すべてはここから始まった。
コンコン
「雪乃、朝だぜ起きろ」陽兄?陽兄が私を起こしにきたみたいだ。
「ふぁーい。今起きる」私はそう言ってパジャマのままリビングに行くと、
「のーの、朝ご飯出来てるよ」と、一番上の兄のたーくんが、朝ご飯を作って待っていてくれた。
「はーい。ありがとう!」
「ねぇたーくん、今日仕事休み?」
「そうだけど」
「やったー!今日ピクニック行かない?もちろん3人で」
「お兄ちゃんは良いけど、陽斗は?」陽斗とは陽兄のことで、今年高2になった。
ついでに言うと、たーくんの名前は拓斗で、今年で28になるらしい。
「俺も?しゃーねーな。今日暇だし行ってやるよ」
「いつから行く?1時くらい?」私がそう言うと、
「雪乃が決めんなよ」って陽兄が言った。
「じゃぁいつがいい?」
「いつでもいいぜ」
「もー陽兄!?」陽兄はいっつも上からだけど、何だかんだ言って優しい。
それに比べてたーくんはずっと優しいけど…
<公園>
「ここにしよー」そう言ったのは、桜の木から少し離れた所。
「ここでいいの?」ってたーくんは聞いてきた。まーそれもそのはずで、今は春。お花見シーズンなわけで、わざと桜から離れるなんておかしい。だけど私の目的は兄たちとピクニックする事で、わざわざ人の多い所には行きたくないって言うこと。
「うん!」
「りょーかい」
今日は日曜日だから、やっぱり家族連れが多い。
「お父さん見てみて!」
「おー凄いな」そんな家族をぼーっと見ていると陽兄が、
「雪乃にはお兄ちゃんたちが居るからな」って言って、抱きしめてくれた。
「陽兄…ありがとう」
私たちには両親が居ない。私が生まれてすぐに、出て行ったらしい。
だから親の顔なんかは覚えていないし、さみしくもないけど、親がいる人に対しての羨ましさはあったみたいで、私がこうやってぼーっとしていると、抱きしめてくれる。
私はやっぱりそれで安心する。
「私やっぱり桜のとこ行ってくる」
「はーい。あんまり遠くに行くなよ」
「はいはい。分かってる」そう言って桜の木の下に行くと、急に眠気が襲ってきた。しかも、
「眠っていいよ」そんな声が聞こえて、私はそこで眠りについた。