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無償の愛に彩りを  作者: 紫ヶ丘


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6/13

初顔合せ

この世界に来て約一年。

今日僕は五歳になった。

相変わらず魔法は使えないし、魔力耐性も伸びていない。

でも大ニュースが3つもあった。

1つ目は味噌汁が朝食に出るようになったこと。

これは本当の本当に嬉しい。

執事のマルユが料理長と試行錯誤の末、なんと味噌を作り出したのだ。

慣れ親しんだ味噌とは違うけど、十分に満足できる味だ。

具沢山の味噌汁は皆にも好評のようでランク領では空前の味噌汁ブームが起きている。

やはり味噌汁は偉大だな。

2つ目は次男が婚約したこと。

なんと相手は辺境伯の末の娘さんだ。

結婚はまだ先だけど交易が増えランク領の財政が少し上向きになった。

しかも辺境伯領からの食材が味噌の完成に一役買ったとマルユ達が言っていたので本当に兄上様々である。

そして3つ目。

遂に僕渾身の作品が完成した。

趣味全開だけど我ながら良くできていると思う。

完成直後にお披露目してもよかったが、今年は僕の誕生日をお祝いしてくれるため嫁いだ長女や学校の寮暮らしの長男も顔を出すと聞いたので、どうせなら都会的な二人の意見も聞きたいと思い保留した。

誕生日まで日にちがあったのでもう1つ見栄えの良いものも作ろうと取り組んだが僕の美的センスはいまいちなようで結局似たようなものが2つになった。

否、きっとこれが完成形なのだ。

うん、そうに違いない。

部屋の中にいてもいつもより賑やかな雰囲気が伝わってくる。

来客が到着し始めたのだろう。

兄や姉だけでなく他にもお客さんが来るからねと以前から聞いていたので驚きはない。

何回か挨拶の練習等もしたけどそこまで堅苦しいものじゃなかったので来たとしても両親の親戚とかその辺だろう。

あまり面倒くさくない人だといいな。

本日の主役である僕が私室で待機しているのには理由がある。

そう、魔力酔い防止のためだ。

扉の向こうには来客達の様々な魔力が溢れているために父上が抑制魔法を使うまで部屋から出てはいけないと言われている。

来客に各々魔力操作で属性を抑えてもらうよりも一括で抑制魔法を使った方がお互いに負担も減るし簡単らしい。

勿論抑制魔法を使うことは予め伝えてあるし、了承してもらった人のみを招いているのでトラブルも起きないだろう。

突然の来客には庭師のジョンが対応することになっている。

元々土いじりが趣味だったジョンは所属していた騎士団の庭─訓練場を暇だからと大規模な花壇、否、小ぶりの庭園に変えてしまったらしい。

暇だからというのはきっと訓練で足を怪我をして安静にしていろと遠征部隊から外されたストレスが貯まっていたのだろう。

遠征から帰ってきたら広かった訓練場が猫の額ほどの狭さになっていたのだから隊長の心境はいかほどか。

叱ろうにもちょうど視察に訪れた当時の王太子妃にとても素敵ねと誉められたから怒るに怒れないし、整地することも出来ずに結局新たな訓練場を作ってもらったらしい。

その結果ジョンは自重せず訓練場全てを庭園にしたそうだ。

今でも憩いの場として残っていると自慢気に話していたからかなりの力作なのだろう。

うちの素晴らしい庭を見たら何でこの腕があるのにそれほど裕福でもないランク領に来たのか不思議だったが、何か納得してしまった。


「失礼します、レイ坊ちゃま。大変お待たせ致しました。準備が整いましたので広間へ参りましょう。」


「はーい。」


2つの自信作を入れた木箱を抱えて部屋を出る。


「レイ坊ちゃま、そちらは?」


「わたしが作ったじしんさくだよ。みんなに見せるんだ。」


「左様でございますか。坊ちゃまの自信作でしたら旦那様も皆様もきっとお喜びになるでしょう。」


「うん!」


「坊ちゃま。階段などの段差がございますので不肖私めが坊ちゃまの自信作をお持ちしてもよろしいでしょうか?この命に代えましても決して傷付けないとお誓い申し上げますゆえ。」


真顔で堅苦しい事をいうマルユに木箱を渡し階段をゆっくり下りる。

駆け下りるなんてとんでもない。

ほぼ確実に転げ落ちるから。

僕五歳だけと何か微妙に小さいんだよね。

外出もほとんど庭園に出るくらいだから色も白いし髪の色と相まってモヤシみたい。

父上みたいに足も速くないし。

だからこの辺でどーんと見直してもらいたいんだよ。

いつまでもひよっこじゃないってね。

扉が開け放れた広間には思ったよりも人がいた。

同い年くらいの子どもの姿も見えるし、見慣れない騎士も数名キリッとした表情で警備をしている。

臨時で雇ったのかな?


