07.狂いだす魔法
1987年 7月28日 18:43
エミィ・モロガン救出1825ドル
「ケニー・・・・。」
「エミィ・モロガン様。私たちは、手荒な真似はしたくない。」
「・・・・・・。」
「今すぐ王宮に戻るのだ。さぁ早く。」
ケニーはカオスには顔を向けずに。
淡々とした表情でエミィに語りかける。
「カオス・ロリッタ。君には姫誘拐令により、一緒に王宮に来てもらおう。」
カオスはエミィの手を引き、森へと足を向ける。
そこへは多くの兵士らが隠れる。
「カオス・・・・。」
「エミィ、俺は諦めない。一緒に、逃げるんだ。」
「判ったわ。逃げましょう。」
互いに誓うものの、この状況を乗り切る事は難しい。
ーーーッヒューーー
ケニーはエミィたちの方に弓矢を投げ、逃亡を阻止する。
「何をするのですっケニー!!!」
「皆の者!!!囚人らを連れてゆくのだ」
ケニーは姫のエミィでさえも囚人扱いし、兵士に向かわせる。
「っやっ辞めなさい!!!離してっ」
兵士らは遠慮なしに飛び掛る。
ーーーバンッーーー
鈍い音が辺りに響き。
静まり返る。
「何をするのだっ。」
悲鳴のような声をあげたのはケニー。
そしてそのケニーに拳を振りかざし、睨み付けるカオス。
「エミィ・モロガンを誘拐したのはこの俺だ。
さぁ。王宮へ、連れてゆけ。」
「フッ自分から名乗り出るとはな。
エミィ・モロガンを連れてゆけ。それと、この誘拐犯もな。」
カオスは、何を言っているの?
エミィの頭は混乱に陥る。
「エミィーーーーー。逃げろ!!!!!!!」
カオスの小さく、鋭い声がエミィを現実へと引き戻す。
「黙るのだっ!!!!!!」
そう呟くケニーの手には、細くて鋭い。
ナイフがあった。
「ウガッ」
カオスの腹からは赤黒い液体が滴り堕ちる。
「カオスッ!!!!!!!!!!!!!!」
エミィが駆け寄った時には既にカオスは危険な状況。
この時初めてエミィは事の重大さに気づく。
「エ、ミィ・・・・。」
「カオス、喋らないでっ」
「エミ、ィ・モロ、ガン・・・・。逃げ、ろ。」
「嫌よっ彼方を放っておくなんてっ」
「エミィ・・・・。愛してる。」
「カオス?私もよっ」
「逃げ、るんだ。早く・・・・。早く!!!!」
カオスは最後の力を振り絞り、エミィに語る。
「西の、森に行くんだ。そこには・・・・・・・・」
「西?西に、何かあるの?一緒に、行こう?ねぇカオスッ!!!
死んじゃ駄目ッ!!!!カオスッカオスッカオスッカオスーーーーーーーー」
「好きだ。エミィ。」
「私も。だから、生きるのッ生きてッイキテッイキテーーーーーー」
狂ったかの様に叫ぶエミィを後に。
カオス・ロリッタは14年という短い人生を。
絶った。
*** *
「ねぇカオス?私。彼方がいなきゃ、生きてゆけない。
私。彼方に恋したのよ?
大好きだったのよ?」
カオスの遺体に語る。
「ほら。夜空が綺麗よ?
こんな夜空。初めて見た。
約束。したもんね。
いつか私に、本当に本当に綺麗な夜空、見せてくれるって。
約束・・・・。叶ったよ?
きっとあの夜空は、カオスなんだよね。
星になって、私を見守ってくれてるんだよ、ね?」
涙が滴り落ちる。
「カオスも一緒に見ようよ。綺麗だよ?
ねぇ。どうしたら、起きてくれる?
一緒に逃げようって、言ったじゃない。
諦めないって、言ってたじゃない。
何であんな嘘ついたのよ・・・・。
誘拐犯になりきれば、私が逃げ切れると思った?
私。
もう逃げないよ?
堂々と、彼方と街に行きたかったの。
なのに・・・・・。死んじゃったら。
意味、ないじゃない・・・・。」
そっとエミィは、カオスの冷たい唇にキスをする。
「カオス・・・・。冷たいよ。
寒いのかな。」
カオスに寄り添い、眠りに堕ちるエミィ。
*** *
「「「「おはようございます。エミィ・モロガン様。」」」」
目が覚めるとそこに広がっていた光景は。
あの頃と同じ。
牢獄だ。
「どうして・・・・。カオス?カオスはドコッ!?」
「はて。カオスとは、何でございましょう。
寝ぼけておられるのですね。
エミィ様。今日は舞踏会でございますよ?」
「え。舞踏、会?」
「そうでございます。7月8日。今日でございますよ?」
可笑しい・・・・。
今日は7月28日のはず。
7月8日は私が城を出る前のはずよ。
「どういうこと?私を、からかっているの?」
ケニーを睨み付ける。
「いいえ?私はエミィ様をからかっている訳ではございません。
真実をお伝えしているだけでございますが、どうかいたしましたでしょうか。」
そういうケニーは真っ直ぐな瞳をしている。
どう考えても、嘘をついてる様子じゃない。
「どういう、事なの?」




