無償の愛に彩りを
「おっかえりー!久しぶりだね、元気してた?」
家に帰ると新社会人となり実家から出て独り暮らしを始めたはずの姉がいた。
右手に缶酎ハイを装備して上機嫌だ。
「ただいま。珍しいね、顔出すなんて。」
「まあね、今日はあんたにお願いがあって来たのよ。ほら、これなんだけど知ってる?」
姉が鞄から取り出したのはゲームだった。
キラキラしたパッケージの絵から察するに乙女ゲーとかその辺だろう。
タイトルは無償の愛に彩りを、ね。
18禁では無さそうだな。
この姉には前科があるから安心するのはまだ早いか。
「またゲーム?相変わらず好きだね。見たことないけど。」
「これね絵も声も物語も良くできてるのよ。パケ買いした私すごくない?でもフラグ立てが激ムズで私はお手上げ状態ってわけ。せめて育成パートのリズムゲーとかのミニゲームだけでも何とかしたくてさ~。一回クリアすると次からスキップできるのよ。だからお願い!あんた得意でしょ?給料出たら奢るから!ね?」
別にミニゲームが得意な訳じゃない。
小さい頃からレベル上げやらの姉が面倒だと思う作業を代わりにやっていたから慣れただけだ。
「いいよ。どうせ暇だし。因みに普通のヤツだよね?18禁じゃないよね?」
「安心してCERO15よ!ただメインヒーローの婚約者が男だけどね!」
「……そっち系はやらないって言ったよね?」
誰が好き好んで男を攻略しなければならないのだ。
否、乙女ゲーという時点で男を攻略している事になるのか?
だけどやってるのはあくまでミニゲームとかだし、主人公も女だし問題は無いはずだ。
「だ、大丈夫よ!掲示板をみるとこの婚約者はただの添え物らしくてほとんど本編には出てこないんだって。見れたらラッキーってくらい影薄いみたいよ?それに主人公は女の子だし!」
あわあわと缶酎ハイを振り回す姉。
相当行き詰まっているらしい。
仕方ないか。
「…焼き肉食べ放題。」
「喜んで!!」
そして徹夜で育成パートのミニゲームに取り組んだ。
ただクリアしても面白くないのでできるだけ高得点で。
途中姉からそこまでムキにならなくてもと言われたが早くゲームを進めたいだけなのは明白だったので無視した。
やり込めて面白かったからでもある。
ミニゲームクリア!という称号が出たところでもう朝が近かった。
この称号は全てのミニゲームを高得点でクリアしたら貰えるらしい。
姉のテンションがヤバかった。
その後始発に合わせ姉を駅まで送った帰り、車にひかれて僕は死んだ。




