帰宅
僕は今日起こったことを振り返りながら家に帰った。雨が凄かったこと、長靴はやっぱり最高ってこと、カエルと喋ってしかも用事を頼まれたこと。今日はとにかく盛り沢山ですごい疲れた。「ただいまー」「遅かったわねぇ、心配したのよ」「雨のせいでバス一本乗り過ごしちゃったんだよ。」ていうか、実際は雨のせいじゃなく、水溜まりで遊んでた、僕のせいなのだけど。ごまかすにはちょうどいいし、あながち間違っちゃいないしね。雨が降ったから、水溜まりが出来るわけで水溜まりができたら入らなきゃいけないわけで、だから僕のせいだけではないはずだ。絶対。しかしこんなんじゃ母さんは騙せない。「そんなこと言ってまた水溜まりにはいって遊んでたんでしょ」…ほらね。母さんを騙そうなんて一生無理だ。たぶん僕のランドセルにカメラでも仕込んでるんだろう。前に武志と買い食いした時だって、何も言ってないのに一発でばれちゃったし。ばれるのをわかっているのに嘘をついちゃうんだよね。悪いくせだ。次は大丈夫なんじゃないか、って勝手に思い込んでね。ある意味母さんへの挑戦だ。「あのさ、もし母さんが動物と話せるとしたらどの動物がいい?」「なによいきなり」母さんが驚くのも無理ないよね。「そうねー、鳥とかいいかもね。」意外とノリノリだった。 「だいたいの昔話のお姫様って、鳥と仲いいじゃない?だから可愛いかな?と思って。」今の母さんは、お姫様とは正反対にいる人だ。でも平安時代なら、いい線いってたかもしれない。「何よその顔。文句でもあるの?文句あるなら夕飯作らないからね。」でた。母さんの最終兵器。飯抜き。これはちょっと卑怯だ。しかもこんなことで使わないで欲しい。それほどお姫様には、憧れがあるのかな。「いえ文句はないです。」「なら早く食べちゃいなさい。」僕がご飯を食べようとした時玄関から声がした。「ただいまー。」父さんだ。「あら、早かったのね。」「一本前のバスに間に合ったからな。」僕とは逆だ。ちょうどいい機会だ。父さんにもあの質問をしてみよう。「あのさっ…」僕がそう言いかけた時に母さんが、「あなたもし動物と話せるとしたらどの動物がいい?」まんまと僕のやつを横取りした。「はぁ?なんだ、それ。」「いや瞬がね、いきなり私に聞いてきてね、お父さんは何ていうかなぁ?と思って。」「そうだなぁイルカかな。背中に乗って色んな海に行ったりしたいね。」父さんもノリノリだ。ちなみに僕は家では瞬。と呼ばれてる。そのほうが言いやすいらしい。じゃあ最初から瞬にすればよかったじゃん。と前に言ったら、太はかあさんもとうさんも絶対男の子だったら、付けたかったから、瞬太になったらしい。「母さんはどの動物がいいの?」僕は少し身構えた。これから何かが起きる気がしたから。「鳥、鳥。お伽話のお姫様って、鳥と仲いいでしょ。」父さんは何かを言おうとしたけど、その時母さんの眉がピクッと動いたのを、父さんはかろうじて感じ取って、それ以上何かを言うのを止めた。やっぱり母さんと、付き合いが長いだけある。僕はまだまだ。だからそのセンサーに気付かない。父さんは尊敬できるな。と思った。こんな感じで、夕飯も終わって、お風呂に入って歯を磨いて寝た。夜寝る前に思った事は、母さんセンサーに、気付くようにしよう!ということだった。