「レイ、こちらへ。」


父上に呼ばれたので早足で隣に並ぶ。

僕を真ん中に両親に長男次男に長女と家族勢揃いだ。

─あれ?


「皆様。本日は息子のレイアスのために御越しくださり誠にありがとうございます。レイ、ご挨拶を。」


「…レイアスともうします。本日五歳になりました。みなさまおこし下さりありがとうございます。」


疑惑を一旦呑み込み、挨拶を述べてぺこりと頭を下げるとパチパチと拍手が響く。

概ね好意的な人達が多そうでひと安心。

それよりも目の前の子供達がヤバイ。

攻略対象の3人と特徴が完全に一致する。

いやまさか。

だってそうなら近づいてくるこの人は…。


「レイくん初めまして会えて嬉しいよ。今日は誕生日おめでとう。この子は息子のシルヴァルド。同い年だから話も合うんじゃないかな。」


「初めまして。おこし下さりありがとうございます。」


王様ですか?

なんて聞けるはずもなく無難な挨拶しか返せない。

かなりの確率で王様に違いないけど国王の指輪をしていないんだよね。

ほぼ真っ黒に近い灰色だ。

今日ここで婚約者フラグが立つとか無いよね?

僕まだ五歳だし婚約とか早すぎるよね?

そうだよ、きっと大丈夫。

ただ遊びに来ただけさ。

─王様がわざわざ中流伯爵家の、しかも三男の誕生日に来るわけない、こともない、そうだきっとフットワークが軽いんだ。

そうに違いない。


「初めましてシルヴァルドです。誕生日おめでとう。その、レイって呼んでも良いか?私のこともシルヴァと呼んでくれ。それと、友達になってくれると嬉しい。」


少し照れ気味な恐らく確実にメインヒーローな王子になるであろう少年と握手を交わす。

照れてるのは自分の友達になろう発言にだよね?

僕にじゃないよね!?

ああ駄目だ。

先入観が邪魔をする。


「よろしくシルヴァ。今日は来てくれてありがとう。」


友達は保留でお願いします!

口には出さないけど、否、出せないけど!

王族に喧嘩売るなんてとんでもない。


「こんにちはレイくん。誕生日おめでとう。こっちは息子のクラフだ。」


「初めまして。おこし下さりありがとうございます。」


騎士団長っぽい人もきたー!

否、未来の騎士団長かも。

騎士団の制服だけど団長用はもう少し凝ったデザインだった気がする。

それにまだ若いし。


「初めまして。クラフィスです。誕生日おめでとう。シルヴァだけじゃなくオレ、いや、私ともよろしく。クラフって呼んでくれ。」


「よろしくクラフ。今日は来てくれてありがとう。」


同じ言葉の繰り返し?

良いじゃないか、五歳だもん!

自分で言ってなんだけどもんって気持ち悪いな。

ああつまり友達は保留でお願いしますって事だよ!


「レイくん初めまして。君のお兄さんとうちの娘が同い年でね。よく噂を聞いてるよ。今日は誕生日おめでとう。うちの息子ともよろしく。」


「初めまして。おこし下さりありがとうございます。」


宰相、否、未来の宰相も来てしまった。

なんて誕生日だよ。

否、ここは攻略対象全員集合じゃなくて良かったと思うべきか。


「ティーノです。誕生日おめでとう。シルヴァ達みたいに長くないけどティノって呼んでください。よろしく。」


「よろしくティノ。今日は来てくれてありがとう。」


もうどうしたらいいかわからない。

臨時で雇ったのかと思った騎士達は王族の警護で来てたんだね。

屋敷の外にはもっといるんだろうな。

ハハハ。

次々とお祝いに来てくれる人達と挨拶を交わしつつも頭の中は大混乱。

なんであの3人の親は名乗らないんだよ!

王様ですとか言ってくれたら畏れ多いですとかなんとか言って退室できたのに。

ホントどうしよう。

フラグ立ってないよね?



ジョン─庭師と嘯く騎士。元王立騎士団所属だったし、土いじりの方が好きだから嘘は言ってないとの本人談。

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