「発進会」
この回で、最終話です!
悪魔ネビロスとの戦いが終わった、その後……
散々痛めつけられ、ボロボロになっていたリュウの身体は、癒しの幼女女神メーリの回復魔法で快癒した。
更に、全員で葬送魔法を使い、改めて呪われていた城を完全に浄化……
領主ダヴィド・アングラードと家族、そして城の住人の冥福を祈ったのである。
全てを終え、任務を終えたリュウ達3人は、転移魔法で、無事天界へと帰還した。
依頼主のディーノ村村長フロランへは、すかさず神託で事件解決が知らされたのは言うまでもなかった。
ちなみに、その後……
アイディール王国は、悪政の限りを尽くした王が、家臣により惨殺された。
犯人である家臣の妻を、権力により『おもちゃ』にした王が、悪政も含め、神の罰を受けたのだと巷では噂された。
後を継いだ、新たな王は国の名を変え、人心を一新。
悪政は改められ、民は幸せに暮らしたという……が、それはまた別の話……
閑話休題。
今回のミッションは……
元魔王ベリアルの、意外な弱点発覚。
女神達との親子ゲーム。
そして予想外の強敵、大悪魔ネビロスの出現等々……
様々な『事件』はあったが、リュウ達は見事に完遂してのけた。
加えて、『ネビロスの討伐』という予想以上の大戦果を挙げ、隊長のルイは上席から大層褒められたらしい。
リュウ達が帰還した、その日、ず~っと機嫌が良かったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それから、数日経った日の事……
天界のレストラン? など貸し切りにせず……
あくまで、オフィスでささやかに、という趣きだが……
隊員の士気向上の意味もあり、費用を『隊長持ち』ということで、ルイは祝いのパーティを開いてくれた。
大量の酒と料理を、テイクアウトで手配してくれたのだ。
このパーティは、新生の部隊、天界特別遊撃隊H・S・W・Pの『発進会』である。
そして発進会での主な話題が、『初ミッションの成功』の件となるのは、自然の成り行きであった。
当然、話の中心は、リュウが使った、『謎スキル』となる。
副隊長のメーリが、いろいろ調べた結果……
あの謎スキルが『魂砕き』という、S級神でも使える者がごくごく限られる、超上級スキルだとは分かったが……
勇者の能力をリセットされた、C級神のリュウが……
何故そのような、超上級スキルを使えたかが、全くの謎なのである。
どんなに調べても、原因不明なので………
経過観察?という、ルイの判断が為された。
さてさて、ライバル?と思っていたリュウの思わぬ手柄に、元魔王は妬む、妬む。
そして、つい憎まれ口を叩く。
「ど~うせ、今回の手柄なんて、まぐれっすよ、このおっさんは」
ベリアルの悪態に対し、
リュウは、帰還以降、ずっと考えていた反撃ワードを投げ返す。
「うるせ~、ベリアル子」
ベリアル子?
リュウが返し、呼んだ名前を聞き、ベリアルは美しい眉をひそめる。
「はぁ? 何だ、それ?」
リュウはもう、ベリアルへの見方を変えていた。
『素の彼』を知ったからだ。
過去はいざ知らず、これからは良きライバルとして、仲間として付き合って行こうと決めていたから。
なので、本気で怒らず、女の声色を使い、悪戯する。
「わたしぃ、ゾンビなんて、きら~い、ベリアル子は、そんなのだめなのぉ、超苦手ぇ」
すぐに「いじられている」と知ったベリアルは、リュウの『口撃』を懸命に、止めようとする。
はっきり言って、有効な反撃方法がないからだ。
「ち、ちくしょう! おっさん! てめ、やめろ、それ」
そんなベリアルの制止など、思いっきりスルー。
リュウに蓄積された、長年の『恨みつらみ』がさく裂する。
まあ、一種の友情と言うか、愛情表現にもなるのだが……
「わぁ~、腐った死体にかじられるなんて、ぞくぞくして、鳥肌立っちゃうぅ、すご~く感じて動けなくなっちゃう! そんなベリアル子ちゃわんったらぁ、超きゃわいい~、好きになっちゃう~ん」
「くううう! きたね~おっさんになんか、好きになって貰いたくねぇ! くそっ! ゾンビなんて! ゾンビなんて! ぜって~克服してやるぅ!」
ネタにされ、大いに悔しがるベリアルへ、更に追い打ちをかける事が……
「わあっ! リュウ様ぁ! 初ミッション完遂おめでとうございます! 私、ますます、リュウ様の大ファンになっちゃいましたぁ!」
パーティには、リュウが天界へ来た時、親身になって世話をしてくれた看護師シャルロットも呼ばれていた。
シャルロットは「ここぞ!」とばかりに、リュウに甘えまくる。
厚い胸板に頬をすりすりさせ、うっとりしてしまっている。
どうやら、マッチョ大好きなのは、全然変わらないようだ。
「うふふ、大大、大好きっ! 強いリュウ様ぁ!」
と、そこへ!
「おいおい、愛する妻と娘を忘れては困るぞぉ」
「パパぁ!」
グンヒルドとメーリのコンビが乱入。
当然、天界でも親子ゲームは継続中なのである。
シャルロットに負けじと、ふたりの女神もリュウに抱きついてしまった。
そして、何と!
アールヴの女神スオメタルまでが……
「や、やはり男は顔より、優しくて強い方が……良いかな?」
と、面食い主義の、180度方針変更をぶちあげ、リュウへ色目を使って来る始末。
当然、ベリアルの悔しがりようは、尋常ではない。
「おお、何で? この汚いおっさんが、すげぇもてるんだぁ!? オーマイガー! 神よぉ! 何てこった~ぁい!」
元魔王が、とうとう禁断のセリフを叫んでしまった。
全員が盛り上がっている?のを見て、ルイが高らかに笑う。
「ははははは! 我が隊の前途は洋々だぁっ!」
こうして……
天界特別遊撃隊のオフィスは、明るい笑い声、そして様々な愛に満ち溢れていたのであった。
※ご愛読ありがとうございました。
『超イケメン魔王と相討ちになった、おっさん勇者は天界で二度目の転生を果たす!』の物語はここで一旦終了です。
もっともっと続きが読みたいぞ! とお感じになりましたら、
作者と作品へ、更なる応援を宜しくお願い致します。




