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城出姫の旅  作者: のん
その夜のベルは二度鳴った
14/30

14.三日月は否に笑った


「お兄ちゃんの事、思い出したのね・・・・?」

「彼方が、カオスの妹のメリー様?」

「メリーで良いわ。」


「お兄ちゃんはね。さっき説明した通り、向こうの次元の者なの。」

「・・・・・・・・・。」

「お兄ちゃんが次元を移動したという事は、もう一人のお兄ちゃんが、この場所にいる筈なのよ。」

「ハ、ラン?」

「ありえないわ。」

「どうして?」

「だって彼は今、お兄ちゃんと同じ次元にいるんだもの。あっちの次元にね?」

「・・・・そっか。」


不思議な空間に包まれ、この次元の仕組みを理解し始めるエミィ・モロガン。


彼女は頭の中で整理する。



この世界には、幾つもの次元がある。その次元はパラレルワールドの様に永遠に広がってる。

一人の人間はその、パラレルワールドの数だけ分身し、それぞれがそれぞれの次元へと行く。

何者かによって、別の次元へと飛ばされれば、別の次元に居た分身は、最初に飛ばされた分身の次元に行く。


その繰り返し。


そして分身の一人が死ねば、その分身の生まれた次元へと、飛ばされる。

つまり、何者かによって飛ばされる前の次元へと帰れるという事。


カオスもその一人だった。


カオスが死んだ時、エミィ・モロガンは彼に寄り添っていた。

だから、彼が生まれ故郷の次元へと向かった時、エミィはその力に巻き込まれ、次元を移動したのだ。


エミィが次元を移動した事によって、カオスの本当の次元で生きていた、エミィの分身、ヘリィはこの次元、つまりこの空間へと飛ばされた。


そしてヘリィは、エミィを追いかけていたケニーに捕まり、今も尚、苦しんでいる。


人は。


自分の生まれ故郷の次元に自ら移動する事が出来る。

だがヘリィは違った。


ヘリィとエミィははじめ、双子だと思われ、育てられた。


だが、別の次元にエミィ・モロガンという存在が一人少なかった。

この事から。

分身が2人、同じ次元で生まれてしまったという事になる。


エミィもヘリィも。この次元で生まれたのだ。


ヘリィは今、エミィに助けを求める為に、メリーを使った。


でも、何故?


メリーが死んだのは何年も前の話よ?何故その時にメリーを魔法に掛けたの?

この日を待っていたの・・・・・?


「お兄ちゃんの事はともかく。次元の真実は今、私と彼方、それからヘリィしか知らない。

 他の人間が知った所で、記憶が抹消されるから。彼方の様に、ね?」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「だから次元は尽きる事無く続いているのよ・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・。」

「彼方は。ヘリィを救いたい?」

「・・・・救いたいわ。」

「なら、誓って。」

「え。」

「この次元では、ヘリィ・ロモネがエミィ・モロガンだと思われている。

 だから彼方が、ヘリィにならなくてはならない。たとえ分身だとしても。所詮違う人格。名前も勿論違うわ。」

「・・・・・・・・そう。」

「だから、彼方は姫という名を捨てなくてはならないの。

 その覚悟がある?」


ーー姫という名を捨てるーー


エミィ・モロガンの瞳は今までよりも一層。蒼く輝く。


「捨てるわ。私はもう。姫じゃない。」

「強いのね。彼方は。」


メリー・ロリッタの瞳は哀しみに浸る。

だがその哀しみはすぐに消え、焦りに変わる。


「急ぎましょう。ヘリィを救いに。」



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