはあれほども女にモテ、しかもその女たちの誰一人からも恨まれなかったのか」という問いを立てたほどである。共和政ローマを崩壊に導き、アウグストゥスに始まる帝政ローマの礎を築いた。ラテン文学においては、散文でキケロと双璧をなし、特に『ガリア戦記』の雄渾で簡潔な文体は高く評価されている。
<私見・偏見>
人間的魅力溢れるこの「偉人」は、とてもではないがこんな項目で要約できる男ではない。参考文献『ローマ人の物語』やスエトニウス『ローマ皇帝伝』などを参考にして欲しい(←逃げてる逃げてる(笑))。それにしても、二〇歳にもなっていなかった、姪の息子であるアウグストゥスの資質を見抜き、後継者に抜擢しただけでも相当の慧眼である。ちなみに後継者を自負していたアントニウスは、アウグストゥスが美少年だったからだ、と悔しがっている。
〇アグリッパ将軍(BC63-12)
<名前>
Marcus Vipsanius Agrippa
マルクス・ウィプサーニウス・アグリッパ
<こんな人>
アウグストゥスの右腕。この親友とは同い年で、幼馴染だったらしい。軍事に精通し、かつ優れた政治家でもあった。彼が作った公共建築物は、パンテオン、水道橋、浴場など、膨大な数にのぼる。最初はアウグストゥスの姪と、ついで娘のユリアと結婚した。病弱だったアウグストゥスは、苦楽を共にしたこの友人に後事を託す気持ちもあったようだが、先に死なれてしまったため、それは叶わなかった。
<私見・偏見>
この人の像も結構残っているようだが、どれを見てもつくづく奥目だ。まさにクロマニヨン人の直系である。(直系じゃない人類がいるのか)
〇マエケナス(BC70-8)
<名前>
Gaius Cilinius Maecenas
ガイウス・キリニウス・マエケナス
<こんな人>
アウグストゥスの左腕。神君カエサルの友人の息子であり、カエサルは、アウグストゥスとアグリッパを勉強のためとしてマケドニア軍団の許へ送るとき、マエケナスを同行させたらしい。一説にローマの先住民族、エトルリア人の王族の末裔であり、彼自身、その事に誇りを持っていたという。「マエケナスする=メセナ(フランス語読み)」という言葉が残ってしまったほど、ウェルギリウス、ホラティウスなど、詩人たちを後援した文芸のパトロンとして最も有名だが、その卓越した外交手腕と行政手腕についても異論のないところである。
人となりについては諸説あるが、彼が死んだ時には10代だったパテルクルス(別項参照)によると、「危機においては、夜目がきき成すべき事を知る不眠の番人だが、仕事を離れたときの彼の奢侈と柔弱は、女以上であった」そうである(ウィキペディア)。
カエサルは隊長たちを残らず集め、痛烈に彼らを詰った。
「自分らが臆病風に吹かれたのを兵糧の問題や行路の艱難に転嫁するとは不届き至極、……兵糧の調達はこの俺が心配する事だ。小麦についてはセクアニ族、レウキ族……が梱包したものを供給する手筈になっている。しかも田野には無限に広がる熟した小麦があるではないか!」
かくして全軍の士気は一転し、勇躍ゲルマニア人討伐に向かう事になった。それにしても食料がなかったら畑から小麦を刈り取って喰えとは、今から見ればひどい話である。
塚田孝雄『シーザーの晩餐』