カエル!?
「まさか…。そんなわけないよね、カエルはゲロゲロしか言わないもん。」
「おぉまだいたのかわしらの言葉を理解できるやつが。」
これで確信した、こいつだ。40代のおっさんの声の正体は。
「えぇーーーーーーーー!!」わけもわからずとりあえず叫んでみた。
「あんまり大きな声出すな。耳が痛くなる。」
「あっ、ごめんなさい。」
「わかればいい。」ちょっと冷静に考えてみた。今僕はカエルと喋っている。しかもカエルに謝った。たぶんというか絶対世界で初めてカエルに謝っただろう。そう考えたら笑いが止まらなくなった。「ハッハッハッハ、すごいすごいよ、僕カエルと喋ってる。なんでなんで?」
「昔はわしらの言葉を理解できるものはそれなりにいたもんだったが、つい最近めっきりいなくなって、もう話せるやつがいなくなったかと思ったぞい。」
訂正をしなくちゃならない。さっき世界で始めてカエルに謝った。て言ったけど昔の人がとっくに謝っているわけで、僕は世界初じゃないみたい。世界初になるのはそうそう簡単なことではないみたいだ。「最近って、いったいどれくらい前まで?」
「家康が天下取ったあたりまでは、結構いたんじゃがなぁ。その後はめっきりいなくなってのう。」
「家康が天下を取った時あたり?400年ぐらい前!?カエルさんは何歳なんですか!」「お前らの年にすると500歳ぐらいかの。」かえるってそんなに生きるんだ。
「おぬし名前は?」「瞬太です。」「よし瞬太。いきなりですまないのだが、ちょっとお前に頼みたいことがあるんだ。」僕はカエルに頼まれようとしている。今はこんなこといちいちかまってちゃいられない。「はい僕が出来る範囲でならね。」
「ちょっと石をどけてほしいんだが。できるかの?」「大きさにもよるけど、たぶん大丈夫だよ。」「よし今度の雨の日にまたこの場所に来てくれ。その長靴を履いてな。」「なんで?」「わしらにはお前らの顔は区別がつかん。だからそれがないと瞬太ってわからんからな。」やっぱり僕らがカエルの顔を区別出来ないように、カエルも僕たちを区別できないんだな。じゃあカエルにもイケメン(いやカエルだからイケガエルか)の顔とかあるのかな?「あっなるほど。でも僕も区別つかないよ。」「着いたときに呼んでくれれば、よい。」「でも今度の雨っていつ降るかわからないじゃん。」「わしらには分かるのじゃよ。明後日じゃ。」やっぱり人が一番優れているのは間違いみたいだ。だってどんな気象予報士よりも、正確に天気を当てられるんだから。そうこうしている内にバスがやってきた。「へぇ分かった。じゃ明後日この場所で。」僕はカエルに手を振り、明後日に胸を膨らませてバスに乗り込んだ。そのときバスの運転士に不思議そうな顔で見られたのは、たぶん気のせいだ。