11話 捕まった狐人(ルナール)
「うーん……」
完全に迷子となったユウはエアリアルを連れて森の中を進んでいた。
歩いていれば森を出られたり、タクト達に会えるのではないかと思ったからだ。
10分……15分………30分………
どんなに歩いても森を出られないし、タクト達にも会えない。
「……どうしよう」
立ち止まって頭を抱えるユウを肩に乗るエアリアルが慰めるように頬を撫でる。
『あらン?』
ふと、ユウの頬を撫でていたエアリアルが首を傾げた。
「どうした?」
『人、それも大人の声が聞こえるのン』
「本当!?」
エアリアルが指差した方へと足早に進む。
「……だ……んだよ!」
「…………し……ねぇよ!」
ユウの耳に届いたのは途切れ途切れに聞こえる男の怒鳴り声だった。
「?」
出ていくのを躊躇い茂みに身を隠す。
「何だって今回はいい奴がいねーんだよ」
「おかしいな…今日はここに餓鬼共がいるはずなんだけどな?」
「あーぁー、餓鬼共捕まえて売り捌く予定だったのにな」
「ッ……!」
聞こえてきたその言葉に息を飲んだ。
“餓鬼共を捕まえて売り捌く„
確かにそう聞こえた。
『あいつらの狙いはアリス達のことみたいねン』
「うん。でも、まだ誰も捕まってないみたいだ」
……しかし次の男達の言葉によってユウは再度息を飲んだ。
「まぁ、餓鬼が一匹手に入っただけでもいいとするか」
「たしか狐人の餓鬼だろ?」
「狐人は、珍しいから高く売れるだろうな!」
ギャハハハッと下品な笑い声を残し男達はユウの前を横切り森の中を進んでいく。
「…………」
『アリス、早くここを離れましょうよン
危ないわン』
「いやだ」
『アリス?』
両手を固く握りしめ、ユウは男達の背をじっと見つめ…
「狐人の子を助ける」
『会ったこともないのに助けるのン?』
「あぁ」
『……アリスは、優しいわねン』
呆れたようにエアリアルは、ため息をはいた。
『アリスが行くなら私も行くわよン』
「でも、これは俺の我が儘で……」
そう言ってユウはエアリアルへと振り返る
『大丈夫よン!私が好きで行くんだからン!』
クスクスと笑うエアリアル
「……エアリアル」
『フフッ、私達の愛しいアリス。
貴方を助けられることは私達妖精の幸せなのよン?
だから、頼りなさいン』
「ありがとう」
『さぁ、行きましょン?見失ってしまうわン』
そう言って茂みから飛び出したエアリアルに続くようにユウも茂みを飛び出し、男達に見付からないよう注意しながらついていく。
狐人の子供を必ず助けると覚悟の炎を心に灯しながら。
短くてすみません!