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01.消えた姫
1987年7月8日 12:00
エミィ・モロガンは薄暗い部屋でただ一人、窓を見つめる。
吹き付ける風の中、ただ一心に見つめていた。
* * *
モロガン家は、貴族達の文化を切り開き、壮大な城を築き上げた。いわばこの世界の王だ。
そんなモロガン家の一人娘、エミィ・モロガン。
彼女はこの世界の姫であり、将来の皇女である。14歳という若き姫に課せられた宿命。
それはこの世界を戦争から守る事。
* * *
「エミィ・モロガン?お着替えの時間でございます。」
執事である、ケニー・フォレアンはエミィの部屋の鍵を外す。
「エミィ・モロガン?舞踏会の準備が整っております。」
ケニーの呼びかけにエミィは反応を見せない。
「エミィ?エミィ・モロガン?」
冷たく、感情の無いケニーの声が響く。
閉まっていた筈の窓は開き、カーテンが揺れ動く。
1987年7月9日 1:00
エミィ・モロガンは魔法にでも掛かったかのように、姿を消した。