長靴
雨が降っている。それもかなり大量に。まったく最悪だ。雨が降っているからじゃなくて、むしろ雨は大歓迎だ。なぜかって?それは長靴が履けるから。僕は長靴を履けば無敵なんだ。凄い水溜まりだって臆せず進んでいけるし、汚れる心配もない。でも今回は、長靴のせいで、最悪なことになったのだけど、駅からバス停までは、30分もかからない。駅には14時に着いた。そこからいつもどおり歩けば14時30分のバスに、十分間に合うのだけども、何せこの雨だ。水溜まりもいっぱい。入らずにはいられないでしょ?そうやって片っ端から水溜まりに入っていったもんだから、ようやくバス停に着いたときにはバスがでてった後だったわけ。このバス停屋根はあるんだけど、壊れていてまったく使い物にならない。だからずっと傘をさしてなきゃいけない。次のバスまで1時間もある。駅に戻るのも面倒くさい。このバス停に一時間独りぼっち。さすがに長靴の魔法も切れそうだ。
僕は今流行の携帯用ゲームとかを持ってない。田舎だから手に入らないわけじゃないよ。ちゃんと持っている子だっている。むしろクラスの3分の2は持っている。僕はどちらかと言えば、外で遊ぶことが多いし。でも今時の子って(僕もそうだけど)外で元気に携帯用ゲームをやるんだよね。健康なんだか不健康なんだかよくわかんないよね。それに比べたら僕は本物の健康少年だ。いままで小学校では一度も休んだことないしね。ゲームもやらないし、ただ一つの難点はこういう時に暇を潰せないんだ。たんぼの稲を一本一本数えるわけにもいかないし。実は昔やったことがあるんだけどね。あのときはたしか1000ぐらいまで数えたんだけど、途中で母さんに声かけられてどこまで数えたかわかんなくなってあきらめちゃったんだけど。あれは精神力との勝負だ。正直今は母さんに止めてもらって良かったと思っている。あのままだと本当に最後まで数えちゃいそうだったから。もう一つの暇つぶしとしては、空想に更けること。これは意外と時間が稼げる。この前は「動物の言葉を理解できたら。」だった。犬は、人の言葉を少しは理解している。フセとかオスワリとか言えばやることができる。チンパンジーとかたぶんもう少し頑張れば、言葉を喋れるんじゃないかって思うほど賢い。世間一般では人間が一番賢いことになっているけど、実際の所どうなのだろう?人間は、ほかの動物の言葉を理解する事は出来ない。頭がいいのに。
「まったくそうだよなぁ。」
不意にどこからか声がした。僕はびっくりして辺りを見回した。しかし誰もいない。普通考えて見ればこんな大雨の日に人がいるわけない。晴れの時でさえそんなに人がいないのだから。けど、声は確実に聞こえた。声の感じでは40代のおじさん。でもそんなおじさん見当たらない。そして冷静にもういちど辺りを見回してみた。すると僕の足元にカエルが一匹いた。