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4話 英雄の決意

妖精達と別れた俺は、一人暗い森の中を進んでいく。

『化け物』

あぁ、まただ

『お前が魔物を呼んだんだろ!』

離れない言葉

『お前みたいな奴がいるから魔物が村を襲ったんだ!』

何度も何度も繰り返される言葉

『お前さえいなければっ!!』

あの時の皆が俺を見る顔が、目が、頭から離れない。

目に焼き付いて離れない。

恐怖、恐れ、不安、

あの時斬られた腕が、守ろうとしてついた傷がずきずきと痛む。

「はぁ、はぁ、はぁ………」

声を振り払うように走り出す。

聞きたくない。

道なき道を走る。

何度も転んで、立ち上がって、あの声が、言葉に追いつかれないように、振り払うように必死に走る。

走って…

走って……

走り続ける………

木の枝で切れた腕や脚から血が流れる。

ボロボロの体を引きずるように、足を止めずに進む。

……足が鉛のように重くなり、動かすことが段々と出来なくなっていくのがわかる。

フラフラと頼り無く、前に進むことも出来なくなった自身の体に舌打ちする。

「もう、嫌だよ……」

弱々しくそう呟き、近くにあった木に倒れるように寄り掛かった。

「誰か…助けてよ……」

小さく呟き、ユウは静かに目を閉じた。

◇◆◇◆◇

「おいっ、おい!」

“青みがかった銀髪の少年„

ユウにシンガが呼び掛ける。

ユウの体は傷だらけで衣服もボロボロ

まだ新しいだろう傷口からは血が流れている。

「うっ…」

『ひどい熱ねン。

……このままだと危ないわン』

アンジュがユウの額を小さな手で触りながら不安そうにシンガに言った。

「一度オリーブに戻るぞ!」

オリーブとはフィルアの中で一番大きな街で、シンガの住む場所だ。

ユウを優しく背負いオリーブの街へと急ぐ。

『魔法で行けば良いのにン』

「それだとユウに負担がかかる可能性がたかいからのぉ。」

ここまで来た時間の半分も掛からない時間で街へと着く。

「シンガ様!」

「おぉ、カルムか!」

街へと入る前にシンガの部下であるカルムがシンガのもとへと走って来た。

「…っ?!どうしたんですかその子!傷だらけじゃないですか!」

「それは後で話す。今はこの子を…ユウを病院に連れていくのが先じゃ」

「…わかりました。では俺は先に病院に言って直ぐに治療出来るように話してきます」

「頼むぞ」

カルムが走って行くのを見ながら、シンガもユウに負担をかけないように病院へと向かう。


その後、カルムの話を聞いた医師がシンガに背負われていたユウを担架に乗せて治療室へと運ぶ。

ユウの治療が終わるのを待つ間に、シンガはリーン村での事とユウ事を話した。

「そんなことが…」

「傷は治療をすれば治る。しかし心を治すことは出来んじゃろう……」

「まだ13の子供ですよね…大丈夫でしょうか」

そう、ユウはまだ13の子供なのだ。

小さな体には収まりきらないほどの圧倒的なまでの力を持った子供。

リーン村でマヤにユウを助けると言ったが、自分はユウを助けることが出来るのだろうか?

実際にユウと会って、その姿を見てシンガは不安になった。

青白く冷たい肌。

細い…力を入れれば簡単に折れてしまいそうなほど細い手足。

そして無数についた傷

マヤの話に出てきた腕の傷も酷かった。

あの時、ユウは何を思ったのか…

絶望しただろうか

もう、何もかも信じられなくなってしまっただろうか……

不安をかき消すように、シンガはかぶりを降った。

自分はユウを助けると約束したのだ。

英雄の名に懸けてユウを助けるとシンガは、固く決心した。

もう迷わないと決めた。

ユウが目を覚ましたら優しく声を掛けよう。

ユウがしたことは間違いではないと、ちゃんと伝えよう。

そう考え、シンガはカルムと共にユウの治療が終わるのを静かに待っていた。

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