6話 少年とクローバー学園
「もう大丈夫かの?」
「はい!」
翌日の昼過ぎ
ユウの病室を訪れたシンガは目元を赤くしながらも、心の底からの笑顔でシンガの問いに答えるユウを見て安堵の息をはいた。
「ユウはこれからどうするんじゃ?」
「最初は父と母に会う予定だったんですが…」
「あの遺跡は調査が終わるまで入れんからのぉ……」
ユウの両親が向かった遺跡ー赤の遺跡ーは、調査が終わるまで誰一人として入ることは許されていない。
それは英雄と呼ばれるシンガであってもだ。
ユウの両親が考古学者だと知ったシンガはリーン村からオリーブに着いた後すぐにユウの両親を探した。
そしてユウの両親が炎の遺跡の調査をしていることを知ったのだ。
「遺跡の調査が終わるまでここで待ちます。まぁ、住む場所と働く場所を探してからですけどね」
苦笑しながらユウは言った。
しかしシンガはなにか考え込んでいる様でユウの話を聞いていたかも怪しい。
「あのぉ~…」
「ふむ…ユウよ、お主学園に通ってみないか?」
「ふえっ?!」
学園?通うの?俺が?!!
ユウがシンガの唐突な発言によりオロオロしているが対すシンガは嬉しそうに笑って頷いている。
「それがいい!学園には寮もあるからの!」
早速手続きせねば!っと立ち上がり病室を去ろうとするシンガの手をユウは慌てて掴む。
「あの!俺、お金もないので学園なんて入れませんよ!?」
「大丈夫じゃよ、お金の心配はない。それに学園に入ればお主に最低3つのメリットがあるぞ?」
「3つのメリット?」
掴んでいた手を離し、小首を傾げるユウにシンガは笑顔で言った。
「まず1つ目、ここの学園は寮がある。じゃから学園に通えば住む場所も確保できる。
2つ目、お主の居場所が分かりやすくなれば調査が終わったことをすぐに知らせることができる。
3つ目、お主のその強い力の使い方を正しく知ることができる
……どうじゃ?学園に入ってみんか?」
「……本当にお金は大丈夫なんですか?」
再度確認するようにユウが問いかければ笑みをさらに深くしてシンガは頷いた。
暫く考えるようにうつむいていたユウは顔をあげてシンガを見、頭を下げる。
「お願いします。俺を学園に入れてください」
頭を下げ、そう答えるユウの頭を優しく撫でる。
「もちろんじゃよ」
◇◆◇◆◇
最後の診察を受け医者から退院の許可をとったユウは、シンガの住む館にいた。
新しく通う学園についての話を聞くためだ。
シンガがユウに入らないかと標示した学園は、クローバー学園と呼ばれるフィルアの中で一二を争う学園でもある。
「あぁ、ちなみに学園長はワシじゃから」
今日は雨だみたいな軽い乗りで投下された爆弾にユウは目を白黒させた。
シンガがユウに学園についての簡単な説明をしていると、部屋の扉を叩く音が響く。
「シンガ様」
その声にユウは聞き覚えがあった。
確か水色の長めの髪に眼鏡をかけていた……
「おぉ、カルムか!入って良いぞ」
「失礼します」
入ってきたカルムは、シンガの部屋の椅子に座るユウに驚いた様だったがそれはすぐに笑みに変わった。
「もう大丈夫みたいだね」
「はい!その節はありがとうございました!」
椅子から降りてカルムの目の前まで行き頭を下げる。
「よかった、今日は君の行く学園の再確認に来たんだ」
そう言ってユウに先の椅子に座るように促し、シンガへと向き直る。
「ユウ君が入るのはシャチのクラス以外がいいですよね?」
「そうじゃのぉ~……」
「シャチ?」
“シャチのクラス以外“その言葉に不思議に思いユウが小首を傾げる。
「シャチのクラスにはちーとばかり手におえん生徒がいてのぉ……ワシらが手を出せば親も黙ってはおらんし、迂闊には手を出せんのじゃよ」
…つまり手におえない人がいるところに俺を入れられないって事だよな?
でも、もしそれを解決できたら少しでも恩を返せるかもしれない。
そう考えつきユウはシンガとカルムに言った
「俺をそのクラスにしてください」と。
「…理由を聞いても良いかの?」
「俺は、シンガさんにもカルムさんにも助けていただきました。だから恩返しがしたいんです!」
「恩に感じる必要はないんじゃぞ?ワシらは気にしておらんし……」
「お願いします」
テコでも動かない姿勢にシンガはため息をはく。
「…お主の今の保護者はワシになっておる。ワシが駄目だと判断したらクラスは変えるぞ?お主の両親にワシが怒られるからのぉ」
「ありがとうございます!!」
とても嬉しそうに笑い、ユウはシンガに礼を言った。
「はぁ、じゃあユウ君のクラスはシャチの所ですね」
「あぁ、頼むぞカルム」
その後ユウはシンガの館に泊まり、自分が行く学園、クラスの手におえない者をどうにかする。
あるいは考えを変えさせようと強い覚悟を決めた。
おまけ?
カ「そう言えばシンガ様、アンジュはどうしたんですか?姿が見えないようですが…」
(アンジュとは、シンガと契約しているシルフ、風の妖精です。)
シ「アンジュなら化粧をしているぞ?」
カ「は?!」
シ「アリスに会うんだから気合いを入れないといけんらしくてのおー」
カ「化粧?…ぶっ、妖精が化粧するなんてはじめて聞きましたよ!あはははっ」
ア『それを最後に聞いた言葉にしてあげようかしらン?』
(竜巻をお越しなが黒い笑みを浮かべる。)
カ「すみませんでしたっ!!」
カルムのスライディング土下座orz
シ「仲良しじゃのぉ~」
ア『そんなわけないじゃないン!』
カ「そんなわけありません!」
シ「ほっほっほ」