表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

プロローグ 転生



  帝都ベズドラ、そこは人間達にとって最も栄えている街であり……戦場の防衛地点でもある。

 街には至る所に迎撃用魔法陣が付与されており、敵の攻撃から人々や建物等の建造資産、王宮を守っている。


 その街でも一際目立つ山に陣を敷く者が居た。


 星の贈り物とされる星剣エクステリオンを引き抜き、数々の邪信徒を屠ってきた人々の希望の星、勇者。

 名をヴェイロンという。


 俺は蒼い刀身を持つ星剣を掲げ、こう言った。


「今日で、このくだらぬ(いさか)いを終わらせるっ!皆行くぞぉおおおっ!」


「「「おぉおおおおおおおおっ!!」」」


 活気付いた勇者軍は一気に主戦場たる城下街へ駆け下りる。


「来やがったな、勇者軍。返り討ちにしてくれるわ!」


 敵の兵士達が一斉に闇色の剣を抜き、同時に襲いかかってくる。


 それを一人の男が受け止める。四天幹部が一人、ライオルド・アンティノスだ。


 彼は襲いかかる全ての剣を躱し、時には受け流している。


「な、なんだコイツッ!?」


「く、全ての攻撃を食らう事なく凌いでいるだとぉっ!?」


「だが、これには敵うまいっ!」


 刹那、彼らの剣の軌道が光り輝き、その場に留まった。


「「「《漆黒留斬》!」」」


 留まった軌道から暗黒の奔流が放たれ、ライオルドに直撃した。


 辺り一面が夜の如く闇に染まり、耳を劈くような爆音が響いた。


「ど、どうだ?流石にこれは応えただろう」



 煙の中から一つの光弾が出現する。それは尾を引き、敵兵の一人に直撃した。


「主よ。ここで時間を割くべきではないかと。今こそ奴を、邪信徒長ノルターニャを討ち倒す時です」


 その言葉に俺は強く頷いた。


「ふむ。分かった。死ぬなよ」


「ご安心を。この者達を片付け次第、直ちに参ります」


 頼もしい声を聞き、俺は配下達に声をかける。


「我らはこれより、本町に移動し人々を救う!恐るる事などない!付いて来い!」


 俺達は再び走り出す。途中、敵兵が行かせんと立ち塞がるが、


「貴方達の相手はこの私です」


 ライオルドに阻まれ散っていく。


「くそおっ。どけぇっ!」


「どけと言われてどく馬鹿はいません」


 剣先の交差を見つつ、本町の門をくぐる。


 入ってすぐにでも分かる膨大な魔力が街の中心から発せられている。

 おそらく邪信徒長ノルターニャだろう。


 奴は今、莫大な信仰心を己が力に変えているはずだ。


 殆どの兵士はその魔力に当てられ、足がすくんでいる。


「何をしている。付いて来いと言ったはずだ。行くぞ」


 だが、俺が声をかけると少しは心が和らいだのか、同じように進み出した。


 周りの景色が目まぐるしく変わる中、俺は一抹の不安を抱いていた。果たしてアレが成功するかどうか……


 そんな事を考えていると敵陣の目の前に到着した。


 そこから一歩歩み出た、俺と同年代の女。


 それを認識した瞬間、俺は奴に向け駆け出していた。


「ゆ、勇者様っ」


 配下の呼び声に答えず、奴に向けて迫っていく。


「ふふっ。どうしたの?気でも狂った?勇者殿?」


 ノルターニャが、腰に提げている剣を抜き放つ。滅尽剣ファイボス。彼女等の信仰している邪神、終滅神ファイエンボスの神能が宿りし剣だ。


「我が神の名の下に滅び、消えよ」


 ノルターニャが破滅の剣を斜めに振り下ろす数秒前に《加速》にて自身の速度を上げる。

 振り下ろされた剣を右手で掴む。


「っ!」


「さて、約束を果たしてもらうぜ。《空間転移》」


 俺達二人の視界が真っ白に染まり、次の瞬間には木々の生い茂る森林へ転移していた。


 小鳥のさえずりが聞こえ、穏やかな風が吹いている。


 そんな状況に似合わぬ二人が、手を離したのは同時だった。


「あはっ。まさか、私を見ただけで走られるなんて思わなかった」


「こちらも滅尽剣を抜かれるとは、想定外だったぞ」


 そう言いあった後、俺は懐から一枚の紙を取り出した。


「俺達は今後、互いに領土や権利を侵そうとしない限り互いに攻撃してはならぬ。これで良いか?」


「ええ。私にも異存はないわ。でも、肝心のこの戦いの終わらせ方というのは決まってるの?」


「なに、その辺は抜かりない」


 そう言うと、俺は星剣の剣先をノルターニャに向けた。


「俺達が同時に死ねばいい。最早俺達が争う意味もない。しかし、俺達が生きていれば彼等は俺達の意思関係なく、また争うだろう。俺はもう無駄に戦うのはうんざりだ」


「まぁ、そういうことになるわね。でも残念だけど、私達が死んでしばらくしたら、両者はまた恨み合うとしか思えない」


「だからこの紙を持ってきたのだ。この紙には先の条約内容が記されている。この紙に、俺とお前の魔力を刻むことにより、双方同意したということになる仕組みだ。時間が無い。やるぞ」


 俺は紙に向かい、槍の形にした魔力を突き刺した。


 ノルターニャもまた、矢の形にした魔力を紙に突き刺した。


 闇と光の魔力が混ざり合い、紙が灰色に変色していく。


「これで完了だ。完全に死にたくないなら《転生》を使え。俺はそうするつもりだ」


「貴方が転生するなら私もしようかしら。また会えるといいわね。心優しき勇者さん」


「ふ、一つだけ願いがあるのだが、聞いてくれるか」


「なにかね」


「来世で俺の友達になってくれ」


 一瞬、彼女は驚いたような顔したが、すぐに笑顔を浮かべ、


「ええ。なんなら、この瞬間から友達ね。ヴェイロン」


 邪信徒長としてではない、本来の口調で答えてくれた。


「これからよろしくな。ノルターニャ」


 最後に心を通わせた二人は、共に眩い光に包まれ、転生していった。

 

敵同士だった二人は共に転生していくーー


お読みくださりありがとうございます!今作が初めて故、誤字脱字等があると思いますが、感想欄などで教えていただければ幸いです。今後も頑張りますので、ご感想よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