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2話 過ちを正す為に

炎の剣を持ち、ユウは魔物の群れに突き進んで行きました。

首を飛ばされる者、炎で焼かれる者

ユウは傷つきながらも私達を守ろうと戦っていました。

戦っていた男達は、呆然と魔物の群れの中を突き進み戦うユウの姿を見ていました。

最後の魔物を倒したユウは、持っていた炎の剣を地面に落としました。すると剣は、まるで役目を終えたように消えていきました。

……これで終わっていればよかったんです。

でも、それは叶いませんでした。

『……化け物』

ボソッと誰かが言ったんです。

『化け物!』

今度はハッキリと。

『えっ、』

『お前が魔物を呼んだんだろ!』

『お前みたいな奴がいるから魔物が村を襲ったんだ!』

『ちが、ちがう!!俺はただ……うわぁっ?!』

男達の内の一人がユウを持っていた武器で斬りつけたんです。

それはユウの腕を深く切り裂きました。

『なんで?なんでっ!』

斬られた腕をおさえながら、ユウは泣きそうな顔で言いました。

『お前さえいなければっ!!』

『……黙りなさいン』

『アリスは、ユウはあなた達を守ろうと戦ったんですよ?!』

『あんなにボロボロになるまで戦ったのに、守ってもらっといて……更に傷つけるなんて』

『『『ふざけるな』』』

シルフは、風をおこしながら

ウンディーネは、水を出しながら

サラマンダーは、炎を灯しながら

私達を怒りを込めた目で睨み付ける様に見ていました。

『あぁっ、あぁぁぁぁぁぁあっ?!』

それまで、それを呆然と見ていたユウは苦しそうな叫び声を出したんです。

『アリス!アリス?!!』

『いけない!魔力が暴走しようとしています!』

『アリス!落ち着いて!』

『…た、のむ……皆を、守ってっ!!』

その言葉を聞いたシルフ、ウンディーネ、サラマンダー達は私達のすぐ目の前まで飛んできて

全員を囲むように大きな結界を張りました。

『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!』

その直後に響いた先の比にならないくらいのユウの苦しそうな叫び声と、目を開けていられないくらいに眩しい光りがおこりました。

…光りが収まり目を開けると飛び込んできたのは荒野となった村と大粒の涙を流しながら膝をつくユウの姿でした。

『すごいわねン』

『これで、全ての魔力を使っていないとは……』

『さすがアリスだね!…………さてと』

瞬間、その場が凍りついきました。

『君達は守ってもらったのにっ!』

『………もう、いいよ』

立ち上がり此方を見るユウの目は、暗く何も映していませんでした。

『……ごめんなさい』

そう言ってユウは、妖精達を連れて私達の前から去っていきました。

◇◆◇◆◇

『これが、あの日に起こった全てです。』

シンガは言葉を失った。

この荒野を作ったのが子供で、しかも妖精達が手助けをしたわけではない……自信の魔力のみで、この威力なのだ。

そしてなによりも……

『…アリスに愛し子か』

シンガに話し掛けた女性、マヤから聞いた妖精達がユウを呼ぶ名前 アリス、愛し子。

古い文献の中にアリスについて書かれている物があった。

[稀にアリスと呼ばれる神に愛されし子が存在する。

夜の愛し子、神の愛娘、蜂蜜酒、ロビン、スレイ・ベガとも呼ばれる存在は100年に一度産まれるかどうかの存在である。

性別は関係なく彼、彼女は全ての動物や妖精に愛され、彼等の声を聞き会話する事や、彼等の力を“纏う„事も出来る]

未だに解明出来ていない箇所があるが、ユウの持つ力は強大だということは分かる。

『シンガ様、どうかユウを助けて下さい。私達ではあの子の支えにはなれません。それに、私はユウを裏切ってしまったんです!あの時ユウは私達を助けてくれたのにっ私は……私はユウが傷つけられているのを見ていることしか出来なかったんです!』

マヤは泣いていた。

ボロボロと大粒の涙を流しながら。

シンガはそっとマヤの肩に手を置くと静かに言った。

『……わかった。ユウを助けると約束しよう』

シンガがそう言うとマヤは顔をあげる。

『あ、ありがとう…ございます!』

マヤは瞳から涙を流しながらも心の底から安堵したようにシンガに礼を言った。


その後、マヤはシンガが荒野となったリーン村を離れるとき、シンガにユウ宛の手紙を渡した。

村の人々とユウへの感謝と謝罪の手紙らしい。

『本当は直接渡したいのですが……』

本来ならマヤ達リーン村の人々は、シンガと共にフィリアの中心であるルーチェに向かう予定だったが、荒野となったこの地で新たに村を作る事になったのだ。

村人達いわく今回の事を忘れないように、という事らしい。

……本当はユウが帰ってこれる場所を残す為なんですよ

っと笑いながら話すマヤに教えられたときは少々驚いたが。

『……ユウを宜しくお願いします。』

『この手紙も、あなた方の想いも必ず彼に伝えよう。』

シンガの乗った馬車が走りだし、その姿が見えなくなるまでマヤはずっと頭を下げていた。

シンガがユウを助けてくれると信じて。

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