ハイエルフの独り言
DO.500
極東世界樹裾野森 稲 亜竹
独白より抜粋
私の自意識が確立して500と40と少し。始めの40年は、友や仇敵は人の社会に入り込むように人間のコミュニィティの侵食を行っていたが、私は博士と出会ってのんびり暮らしていた。博士曰く、ほうき星に友のような話し相手か子供のような養うべきものが欲しいと、願いごとをしたところ、数ヶ月後には邸宅の竹林その一角で私が生まれたようだ。どうやら願いごとをしたその翌日から一部の竹に変化が見られ結果、私が生まれたようだ。博士曰く、「変な病気にかかっているかもしれないから、切ろうと思っていた。」とのことだ。危なかった。
ただ、私に知能があるとわかると、人間の子供のように可愛がってもらえた「ようやく夢が叶った」とか「これから生きていくのは大変だろうが、生きてみせろよ」と初老の老体に鞭打って、この世界のルールについて色々教えてもらえた事は、今でこそ生きていく上で大変役に立っている。その上で、博士は私の使う魔法について解明しようと考えていたらしいが、最後の言葉が「魔法についての解明は、時間が足りなかったか」となる結果に終わった。
博士が死亡して数年、私たち亜人が魔力と呼ぶものの結晶「固形エーテル」が海岸で発見され魔法の一部が科学の領域にある、魔術に落とされた。魔法の一部が解明されたのである。博士はよく「探究できても、探索できないものは科学というには烏滸がましく、妄想と大差なし。統計とれてこその科学だ、単位を用意しろ。」なんて言っていたが、観測できる「固形エーテル」の登場により、初めて単位が生まれた。
今まで、魔法は、個人差が大きく原因は不明、魔力と呼ばれるものはなんとなく有ることはわかるけど、計測はできないとまで言われていたものだった。そこからは、酷いものだった人間と土人、魚人そして竜種による魔獣が登場するまでの開発競争だ。
当たり前のように突破される、竜種と戦争を行う最前線。適応能力と索敵能力は竜種が群を抜いて高いことが原因だったのだが、この頃は日々塗り替えられる世界地図を食い止めることが忙しすぎてどこも対応できなかった。ただ、魔獣の登場で状況が激変する。竜種の生存域を食い破る形で、爆発的に生存域を広げていったのだ。一箇所ではなく世界各地で。
これの対応に追われる形で前線が構築され大陸の半分を飲み込み切ったところで竜種の進撃はしばらく静かになる。しかし、戦果は上々。世界一の超大国を完全に飲み込み聖域として完全に征服して見せた。ただその影響で、人間が十分以上に疲弊していたため亜人の隆盛期に入った。人が竜種の対応に追われ、我々木人や土人、魚人への警戒を緩めてくれたことも幸いしたと言うべきだろう。土人のモーリク リラシーリッヒ氏と魚人のダゴン氏そして、私は同族を先導し、国を起こした、モーリク リラシーリッヒ氏は王国を、ダゴン氏は宗教国家を私は共和国を起こして見せた。それに続く形で様々な種族が国を起こして、消えて、また別のところで似た様な国が出来てを繰り返した。
少なくとも始龍が生まれるまでは。